12月15日(金)、十二月大歌舞伎の第二部を見ました。


最初の演目は、『爪王』。


戸川幸夫の脚本。

戸川幸夫は、動物文学の作家として、多くの作品を。

それを、平岩弓枝が脚色して。

作曲は、十四世杵屋六左衛門。

振付は、六世藤間勘十郎。

舞踊劇です。


初演は、1968(昭和43)年、十七代目勘三郎の長女の波乃久里子が、6代目猿若明石を襲名した舞踊会で。

会場は、歌舞伎座。

相手役は、真帆しぶき。

という、『中村屋』に関わり深い作品。


で、狐を、勘九郎。

鷹の吹雪を、七之助。

鷹匠を、彦三郎。

庄屋を、橋之助。


鷹と狐の闘い。

それぞれが、孤高の生を生きて。

その闘いの緊迫感。


勘九郎と七之助の、その鍛えられた身体に、あらためて魅了されました。


次の演目が、新作の『俵星玄蕃』。


『赤穂義士外伝 俵星玄蕃』から。

竹柴潤一の脚本。

西森英行の演出。


元禄15(1702)年の、吉良邸討ち入り。

その赤穂事件。

討ち入りをした47士を扱う『義士銘々伝』に対して、その周辺の人びとを描く『外伝』。


少し前であれば、さまざまな赤穂義士物が、上映、上演されていましたが。

『忠』『義』の根底が失われた時代にあっては、理解不能なものへと。


2022(令和4)年10月の歌舞伎座。

『荒川十太夫』が、上演されて、好評を得て。

で、来月の『初春大歌舞伎』で再演されますが。


どちらも、尾上松緑。

彼の持ち役として、これからも演じられていくことと思いますが。


しかし、この『俵星玄蕃』、あまりおもしろいとは思いませんでした。


結局は、台詞劇。

槍の名人である俵星玄蕃(松緑)は、ひそかに、赤穂の浪人を応援し。

夜鷹そばの当り屋十助。実は杉野十平次(坂東亀蔵)。

彼が、赤穂の浪人であることを、たびたび問うものの、その度に否定する十助。

その繰り返し。

その単調さ。


しかも、1時間20分ほどの上演時間に、第六場まであり。

しかも、最後は、上杉家の郎党を相手に、槍での立ち回り。

それが、長い。

帰りに、前を歩いていた女性たちの会話、チャンバラ劇。その印象が強すぎるのではないか、と。

確かに、長く長く続いたのです。

その立ち回りが、この芝居のポイントではないはず。

そのために、玄蕃と杉野のやり取りの印象が希薄になって。


俵星玄蕃の松緑にしても、杉野十平次の坂東亀蔵にしても、役として、持ち役となるもの。

それだけに、場割と、展開の仕方を工夫することが必要ではないかと。