3月5日(金)、俳優座劇場プロデュース公演『罠』を、見ました。

俳優座劇場プロデュース公演の、No.112。

ロベール・トマ(1927〜1989)の作。

翻訳は、小田島恒志・小田島則子。
 
演出は、松本祐子。

この作品は、1960年に、フランスで初演され、日本での初演は、その翌年。
その後も、繰り返し、上演されています。

この俳優座劇場プロデュース公演も、2018年に初演。その評判が高く、昨年に再演する予定でしたが、コロナ禍により延期。
今年、3月に、ようやく幕をあげることに。

この『罠』という作品を見るのは、今回が初めて。

作者のロベール・トマは、映画の『8人の女たち』(2002)。
フランソワ・オゾン監督作品の原作として。
カトリーヌ・ドヌーヴ、イザベル・ユペール、エマニュエル・ベアール、ファニー・アルダンなどの、華麗なる女優たちの競演。
しかも、歌って、踊って。
「最後には、あっと驚く秘密の罠が仕掛けられている。」
(映画『8人の女たち』のチラシより)

この『罠』も、ミステリーです。そして、まさに『罠』です。
原題は、少し違うのですが。
「そもそもこの芝居の題名『罠』の原題そのものがすでにネタバレになっているのだ。」
(今回の公演のパンフレット、翻訳の小田島恒志、小田島則子の文より)

チラシの「あらすじ」から、
「アルプス山脈が一望できるリゾート地、シャモニー郊外。新妻のエリザベートが旅先の山荘から失踪してしまう。警察の捜査でも手がかりは無く、憔悴する夫のダニエル。数日後、近隣の神父がエリザベートを連れ帰るのだが、それは会ったこともない女だった……
正体不明の神父とエリザベート、混乱する警部……
追い込まれていくダニエル。
果たして真実は誰が語っているのか!?」

新婚3ヶ月。ベネチアで結婚式をあげ。
エリザベートは、裕福な家柄。
一方のダニエルは、身よりもなく。

そのダニエルを、石母田史朗。
親身になって、ダニエルを心配し、その潔白を証明しようとするカクタン警部を、原康義。
エリザベートと称する女を、加藤忍。彼女は、本物なのか、それとも偽物なのか。
そして、彼女を連れかえったマクシマン神父を、清水明彦。

他に、本物のエリザベートと会ったことがある浮浪者メルルーシュを、里村孝雄。
本物のエリザベートに注射をうったことがという看護婦を、上原奈美。

罠にかかったのは、誰なのか?
罠をかけたのは、誰なのか?

誰の言葉が本当で、嘘をついているのは誰なのか?

で、エリザベートは?

最後の最後に、すべての謎が、氷解し。

「罠」にかかったのは、観客自身だった、と。

とてもよく練り上げられた作品。

謎が謎を生み、観客としては、困惑させながらも、早く、その謎を解き明かしたいとの期待感の高まり。
予測不能の展開。
まさに、サスペンス。

そこには、舞台の緊迫感が不可欠。
隙間があると、その小さなほころびから、全体が崩れはじめて。

演じる役者たちの、技。
それを引き出す、演出の力。

肩に力が入っての観劇。
疲れます。