3月6日(水)、下北沢にある、ザ・スズナリで、椿組による『かくも碧き海。風のように』を、見ました。
脚本は、嶽本あゆ美。
演出は、藤井ごう。

まずは、チラシにある、椿組座長の外波山文明の言葉から、
「(前略)今回は昭和11年の2.26事件以降の帝都が舞台・・・若い役者には遠い日の出来事(私も知りません)。が、この最近のきな臭い政治の世界を眺るに他人事とは思えない符丁が合う時代の話です。今だからこそ、あの軍靴響く時代を見つめ直すのも私達の使命と取り組んで参りました。が、そこは演劇『楽しくなくちゃ芝居じゃない』と遊び心で挑戦しました。ごゆるりとお楽しみ下さい!」と。

主人公は、ヨッチャン(三津谷亮)。北陸の回船問屋という、旧家の出身。ところが、すでに回船問屋は、過去のもの。祖母(矢野陽子)に見送られて、上京し、兄の下宿に。
その日が、1936(昭和11)年の2月26日。2.26事件。陸軍の青年将校らが起こしたクーデター未遂事件。
舞台は、決起する兵士、銃殺刑に処せられる兵士を、描きます。帝都の混乱。

大学生のヨッチャンは、バー・ナルシスに出入りするようになり、そこで、演劇に関わる人間たちと出会ったり。左翼思想の持ち主と知り合ったり。

ヨッチャンの家で働いていた女性を尋ねて、浅草花月に。そこの踊り子たちと知り合い、彼はピアノを弾けたところから、ショーを手伝ったり。
その地方回りで、北海道に渡ったり。

社会主義を信奉するようになり、留置所送りになったり。

時代が動き、国家による締め付けは、ますます厳しくなり、日中戦争も泥沼化して、やがて、1941(昭和16)年、太平洋戦争。
1943年の明治神宮外苑、学徒出陣の壮行会。

戦争へと、ひた走る日本。その過程を描きながら、そのなかで成長するヨッチャンの物語を重ねていきます。ヨッチャンの成長譚。
2時間10分。盛り込まれたエピソードの多彩さ。

花月の舞台に、「アキレタぼうや」なる音楽コントグループ。これは、「あきれたぼういず」のこと。川田晴久、坊屋三郎、益田喜頓らしき三人組が登場。「ボーイズ」芸を披露する。川田(有馬自由)、キートン(立花弘行)、坊屋(斉藤健)。
踊り子たちを訪ねて、永井荷風らしき人物が楽屋に。
薄田研二らしき人物も。彼は、築地小劇場の俳優。
永井荷風らしき人物、薄田研二らしき人物(外波山文明)

また、加藤道夫らしき人物も登場し、『なよたけ』を書くと言い、その1シーンも。また、『思ひ出を売る男』も。

詰め込まれたエピソード、その多さ、窮屈な感じ。
それを、一気に見せていくエネルギー。

ただ、欲を言えば、歌のシーンがけっこうあるのですが、それが、もっと聞き応えのあるものであれば、と。
また、舞台上の身体が、役としての身体になっていない、俳優自身の身体が現れている、特に、若い俳優に、それが目立っていた、と。