1月18日(木)、国立文楽劇場で、文楽公演第一部を見ました。


最初の演目は、おめでたく、

『七福神宝の入舩』。


七福神、つまり、寿老人、大黒天、弁財天、布袋、福禄寿、恵比寿、毘沙門が宝船に乗って現れ、それぞれ、『一芸』を披露するというもの。いわゆる『芸廻し』。


今年が、『辰年』なので、彼らの乗った船も、辰の船。


太夫は、

寿老人が、三輪太夫。

大黒天が、津國太夫。

弁財天が、咲寿太夫。

布袋が、小住太夫。

福禄寿が、碩太夫。

恵比寿が、聖太夫。

毘沙門が、薫太夫。

の掛け合い。

三味線は、

勝平、清馗、清丈、寛太郎、錦吾、清允。

と、賑やかに、おめでたく。


人形役割は、

寿老人が、玉助。

大黒天が、簑一郎。

布袋が、文哉。

弁財天が、紋臣。

福禄寿が、紋秀。

恵比寿が、玉翔。

毘沙門が、簑太郎。


次が、『近頃河原の達引』。


実際にあった心中を題材として。

ふたつの説があるそうで。

そのひとつが、元禄16(1703)年の、おしゅんと米屋庄兵衛による、四条河原での心中。

もうひとつが、元文3(1738)年の、井筒屋伝兵衛と遊女おしゅんによる、聖護院の森での心中。

これに、四条河原で起きた刃傷沙汰の喧嘩、親への孝行を表彰された堀川の猿廻しの話題を絡ませて脚色したもの。


上中下3巻の世話物。


今回上演の『四条河原の段』『堀川猿廻しの段』は、中の巻。


「亀山家の勘定役横淵官左衛門は、出入りの道具屋井筒屋の息子伝兵衛が馴染みを重ねる祇園の遊女おしゅんに横恋慕し、仲買の勘蔵らと謀って伝兵衛から三百両を騙し取り」

「さらに、将軍家所望の重宝『飛鳥川の茶入』を盗んだことを知られたためよ叶わぬ恋の意趣返しともども伝兵衛を亡きものにしようと」


で、四条河原。

そこに伝兵衛を誘い出し。

というのが、『四条河原の段』。


目の前で、その茶入を打ち砕かれた伝兵衛は、思わず、官左衛門を殺してしまい。

死を覚悟する伝兵衛。


そこに、伝兵衛に味方する久八が現れて、茶入は贋物であり、後のことは引き受けたと、伝兵衛を、その場から立ち去らせて。


これが、次の段につながり。


伝兵衛を、睦太夫。

官左衛門を、靖太夫。

勘蔵を、文字栄太夫。

久八を、南都太夫。


三味線が、團七。


で、『堀川猿廻しの段』。

この段だけが、単独で上演されることが多いのです。

登場人物たちの、さまざまな心情が絡み合い。

大きなドラマを生み出して。

しかも、悲劇を。


やむを得ない状況で、死を選ばなくてはならなくなった男。

その男への愛を、ともに死ぬことで貫こうとする女。

その女を、その思いの深さを知るゆえに、見送らなくてはならない、母と兄。


堀川の家。

おしゅんの兄の与次郎は、猿廻しを生業に。

母は、目が不自由。琴や三味線を教えて、生活の足しに。

しかし、貧しい暮らし。

だからこそ、おしゅんが遊女となり。


四条河原の出来事以来、おしゅんは、伝兵衛との関係を心配した廓の親方の配慮によって、この堀川の家に。


そこに、伝兵衛が忍んでやって来て。


伝兵衛にしても、おしゅんにしても、互いに、死を覚悟していて。


その覚悟の強さに、母も、与次郎も、引きとどめる術もなく。

で、与次郎は、猿廻しの芸で、ふたりの『門出』を祝い。

その、猿廻しの場面が、見所のひとつになっていて。


2匹の猿の芸。楽しいはずのものなのに。


なんとも、哀れ。


ふたりを見送る母と与次郎の、悲しさ。


錣太夫と、三味線は藤蔵。ツレが清方。



呂太夫と、三味線は清介。ツレが清公。


錣太夫にしても、呂太夫にしても、説得力があり。

それを、三味線が導き。あるいは、支えて。


堪能しました。


人形役割

猿廻し与次郎が、勘十郎。

与次郎の母が、勘壽。

おしゅんが、簑二郎。

井筒屋伝兵衛が、玉佳。

横淵官左衛門が、文昇。

仲買勘蔵が、亀次。

など。


文楽劇場の前の柱に。


ただ、船は、前回のもので、今回は、『辰』の船でした。



正月興行なので。


客席に座って、見上げると、目が合います。


一階のロビーに。






観客は、やはり、少なくて。
空いている席の方が多く。

前途多難。

東京の来月の公演は、日本青年館ホール。

その次は、シアター1010 。