昨日の午後
ある患者さんの歩行訓練をしに、デイルームに向かいました。
そこには、おじいさんとお孫さん(小学生の男の子)が、ソファに腰かけて座ってて、ちょっと離れた所に、もう一人のお孫さん(高校生の女の子)が携帯ゲームをしている場面でした。
★★★★★★★★★★★★★★★
以下、おじいさんが男の子に話してた内容です

『ねぇ、じぃじ、なんでニワトリは、飛べないの?』
一羽のニワトリが夢を抱いていました。
『飛んでみたい

』と。
その夢は、日を追う毎に強くなっていきました。
『飛んでみたい

』
という思い(日常普通にあること)は、
想い(自分の奥底で大切にしたい、突き上げてくるようなこと)へ変化していきました。
思いが想いへ変化した時
ニワトリは、一生懸命に羽根を大きく動かしました。
『いつか、飛べるかもしれない

』
という夢を信じて。
鳥類にとって、飛ぶという行為は、
何を意味するか。
生物は、この世に命を受けて誕生したことで、命を絶やさない為に、生きるという事に精一杯に頑張らなくてはいけない。
命を絶やさない為に外敵から逃げることも大切
命を絶やさない為に外敵と闘うことも大切
命を絶やさない為に、せめて自分と同じ形や種類の子孫を繁栄するのも大切
そうなると、命を絶やさない為にって事だけに焦点を絞っても、休息もひつようで、闘うことも必要で、瞬時に考える能力も必要なんだ。
空を飛ぶという行為は多くのエネルギー消費を伴う。
命を絶やさない為に食べることが大切なら、目の前にある獲物を逃がすわけにいかない。
獲物を逃がすわけにいかないから、いつでも、自前のエネルギーで、いつでも、追いかける事が出来る万全な体勢が必要。
毎日毎日、獲物を追いかけるようにギラギラした闘志で頑張っても、疲れ果てて、エネルギー切れになるだろ?
今、この瞬間的に飛ぶ必要があるのか無いのか。
今、この瞬間的に満たされてるか不満足なのか、その判断力は自己責任にかかっている。
ニワトリが、飛べない理由の1つ。
人に関わって事で飛ぶ必要が無くなった。
飛ばなくても餌がもらえ、外敵から逃げなくてもいいように、安心出来る寝床が提供されてきた。
空を飛ばなくても生き延びることができるのであれば、生物は空を飛ばない方向に進化(退化)する傾向がある。
無駄にエネルギー消費しなくても、夢のような生活を与えてくれたのは人間。
ニワトリが、飛べない理由の2つ目
ニワトリの祖先はキジの仲間。元々飛ぶのが上手ではない、だけど、完全に飛べないわけではない。
人に得意、不得意があるのと同じで、飛ぶ能力だけを見ると、不得意の部類だったんだ。
人類がそれを都合の良いように品種改良し、飛べない鳥としちゃったんだな。
ニワトリの場合、胸の筋力が羽ばたいて飛ぶには足らず、翼面積も滑空で自在に飛ぶには足りないし、羽毛の構造自体、空気を捕らえるのにあまり適していません。
それでも昔の名残なのか、たまに木の上に飛び上がる程度の飛翔力を持つ個体はいる。
人間に個性があるのと同じ。
同じ鳥類でダチョウの場合は足と身体の進化により簡単には他の動物に負けない走力と攻撃力を持つようになり、翼がニワトリよりさらに極端に退化していったようです。
またペンギンは陸の上に天敵がいない環境で進化したので飛ぶ必要がなくなり泳ぎに特化した能力を持つようになった。
『さて、お前の周りには、お前の命を絶やすかもしれない程の外敵がいるのか?』
『ううん。いない。』
『今、お前が辛い辛いと嘆いて動けなくなってるのは、お前の命を絶やそうとしてる程の事なのか?』
『ううん。違う。悲しかったけど大丈夫

』
『じゃぁ、ニワトリみたいに、バサバサ必死に羽根を動かす事が、今この瞬間的?大切なことなのか?』
『ううん。違うと思う。』
『今、しなくちゃいけないのは、何か考えてみー。』
『わかんないよー難しいよー

』
『ハッハッハッ

そうやな、難しいな

』
と大笑いした後で
少しだけ真顔になった、おじいさんが言いました。
『飛んでみたい

』という想いへ変化したニワトリがしたことは、最初は、ただ羽根を大きく動かした。
だけど、飛べなかった。
考えた。どうしたら飛べるかと。
『

』
『高いところからジャンプしたら飛べるかも

』
何度も何度も高いところからジャンプの日々。
だけど、飛べなかった。
また考えた。
『

』
『走って助走つけて羽根を大きく動かしたら飛べるかも

』
早速、試してみたニワトリは、少し浮いた気がした。
でも、ニワトリが、思い描く『飛ぶ』という行為とは違う。
また考えた。
『

』
『取り合えず、あそこまで飛ぼうと目標を持てばいけるかも

取り合えずあそこまでだ。あそこまで飛ぼう

』
ニワトリは、目標を決めて飛んでみた。
目標地点には届かなかった。
だけど、出発点と目標の間に、たまたまあった石。そこには到着出来たんだなー。
ニワトリ閃いたぞ

『目標には、届かなかったけど、取り合えず、ここの石には到着出来た

飛べなかった僕が、ここの石には到着出来たんだ

よーし、訓練すれば、目標地点までいける

絶対いける

』
あー、この先の話
もっともっと聞きたかったなー。
患者さんの歩行訓練が終了して、タイムオーバーとなりました。
昨日の昼下がり、入院してた、おじいさんの元へ御見舞いにやって来た、
お孫さんとの会話のやり取り。
実に考えさせられる、貴重な話でした。
元々、小学校の先生をしていたそうです。
これまで、たくさんの子供達に、ユニークで、ためになる、しかも惹き付けるような学びを教えてきたんでしょうね。
ニワトリの話中、ニワトリの飛ぶジェスチャー付きで、惹き付けられました。
いつしか、デイルームにいた人達が耳を傾けていたのも納得の人間力でした。
あとで、興味深い話を聞かせて頂いたと、お礼にいったのですが、
『あれは、創意工夫の意味に絡めた生き方のヒント話なんですよー。』
と教えてくれました。
創意工夫(辞書ではこうありました。改めて調べたくなったので

)
今までだれも思いつかなかったことを考え出し、それを行うためのよい方策をあれこれ考えること。
「創意」は新しい思いつき、今まで考え出されなかった考え。
「工夫」は物事を実行するために、よい方策をあれこれひねり出すこと。
私も、お孫さんに便乗して、生き方のヒントを学びました

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