ビートルズ、シングル盤私的雑感(その132)/『ザ・ナイト・ビフォア/アナザー・ガール』 (3) | John's BOOROCKSブログ-I Love The Beatles, Fender Guitars & Movies!

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今回も1960年代から70年代にかけて、世界中で数多くリリースされた各国独自のビートルズのシングルの話です。昨日に続いて今回も、1965年日本で独自に企画されたシングル『The Night Before / Another Girl』の話です。

今日はB面の「アナザー・ガール」の話です。ご存知の通り、この曲も映画『HELP!』の挿入曲ですね。この曲は従来までのビートルズの楽曲に近く、ロックンロールの発展型とも言えそうなナンバーです。主旋律部分はロックンロールらしく、12小節から成っていますが、それだけで終らないのがポールの、ポールたる由縁。ミドル部分の8小節ではイ長調からハ長調に転調して、それを最後にキレイにイ長調に戻しています。ポールの技あり、というところでしょうか。


(映画『HELP!』の「Another Girl」のシーン)

ポールのペンによるこの曲も、彼自身のリード・ギターをフィーチャーしています。少し面白いな、と思ったのは、ギターの弦をベンドするチョーキングのポイントが、ブルース・ギター奏者とは異なっていて、カントリー・ギターに近い奏法と言えるかもしれません。

このアルバム・セッションでのポールは非常に多作で、アルバム『HELP!』に収録された「The Night Before」「Another Girl」「Tell Me What You See」「I’ve Just Seen A Face」「Yesterday」の他にもレコーディングのデータを確認すると、「I’m Down」「If You’ve Got A Trouble」「That Means A Lot」といった具合に、8曲をバンドに持ち込んでいます。ただし、その内の2曲(「If You’ve Got A Trouble」「That Means A Lot」)はボツになっています。デビュー以来、どちらかと言えば、ジョンの作品に押され気味だったポールですが、このアルバム辺りで、力関係が拮抗してきたと言えるかもしれません。

しかし、アルバム『HELP!』でのジョンの活躍は群を抜いていて、「Help!」「Ticket To Ride」「You’re Going To Lose That Girl」「You’ve Got Hide Your Love Away」といった具合に、エース級の曲ばかりが並びます。しかしポールも唯の一曲で、それらに対抗出来るような強力な名曲、「Yesterday」をものにしました。
ジョンとポールの力関係が拮抗し始めたというのは、こういった意味ですが、ここからビートルズの、本格的な進化が始まります。ジョンとポールが、真のライヴァル関係となったこの時期以降、ビートルズは短時間に飛躍的な変化を見せ始め、ロックンロールという言葉だけでは言い表すことが不可能な音楽性にまで膨張し、ただ単に『ロック』という言葉が使われ始めるに至るのです。
その時点で、ロックンロールは、『ロック』という文化に昇華したのです。

ビートルズの話は、また日を改めて!