「婦人と召使い」
●サインはありません。
●X線の情報がないので、とりあえず下の絵はないものと考えます。
●この絵も、「真珠の耳飾りの少女」のように背景が暗いです。召使いの持つ手紙、女性の姿が背景の黒に映えて目をひきます。
●手紙を書いている相手から、手紙がきたのであれば喜び、手紙に手を伸ばすと思うのですが、召使いの持つ手紙をみつめ、口元に手を当てる仕草は、嬉しさよりも戸惑いを感じます。
これは戸惑うような人からの手紙なのでしょうか?
X線による下の絵(過去を示すもの)もなく、未来への予兆を感じさせるものもありません。
「音楽の稽古」以降の作品は、地図や画中画、椅子といった大きなものを上書きすることはなくなり、描き方が変化してきています。
X線で見える”下の絵”にこめた過去のストーリーは、結局フェルメール本人にしか判らないものですから、”下の絵”を使わない、別の描き方を模索しているようにもみえます。
また「真珠の耳飾りの少女」「少女」「婦人と召使」の3点は、背景を暗くさせて人物を際立たせています。これまでのストーリー性よりも ”光と影”といった描写に重点をおいたようにみえます。
ただ「婦人と召使」においては、「音楽の稽古」と「合奏」が2枚で繋がってみえるように、この絵もこの先に描かれる別の絵と繋がっていると考えます。
「婦人と召使」の1枚だけでは、召使いが手紙を女性に渡そうとするわずかな時間の一コマにしか過ぎませんが、別の絵を組み合わせることによって、さらにストーリーが繋がるということです。
この続きは、その別の絵の時に。