1月4日(水)、『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』を、見ました。


監督・脚本は、ウィル・シャープ。

原案・脚本、サイモン・スティーブンソン。


2021年の制作。


猫を描く画家として知られている、ルイス・ウェイン。

彼の描いた作品、その猫たちには、これまでにも、よく出会っています。


しかし、そのルイス・ウェインが、どのような人物であり、どのような人生を歩んだか、知りませんでした。


で、題名にある『生涯愛した妻とネコ』。


確かに、ルイス・ウェインは、生涯、その妻であるエミリー・リチャードソンを思い続け、エミリーも愛した猫のピーターを思い続けました。


そのことが、ひとつの大きな『幹』にはなっていますが、甘いラブロマンス物を前提として見ると、裏切られます。

しかし、その結果、より深く、ルイス・ウェインの人生を見ることが出来るのですが。


ルイス・ウェイン。

1860年に生まれ、1939年に亡くなっています。78歳の人生。


トーマス・エジソン(1847~1937)。

ニコラ・テスラ(1856~1943)。


『テスラ』という、2021年公開の映画がありました。

マイケル・アルメレイダ監督で、イーサン・ホークが、テスラを演じて。

カイル・マクラクランが、エジソンを。


彼らと、同時代。


映画の冒頭のナレーションに、

「ヴィクトリア朝のイギリスは発明と発見の場だった」と。


で、ルイス・ウェイン自身も、『電気』に興味を持ち、研究をしていました。


で、原題は、

『The  Electrical  Life  of  Louis  Wain』


ここで言うところの『電気』とは。


そこに、作品の『ミソ』があるのですが。


作品は、ルイスの人生を、丁寧に描いていきます。


イギリス・ロンドンの上流階級に生まれたルイス。

彼の下には、5人の妹が生まれ。


で、その5人の妹たちは、未婚のまま、ともに生活を続け、生涯を終えています。

そのうちの1人は、精神の病のために、療養所へ。

それも、描かれています。


ルイスが、20歳の時に、父親が亡くなり。

彼が、家計を支えなくてはならず。

しかし、収入のあてもなく。


つまり、上流階級ではあっても、経済的には、恵まれず。


で、ルイスが23歳の時に、妹の家庭教師であったエミリー・リチャードソンと結婚。

しかし、周囲の大反対が。


エミリーの出身階級の問題。年齢も、10歳年上でもあり。


ルイスが、エミリーを劇場に誘い、シェークスピアの『テンペスト』を観劇した時に、エミリーにとっては、はじめてのこと。

それを、うるさいおばさんから、あなたのような人の来る場所ではないと、嫌味を言われ。


それらの大反対をものともせず。

なぜなら、ルイスその人自身が、協調性がないというか、対人関係をうまく結べないというか。


そうした『個性的』存在を、ベネディクト・カンバーバッチは、見事に演じて。

その人物そのものになって。

それが、ごくごく自然で。


しかし、間もなく、エミリーは、末期ガンにおかされて。


そのルイスとエミリーの生活に、迷いこんで来たのが、猫のピーター。


猫を飼うのは、ネズミを獲るため。という時代。


ルイスは、エミリーのために、ピーターを描き。


やがて、エミリーは、亡くなり。


ルイスの描くピーターをはじめとする猫たちは、ますます『人間』に近づいて。


で、それが、大評判となり。


しかし、『社会的存在』としては、弱者であるルイス。

世渡りが下手なのです。というよりも、出来ないのです。

絵がどのように売れても、その版権を持っていないために、経済的豊かさには、ほど遠く。むしろ、困窮した生活が続き。


やがて、ルイスの『精神』も。


彼の目には、猫の姿をした人間が見え。

彼の耳には、猫の声が。

観客も、それを体験します。


これは、史実としてあるので、その後を記すと。


1924年、彼は、精神病院の、貧困者用病棟に。

しかし、その悲惨な状態が知られ、キャンペーンが。

1930年、新しく移った病院で、十分な介護を受け。9年後に亡くなっています。


で、『電気』ですが。

ルイスは、エミリーとの間を結んでいるのが、『電気』だと言います。

猫のピーターとの間にも、『電気』が。


それを聞いた人が、ルイスに、それは、『?』だと語り。


さて、『?』に入る、ひと文字の漢字は?


『Electrical  Life 』。


ルイス・ウェインが、愛するエミリーを思う時に生まれ。

愛するピーターを思う時に生まれるもの。


ルイス・ウェインの生涯をたどり、エミリーとのこと、ピーターとのことを知ることが出来。

ベネディクト・カンバーバッチの演技を堪能し。

若い時から、歳をとってまで、『リアル』なのです。


また、ルイス・ウェインの描いた、たくさんの猫たちにも会えて。


エミリー・リチャードソンを、クレア・フォイ。




映画館に掲げられていたポスター。


公式ホームページから、


19世紀末から20世紀にかけて、イギリスで大人気だったイラストレーター、ルイス・ウェイン。夏目漱石の「吾輩は猫である」に登場する、絵葉書の作者だとも言われている。彼が描いたネコは、愛らしくてコミカル、生き生きとしたタッチで今にも絵から飛び出してきそうなものばかり。
そんな絵を残したルイス・ウェインとは、どんな人物だったのか? ネコを描き始めたきっかけと理由とは? そこには、周囲からの大反対のなか結婚し、3年後にこの世を去ってからも、その愛で夫を生涯守り続けた妻エミリーと、親友であり人生の師でもあるネコのピーターとの物語があった。
出演は、ベネディクト・カンバーバッチ(『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)、クレア・フォイ(『ファースト・マン』)。監督は、俳優・監督としても、その才能が注目されている日系英国人のウィル・シャープ。
たとえ命が尽きても、愛は残された者と共に生き続ける──その美しくも貴い真実を観る者に信じさせてくれる、優しく温かな愛の物語が誕生した。