6月9日(木)、東京芸術劇場シアターウエストで、『serial number 07』の『Secret War ひみつせん』を、見ました。
詩森ろばの、作・演出。
心に、深く深く、食い込んでくる作品でした。
「今回書いた作品の中心となった
登戸研究所という実在する研究所で行われていたのは、
秘密戦という名の科学戦争のための研究だった。
当時、研究所に勤めていた研究者が、淡々とした筆致で書き残した
誤解を恐れず言えば心躍るような最先端の科学たち。
風船爆弾に病原体を積み
敵国の頭上で爆発させようと目論んでいた。
そんな荒唐無稽でさえある資料を読んでいると、
今も世界中に第2、第3の登戸研究所はあるように思える。
演劇は無力だ。それはわたしの20年が証明している。
でも書かなくては。それでも書かなくては。
終戦、すべてを焼いた登戸研究所から
ひとりの女性が持ち帰ったタイプの文字たちを
戯曲のかたちにして。」
(チラシから)
舞台は、太平洋戦争から敗戦直後の、研究所。その周辺。
と、
2001年の、北京。
このふたつの場所、ふたつの時間が、交錯して。
作品の奥行きを、深いものと。
主人公は、向学心がありながら、進学をあきらめ、研究所で、タイプをうつ仕事をしている村田琴江(三浦透子)。
タイプは、和文タイプで、かなりの習熟が必要。
開演前の舞台上、中央に、その大きなタイプが置かれていて。
若い研究者たち。
動物の免疫実験をおこなう市原和真(坂本慶介)。
青酸化合物を研究する桑沢誠次郎(宮崎秋人)。
その上司。
伴野繁明(松村武)。
山喜大悟(森下亮)。
陸軍中野学校から派遣されている浦井静一(佐野功)。
タイピスト。
織本ゆき(北浦愛)。
古川伸子(ししどともこ)。
北京の、中国人科学者・王浩然(大谷亮介)。
科学ジャーナリストで、村田琴江の孫の津島遥子(三浦透子・二役)。
研究成果を実験するために、市原は、釜山に行き、動物実験。大量の牛が死ぬのを確認。
桑沢は、南京に行き、人体実験。マルタと呼ばれる捕虜たちの死を、目撃。
その結果、桑沢は、心身を病み…。
桑沢の代わりに、中国に渡った市原は、行方不明となり…。
2001年、北京。
科学ジャーナリストの津島遥子は、王浩然に、研究所についてのインタビューを。
王浩然とは、一体、何者なのか?
そのさなか、同時多発テロを告げるニュースが。
「抑制された俳優の演技を含めて、緊迫感とある厳粛さに満ちた舞台」
(『朝日新聞』6月16日夕刊 大笹吉雄)
確かに。
作品のなかでも触れていましたが、この陸軍登戸研究所について、法政ニ高の生徒たちが調査をし、それが、本としてまとめられています。
『朝日新聞』の記事で、そのことは知っていました。
過去が決して過去のものではなく、現代にもつながっていること、その恐ろしさ、そして、むなしさを、あらためて。
まだ、食べていません。