8月29日(日)、中野にある、ザ・ポケットで、西瓜糖の『ギッチョンチョン』を見ました。


『西瓜糖』というのは、山像かおり、奥山美代子のふたりの女優と、制作担当の渋井千佳子による、演劇プロデュース集団で、山像かおりが、「秋之桜子」の筆名で、脚本を書いています。

2012年9月、新宿のSPACE 雑遊での、旗揚げ公演。

今回の公演が、第8回公演。


ホームページを見ると、

「日本語の美しさにこだわりながら、人間の生と性の営みが、社会と如何に絡まってきたかを描いてきました。」

と。


で、この『ギッチョンチョン』です。


秋之桜子の作。

演出は、寺十吾。


物語の内容は、ホームページから、終わりに、転写しておきます。


冒頭、大阪の、姉妹漫才師楽江(鴨鈴女)、楽世(山像かおり)の、コテコテの漫才。

背後の幕に、テレビ画面が映し出され、そこに映るふたり。

その、楕円形の画面。

そこに映る、粒子の粗い映像。

同時代を生きた者にとっては、懐かしい映像も映し出されて。


姉妹漫才、1972(昭和47)年、舞台の上での「今年」の出来事を、話題に。

グアム島から、横井庄一さんが帰国。日本の敗戦を知らず、彼のなかでは、戦争は継続中で、敵の目から逃れて、ジャングルの中に潜んでいたのです。

札幌オリンピックでは、「日の丸飛行隊」が、スキージャンプで、金、銀、銅メダルを独占。

また、浅間山荘事件。警官隊が食べていたカップ麺。


敗戦による傷口が、次第に癒え、右肩上がりの、経済成長。


しかし、腹違いの姉妹であるふたり。その妹楽世のかかえる、トラウマ。


舞台は、賑やかに、しかし、その背後にある「傷口」を予告して、幕を開けます。


姉の漫才師楽江を演じた鴨鈴女。

「南河内万歳一座」で、昔?から、その舞台を見ています。

「コテコテ」です。


で、舞台は、小林春世(矢野陽子)の、豊かとは言えない、家。

そこに春世と暮らすのが、次女の州子(日下由美)。

あるワケがあって、逼塞の日々。

三味線を教えることで、生活を立て直そうと考えて。


春世たちは、もともと満州国にいて、戦後の混乱のなかを引き揚げ。

そのために、夫とは生きはぐれ、夫に託した三女とも。

その死亡通知が届き。

夫と三女国子の、遺影が。


春世には、三人の娘がいて、長女が満子。次女が州子。そして、三女が国子。

つまり、三人あわせて、「満州国」。


長女の満子(奥山美代子)は、豊かな家に嫁ぎ、豊かな生活。娘がリカ(三森伸子)

で、なかなかのしっかり者。


この物語、戦後、満州から引き揚げてきた家族の、再生の物語。


母と、三人の娘たちの物語。


それにしても、あらためて、矢野陽子の存在感を、最前列で、受け取りました。


何ヵ所かの、長い台詞にこめられた、母としての想い、妻としての想い。


言葉が、身体の内奥から、実体を持って発せられ。

そのために、リアリティーが生まれ。

矢野陽子の演じる小林春世に、その悲しみに、その傷みに、共鳴してしまうのです。


それぞれが、その持ち味を活かした好舞台。


他に、井上カオリ、藍川メリル、元水颯香。


観劇したのが、29日(日)で、楽日、でした。


ホームページから、

昭和47年(1972年) グアム島のジャングルに戦後28年間、隠れていた日本兵の横井正一さんが「恥ずかしながら帰ってまいりました」と帰国、札幌オリンピックの日の丸飛行隊の金銀銅独占、ジャネット・リンの可愛さに沸き立ち、浅間山荘事件の中継に皆がテレビにかじりついていた頃——大阪では姉妹漫才師が活躍し、東京のとある文化住宅には満州引揚者の母親と娘がひっそりと住んでいる。

そこに次々と訪れる訳あり女たち。もうドタバタが止まらない?? 戦後復興に沸き立つ日本で、親子、姉妹の絆が、女たちの汗と涙と三味線の小粋な唄とともにつながっていく……。 作家・秋之桜子の母親と祖母の実話を元に構成した物語。三味線は実際に役者が弾き、西瓜糖初の女ばかりの座組。2021年の西瓜糖はホームドラマ。
「笑顔」を皆様にお届けしたいです。