8月8日(火)、京都の南座で、『怪談牡丹燈籠』を見ました。
三遊亭円朝の原作。
大西信行が脚本化して。
その脚本で演じたのが、文学座。杉村春子、北村和夫たち。
演出は、戌井市郞でした。
坂東玉三郎は、今回もふくめて、4回目の『怪談牡丹燈籠』。
最初が、1989(平成元)年の6月の新橋演舞場。
相手役は、片岡孝夫(今の仁左衛門)。
その、仁左衛門とのコンビで再演したのが、
2007(平成19)年の10月の歌舞伎座。
以上の2回は、やはり、戌井市郞演出。
しかし、2015(平成27)年の7月の歌舞伎座公演では、玉三郎自らの演出で。
相手役が、市川中車となり。
で、今回は、
坂東玉三郎演出。
に加えて、
今井豊茂が、演出・補綴として参加。
相手役は、片岡愛之助に。
愛之助は、昨年8月の南座の『東海道四谷怪談』、今年3月の歌舞伎座の『吉田屋』で、共演をしています。
なお、今年の10月の御園座公演、『東海道四谷怪談』では、玉三郎は、仁左衛門とコンビを組んで。
玉三郎の言葉、
「(愛之助は)お若いときの仁左衛門さんの雰囲気に似たところもありますし。」
(『プログラム』)
もともとの、三遊亭円朝の作品は、長い長いものですが、それを、大西脚本では、伴蔵とお峰夫婦、萩原新三郎とお露という、2組の男女に焦点を絞り、物語の展開が、すっきりと、分かりやすいものになっています。
根津の清水谷に住まいする萩原新三郎。
そこを訪れるお露と、その乳母のお米。
相思相愛の新三郎とお露。
しかし、会うことを禁じられたお露は、こがれ死んで。
乳母のお米は、その後を追って自害。
新三郎を尋ねて来たのは、お露と、お米の幽霊。
燈籠を携えて、下駄の音をたてながら。
逢瀬を重ね。
しかし、骸骨と抱き合う新三郎の姿を、下男の伴蔵が目撃。
このままでは、とり殺されてしまうと、新幡随院の和尚に頼んで、お札を貼り。
で、会うに会えないお露。
それを案じたお米が、伴蔵のもとにやって来て、お札をはずし、また、新三郎が肌身離さず持っている金無垢の海音如来の像を取り上げてほしい、と。
伴蔵とお峰夫婦は、
お米の言葉を実行すれば、新三郎がとり殺される。
しかし、拒めば、自分たち夫婦が殺される。
そこで、夫婦は、100両という大金を要求。
幽霊に、それほどの大金は用意出来ないだろうし、諦めるに違いないという、ヨミがあって。
しかし、降って来たのは、100両の大金。
で、伴蔵は、幽霊の要求を受け入れて。
で、新三郎と、お露の再会。
お露は、新三郎の首を絞め。
新三郎も、それに抗うこともなく。
で、第一幕が終わり。
『怪談』とあっても、この『牡丹燈籠』、怖くはないのです。
なにしろ、幽霊となったお露と、とり殺される新三郎は、相思相愛の関係。
第二幕。
野州栗橋が舞台。
大金を手に入れた伴蔵と、お峰。
荒物店を開いて、商売も繁盛。
しかし、
伴蔵が、酌婦のお国といい仲になり。
人間の持つ欲望。
愛しあっていた伴蔵と、お峰の間に亀裂が入り。
お峰を、坂東玉三郎。
伴蔵を、片岡愛之助。
萩原新三郎を、喜多村緑郎。
お露を、坂東玉朗。
乳母お米を、上村吉弥。
笹屋お国を、河合雪之丞。
お六を、中村歌女之丞。
その他。
言葉自体は、現代の言葉。
我々の日常生活と、同じ生活空間で生じた出来事。
もちろん、そこには『時代』があり、着ている衣装や、立ち居振舞いなどの、『風俗』としての違いはあっても、内実はつながっていて。
玉三郎のお峰と、愛之助の伴蔵。
年齢的なものだけではなく、存在の大きさということもあり、お峰の『力』を感じましたが、そうした夫婦も、世にあるでしょうし。
違和感なく。
仁左衛門とも、中車とも違う、伴蔵でした。