12月6日(木)、池袋の、東京芸術劇場シアターイーストで、ONEOR8による、『ゼブラ』を見ました。
田村孝裕の作・演出。

ONEOR8とは、1997年に、舞台芸術学院演劇部本科を卒業した、47期の同級生により結成された劇団です。
ということは、すでに、20年もの歴史。
で、今回、劇団創立20周年特別価格。
前売りが、2000円。当日が、2500円。
嬉しい価格設定ではありますが、かえって、大丈夫なの?と、心配になります。

昨年2017年には、4月に、ザ・スズナリで、『世界は嘘で出来ている』の再演があり、11月には、浅草の新しい劇場、九劇で、『グレーのこと』の上演がありました。

で、この『ゼブラ』ですが、初演は2005年10月。再演が、2007年。2009年には、シアタークリエでの三演。
ただしかし、この『ゼブラ』は、これまで見ていないのです。

ゼブラ、シマウマ。その縞模様が、お葬式の黒白の幕を連想する、というところから、題名となったという説。

これは、お葬式に関わる物語です。
お葬式には、「ドラマ」があります。

舞台は、手塚家の茶の間。

冒頭、まだ小さな四人姉妹は、パジャマ姿で、テレビを見て。母は、台所仕事。みんなで、父の帰りを待っている。という場面。
やがて、現代。
62歳となった母(和田ひろこ)は、入院中。しかも、すでに、意識の混濁が。
長女康子(弘中麻紀)は、35歳。結婚して、夫の由紀夫(瓜生和成)との間には、子どもも。
次女薫(星野園美)は、梨田(古屋治男)という婚約者が。しかし、結婚を前にして、少し、ブルーな気分。その結婚をきっかけに、住み慣れた家を離れることも、影響して。
三女奈央(冨田直美)は、男の影もなく。
四女美晴(新垣里沙)は、27歳。早川(恩田隆一)という、パチンコ狂いの夫があり。
その美晴を、子どもの頃から、思いをかけるのが、近所の本屋の息子である浅野(矢部太郎)。美晴は、浅野の存在を嫌いながらも、お金を借りるなどの、さまざまなことに利用しているのです。

父親は、22年前に、愛人と家を出て。ということは、冒頭の場面は、22年前のこと。
その父親に、一番可愛がられていたのが三女の奈央で、裏切られたとの思いを、今も、引きずっているのです。

家族というのは、否応なしに、生涯を通した関係、たとえ、遠く離れていようとも、縁を切ったとしても、その関係で、繋がっています。
あるときには、最大の味方であり、あるときには、最大の敵でもあります。
親と子ども。兄弟姉妹。その関係の総決算が、死であり、その死にともなう、もろもろの行事、儀式。

この舞台でも、母は亡くなり、葬式へ。

その葬儀を、母が生前から依頼していた柿沼葬儀社の兄弟が、執り行います。
保険の外交から転職したばかりの兄(伊藤俊輔)。弟(山口森広)。

この舞台は、味付けの濃い「笑い」が、至るところにまぶされています。
例えば、この葬儀社の兄弟。兄の失態。それに腹を立てる弟。その二人のやり取りの可笑しさ。ついつい、笑ってしまいます。
また、本屋の息子の浅野。その存在そのものが、観客を、可笑しさの渦の中に、引きずり込みます。
そして、四人の姉妹のやり取り。
そうした濃い「笑い」。口に合わないという人もいるかもしれません。
しかし、その味付けの濃さが、ここに展開されていく「素材」の旨味を、しっかりと活かしていく。

例えば、あれこれとあって、ラスト近く、三女奈央の目の前に、走馬灯のように、母と姉妹の、ある日ある時が、次々と展開していく。その、何と、感傷的なことか。
過ぎていく日々は、二度と還らない。
胸が、キューンと締め付けられました。観客席のすすり泣き。

22年がたって、自分たちを捨てた父親との関係。
(実は、母の浮気が原因、ということなのですが)
今では、結婚して、子どもも生まれ、新しい家族とともにある父親。
それでも、母の死に際して、連絡を取った姉妹。三女の奈央には、内緒にしておいて。
ラスト、その父親との電話。きつい言葉で、それを切った奈央。
しかし、再びかかってきた電話。その電話の鳴る中で、舞台は、終わるのです。