『温泉ドラゴン』による『悼、灯、斉藤』を、東京芸術劇場シアターイーストで、見ました。


原田ゆうの作。

シライケイタの演出。


2時間10分、途中休憩なし。


「母の死をきっかけに実家に集まった三兄弟。

悲嘆に暮れる暇もなく葬儀などの手続きに追われる中、すれ違い続けた思いが次々とあらわになる。」(チラシ)


作者原田ゆうの母親が、2020年の6月に亡くなり、そのことを踏まえたうえでの創作。


演出のシライケイタは、そのことに触れて、

「この作品は、母を突然失った一家の物語です。残された三兄弟は立ちすくみ、とても大きな喪失感の中にいます。三兄弟はこれまでの人生を振り返り、語り合い、ぶつかり、その果てに関係が少しずつ変化していく予感が描かれます。」(劇場で配布されたプログラム)

と語っています。

そして、

「今現在の、僕たちの物語」

と。


冒頭、母の佳子(大西多摩恵)と、長男倫夫(筑波竜一)との会話。


レストラン経営に失敗し、心を病み、引きこもるようになった倫夫。

しかし、ようやく、外にも出るようになって。

前の建物の点灯が、まるで「光のショウ」だと、心待ちにする佳子。

チラシに見える、前の建物。

明かりが、次々と点灯していくのです。


舞台は、生前の佳子の物語が、佳子の死を受けての、現在の物語と、交錯しながら進んで。


佳子の死、その葬式。

「ぶつかりあう兄弟」。

そこに、「佳子の物語」が挿入されて、佳子の明るく元気なエネルギーが、舞台を活性化。

物語の展開に、メリハリがついて。


「死」ということで、その人の「生」が再検討、再確認されて。

「見えなかった」ものが見えてきて。


それをきっかけにして、家族の間に、「本音」が行き交い。

その「本音」がぶつかり合うようになった後半の、高まり。


長男の精神的病。

次男の周司(いわいのふ健)は、栄養士として。しかし、本当は、料理人としての生活を考えていたが。うまくいかず。それだけに、レストラン経営をはじめた長男への嫉妬があり。以来、断絶状態。

三男の和睦(阪本篤)は、売れないシナリオライター。


兄弟三人が、鬱々としたものをかかえて。


それが、母佳子の、悩みのたねとなり。


倫夫の妻の泰菜(林田麻里)。

周司の妻の奈美恵(宮下今日子)。


和睦が、高校時代に付き合っていた小田切恵(枝元萌)は、すでに結婚していて、それがたまたま、同じマンションの、上の階に。


そして、父親の斉藤吾郎(大森博史)。

貸しアパート経営に失敗し。多額の金を失い。


それぞれの登場人物が、しっかりとした、それぞれの「背景」を持って、舞台に。


どこにでもいる人たち。

どこにでもある家族。

そこにある、『生』と『死』。


葬儀屋とのやり取りが、ところどころで、エネルギーを注入して。


葬儀屋の上林幹雄(東谷英人)。

五十嵐淳也(遊佐明史)。


佳子の働いていた介護ホームの上司、水村博宣(山﨑将平)。


アンサンブルもよく。





終演後、ロビーに出ると、演出のシライケイタさんが、配布していたものです。