こんばんは、まだリハビリ中のJohnです。このブログで、ビートルズに関連する題材で事実に基づいたフィクションを書いていますが、今日もそれをお送りします。楽しんでください。
リンゴとピート
「ハンブルグでは何度か一緒のステージに立ったこともある。その時感じたことがある。あいつのドラミングはピートと違ってる。まず音がでかい。それに比べてピートは音が軽い。ピートはフィルもワンパターンだ。何よりもリンゴと演奏してるのは楽しい。」ジョージはそう感じていた。「できることならリンゴをメンバーにしたい。」最近そう思うことが多くなった。ジョンもポールもそれを感じていた。でも誰が最終的にピートに告げるかとなると、誰もが尻込みしていた。
「そうだ。先日、ブライアンと、マネージメント契約を結んだばかりだった。彼に頼んで言ってもらおう。」ジョージはそう思っていた。
「取り敢えず、今入っているBBCでのレコーディングは、ピートにやってもらわないと。」とジョージは思い直した。
ピートが加入して2年の月日が経っていた。皆がピートに違和感を感じたのは、ビートルズに加入して間もない頃だった。ジョン、ポールとふざけ合うことも多かった。でもピートはいつもそこから意識的に外れてた。ピートとは一体感が持てなかった。ジョージはそれが不満だった。
ハンブルグでもそうだった。ある日ジョージは新聞でずっと欲しかったストラトキャスターが中古で売り出されているのを知った。最初にピートに相談した。彼は金を貸すのを渋った。結局その金は、ジョンが用立ててくれた。自分がリッケンバッカ―のギターを買おうとして貯めた金だ。ジョンは仲間内にはそういう優しいところがあった。でもピートは…。でもあの時はタッチの差でギターは手に入らなかった。
先日も皆で飲みに行こうとしてたんだけど、ピートはドラムスの皮を買いに楽器屋へ行くって言って一緒に行かなかった。「まあ、一緒に飲みに行ったとしてもあいつだけ一人で飲んでるんだ。」ジョージはそう思った。
BBCでの録音が無事終了したが、まだジョージはピートをクビにしたいとブライアンに言えずにいた。「ねえ、ジョン、ポール。ブライアンに言ってくれよ、ピートのこと。」今度EMIのオーディションがあるって聞いたけど、その前に言った方がいいよ。」
「いや、言い出したのはお前だ。ジョージ、お前が言えよ。」このようにたらい回しにしているうちにEMIのオーディションも無事通過した。それでもまだジョージは、ピートをクビにしてリンゴを入れたいとブライアンに言えずにいた。
「なあ、ジョージ。EMIでの正式なレコーディング前にはブライアンに言った方がいいんじゃないのか?」とポール。
「ああ、分かってる。言うよ。今度こそ。」
そこへ丁度ブライアンがやって来た。「どうしたんだ、二人とも?」
「ねえ、ブライアン。話があるんだけど…やっぱり言えないよ、ポール。お前が言ってくれよ。」
「わかった。俺が言うよ。」
「何事だ?」
「実はね、ブライアン。ドラマーを代えたいんだ。ピートをクビにしてリンゴを代わりに入れたいと思う。皆でそう決めたんだ。」
「ジョンもこのことは知っているのか?」
「ああ、もちろんジョンも賛成してる。ただ、まだピートには伝えてない。だからブライアン、君からピートに伝えてくれないか。先日会ったEMIのジョージ・マーティンもドラムが弱いって言ってたよね。彼の希望だって言ってもいいし。」
「分かった。ピートの身の振り方も考えておかないといけないし一日猶予をくれないか?」
「君に任せるよ、ブライアン。ありがとう。」
翌日、ブライアンはピートを前にして言った。「なあ、ピート。この前EMIのオーディションがあったろう?あそこでプロデューサーのジョージ・マーティンから話があったんだ、君のドラミングが弱いって。ジョン、ポール、ジョージにも確認したけどやっぱり同じ答えだった。あいつらが君をリンゴと代えたがっているんだよ。君には新しいバンドを用意した。君がバンドリーダーだ。ピート・ベスト・オール・スターズっていうんだ。」
「う~ん、皆が望んでるんだろう、もう仕方ないじゃないか。」
「リンゴが来れるまで、まだ2週間ある。だからその間まだビートルズでドラムを叩いていてくれないか。」
「…分かった…」ピートは肩を落として椅子から立ち上がった。
次のライヴ・スケジュールの日、「ピートが来ないんだ。ブライアン。何とかしてくれよ。あんたがピートに伝えたんだろう?」
「責任をなすりつけあっても仕方がない。取り敢えず何とかしなければな。」
結局その日、ピートは来なかった。ポールが代わりにドラムを叩いて急場をしのいだ。その次のスケジュールも。そのまた次のスケジュールも…。
リンゴが正式に参加した日、スケジュールに入っていたキャヴァ―ン・クラブでのライブだ。この日は朝から不穏な空気が漂っていた。一曲目の『Someother Guy』が始まると「ピートを戻せ」と言う声が飛び交う。何とか予定曲をすべて演奏し終わって、彼らが楽屋に帰ろうとした時、幾人かの男がピートを求めて乱入してきた。危険を感じた彼らは速やかにステージを降りたがジョージだけは、買ったばかりの彼のギター、グレッチのデュオ・ジェットを守ろうとして、ステージに引き返した。そうすると、すぐ横から彼を殴ろうと手が出てきた。その手はジョージの目に命中し、彼はその場に倒れた。男はジョージに馬乗りになって彼を続けて殴ろうとしたが、雇ったばかりのロード・マネージャーのマルカム・エヴァンスが間に止めに入った。難を逃れたジョージは無事に楽屋に戻ったが、殴られた片目は青く腫れ上がってきた。
数日後、EMIスタジオでの初レコーディングが行われた。ジョージ・マーティンは不思議そうにジョージの顔を見て言った。「どうしたんだ、それ。」
「殴られたんだよ。」
「今日、写真撮影が入ってるけど大丈夫か?」
「何とかなるよ。」
そんなわけで初レコーディングの彼らの写真には、ジョージの青あざ姿が写っているのだ。