新国立劇場小劇場で、『エンジェルス・イン・アメリカ』を見ました。
5月28日(日)までの上演。
5月6日(土)に1部『ミレニアム迫る』を。
5月7日(日)に2部『ペレストロイカ』を。
1部と2部を、同じ日に通して見ることも出来、また、その方が『通し券』があって、1600円、お得なのですが。
しかし、1部がおよそ3時間30分。2部がおよそ4時間。その上演時間を、体力的にも精神的にも、乗り越えることが難しそうで。
「1991・1992年の初演以来世界中で上演されている、トニー・クシュナーの傑作『エンジェルス・イン・アメリカ』が小田島創志の新訳で、新国立劇場に登場します。舞台はレーガン政権下のニューヨーク。エイズが不治の病とされた時代に、病に冒された青年を中心に深い苦悩や葛藤を抱えた人々を鮮やかに描き、トニー賞演劇作品賞、ピュリッツァー賞戯曲部門を受賞し、テレビドラマやオペラ化もされました。」(チラシ)
日本初演は、1994年、ロバート・アラン・アッカーマンの演出。銀座セゾン劇場での公演です。
そのあとも、上演され。
しかし、最近は、上演の機会がなくなっているような。
銀座セゾン劇場での、初演を見ています。
1部の『ミレニアム迫る』。
「1985年ニューヨーク。青年ルイスは同棲中の恋人プライアーからエイズ感染を告白され、自身も感染することへの怯えからプライアーを一人残して逃げてしまう。」
ルイスとプライアーの物語。
「モルモン教徒で裁判所書記官のジョーは、情緒不安定で薬物依存の妻ハーパーと暮らしている。彼は、師と仰ぐ大物弁護士のロイ・コーンから司法省への栄転を持ちかけられる。やがてハーパーは幻覚の中で夫がゲイであることを告げられ、ロイ・コーンは医者からエイズであると診断されてしまう。」(チラシ)
ジョーとハーパーの物語。
ジョーとロイ・コーンの物語。
そして、ルイスとジョーが知り合い。
2部の『ペレストロイカ』。
「ジョーの母ハンナは、息子を心配してニューヨークへ向かい、ひょんなことからプライアーと出会い介抱する。」(チラシ)
ハンナとプライアーが出会い。
「入院を余儀なくされたロイ・コーンは、元ドラァグクイーンの看護師ベリーズからケアを受けることとなる。」(チラシ)
ロイ・コーンとベリーズ。そのベリーズは、プライアーの友人。
人物が、それぞれに関係を結び、繋がっていき。物語がふくらんで。
そして、天使もあらわれて。
登場人物のうち、ロイ・コーンは実在した人物。
エセル・ローゼンバーグを電気椅子に送り込んだ人物。
『ローゼンバーグ事件』は、1950年に発覚したスパイ事件。
この事件の担当検事がロイ・コーン。
そのエセル・ローゼンバーグも、ロイ・コーンの前にあらわれて。
ゆたかな物語。
きわめて現実的な、エイズ感染によって生じるさまざまな葛藤。
そこに、天使があらわれ、天使たちが姿を見せて。
そして、エセル。
という、幻想的世界。
8名の出演者たちが、さまざまな人物を演じ。
物語が、テンポよく。
その物語世界へ、ぐいぐいとひきこまれて。
これだったら、約8時間の上演時間も、その長さを感ずることなく見ることが出来たかも、と。
ここに描かれた『アメリカ』。
ユダヤ教徒やモルモン教徒。それぞれの宗教基盤から生まれる対立。
また、レーガン大統領をはじめとする、政治家の名前なども、ポンポンと出て来て。
民主党と共和党という、政党。
そのほか、『予備知識』が豊富であればあるほど、この作品を奥深くまで楽しめたのではないか、と。
物語の終わり。
セントラルパークのベネスダの噴水。その天使像の前に、プライアー、ルイス、ベリーズ、ハンナが。
そして、『生きる』希望が。
まさに、大団円。
オーディションで選ばれた8名の出演者。
その実力を感じました。