6月30日(金)、METライブビューイングの第9作『ドン・ジョヴァンニ』を、見ました。
作曲は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。
台本は、ロレンツォ・ダ・ポンテ。
『フィガロの結婚』のコンビ。
初演が、1787年。
非常に有名なオペラであり、繰り返し繰り返し上演され、映画化(オペラとして)もされています。
演出は、イヴォ・ヴァン・ホーヴェ。
彼へのインタビューがあり、そのなかで、
この作品は、18世紀でも19世紀でもなく、20世紀を舞台にしているのでもなく、現代が舞台。また、場所も特定されていない、と。
そして、性的にも、身体的にも、暴力をふるう男としてのドン・ジョヴァンニを描いている、と。
先日見た、ナショナルシアターの『オセロー』にしても、このメトロポリタン歌劇場の『ドン・ジョヴァンニ』にしても、『現代』が舞台なのです。
作品を見る観客の生きている、『今』が舞台なのです。
そして、美術のJ・ヴェルスヴェイフェルドへのインタビュー。
舞台上は、5つの建物。その建物は、階段と廊下が見えて、人間にとっては暮らしにくそうな構造。
何よりも、暗いのです。
で、マウリッツ・エッシャー(1898~1972)の世界を参考にした、と。
納得、です。
で、その5つの建物、ドン・ジョヴァンニが地獄の業火に焼かれる場面では、その建物が舞台を囲み、巨大な『壁』となり。
そこに、業火が映し出されて。
そして、すべてが終わり。
それぞれの建物は、ぐるりと回転し。
すると、そこに、光があたり。
窓辺には、花が植えられ。
洗濯物が干され。
カーテンが、風に揺れて。
人びとの、日常生活が営まれる『場』へと。
見事、でした。
冒頭、ドンナ・アンナ(フェデリカ・ロンバルディ)のもとに忍び込んだドン・ジョヴァンニ(ペーター・マッティ)。
激しく抵抗されて、タジタジとなり。
『声』をあげる女性、『抵抗』する女性。
激しい叫び声に、娘を救おうとやって来た騎士長(アレクサンダー・ツィムバリュク)。
ドン・ジョヴァンニは、拳銃で撃ち殺し、暗闇のなかに逃亡。
『銃』社会なのです。
人びとは、銃を持ち、銃で脅し。
そのドン・ジョヴァンニの従者レポレッロ(アダム・プラヘトカ)。
暗闇のなかで、ドン・ジョヴァンニと入れ替わったりするので、本来は、体型も似ている必要があるのですが。
ドンナ・アンナと、ドン・オッターヴィオ(ベン・ブリス)。
ツェルリーナ(イン・ファン)と、マゼット(アルフレッド・ウォーカー)。
そして、ドンナ・エルヴィーラ(アナ・マリア・マルティネス)。
で、ドン・ジョヴァンニと、ドンナ・アンナ、ツェルリーナ、ドンナ・エルヴィーラという3人の女性との関係が展開するのですが、三者三様。
それぞれの女性たち存在も、おもしろいのです。
あくまでも拒絶するドンナ・アンナ。
地位と財産のあるドン・ジョヴァンニに、心ひかれたツェルリーナ。
ドン・ジョヴァンニの不実に心痛めながらも、他の女性は一晩限り、しかし自分には3日付き合ってくれたと、その愛情を求めるドンナ・エルヴィーラ。
『ドン・ジョヴァンニ』。
正式な題名は、
『罰せられた放蕩者 またはドン・ジョヴァンニ』。
見事な演出。
それは、美術・装置もふくめて。
そして、
見事な歌い手たち。
堪能しました。
興奮をひきずり。
モーツァルトの音楽が、耳奥にいつまでも。
『チラシ』から。