社の危機を救うのは交尾の秘薬!音映/日活「006は浮気の番号」三沢あけみ/由利徹・近江俊郎監督 | 東映バカの部屋

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皆様、こんにちは。
 
 
夏期休暇最終日です。実家では二日酔いのの場合でも両親が居るから、逆に親父は俺が居るからと互いに緊張感が緩み飲み過ぎた為(一日で500ミリの缶ビールを2缶と日本酒を4~5合)昨日と今日は休肝日としています。しかし素面でも深夜1時に就寝し一度も目覚める事無く11時に起床ですから疲労蓄積が相当なのだと改めて感じました。そして朝昼兼用の飯を食いながら此方の作品を鑑賞…未ソフト化作品でAmazonプライムビデオ(日活プラス対象作品)内に於いて有料動画配信が行われています。
 
 
「006は浮気の番号」昭和40年7月28日公開・松井稔脚本・近江俊郎監督・音映制作・日活配給。
 
 

 

 

南利明が社長を務めるライバルの製薬会社に繋がる間諜の仕業により、ドル箱商品であった風邪薬を死亡事故を理由として販売禁止の命令を厚生省(現・厚生労働省)から受けた大手製薬会社の社長の由利徹はそれが原因で卒倒し、愛娘の三沢あけみを社長代行に立てて療養に専念します。しかしその病状は一時的かつ精神的なモノで翌日以降は家政婦の目を盗んで食と女の美食三昧に酒も飲む飲む…そして或る日、こっそり抜け出し出向いた焼き鳥屋で戦友・佐山俊二と出逢い(因みに佐山さんの実子・勝三四郎は由利ちゃんの会社の研究員)思い出話から「社の危機を救うのは交尾の秘薬!」との結論に達し、その秘薬の調合を知る為に過去の記憶を辿り或る壺を探し集め始めます。紆余曲折を経て遂に完成したその秘薬は、果たして瀕死の社を救うのか?

 

 

ウィキペディア「由利徹」を読むと「どんな笑いでもセックスに繋がる、だから可笑しいんだ」「汗をかいて遣ってはいけない、サラッと遣るのだ」「子供の涙は虹の色、喜劇役者の涙は血の色」等々と語られていたそうです。当作品は三沢さんがトップクレジットで由利ちゃんは三番目ですが、社長・戦地の酋長・数十年後の若社長(=孫)の三役を務めた由利ちゃんが実質主役ですし、下積みから叩き上げの、しかも一度は帝国劇場に出演しながらもよりも出演料が高額との理由でストリップ小屋での活動を決断した筋金入りの喜劇役者を大役で起用した制作側の姿勢は素晴らしい!理由は金銭としても、舞台上から見下ろすとは云え観客との距離が大劇場と比較して遙かに近く市井が求める芸や社会に対する不満等々を得易い・感じ取り易いストリップ劇場を選んだのはその後の由利ちゃんの活躍を考えると大正解だったでしょうし、ムーランルージュ時代に共に舞台に立っていた森繁久彌との方向性の違いも明確です(俺はこのお二方なら由利ちゃんの方が好きですし質もセンスも遙かに上と感じます)。そして出演者の顔触れからも感じてはいましたが、喜劇はこの頃から数あれど当作品はそれ等を遙かに凌駕する大馬鹿映画の類でその内容は東映「温泉スッポン芸者」の鈴木則文「東京ふんどし芸者」の野田幸男「ポルノの帝王・失神トルコ風呂」の内藤誠「セックス喜劇・鼻血ブー」の高桑信「河内のオッサンの唄」の日活出身の斎藤武市並みですし、昭和40年初期以降は特に東映の監督陣が由利ちゃんを重用した理由がよく理解出来ます(次いで日活が多く、ロマンポルノとして配給された外部制作作品に出演した事もあります)。又、由利ちゃんの持ち歌「カックンルンバ」を作り、新東宝の大蔵貢社長を実兄に持ち既に数作品の演出を経験していた近江監督が喜劇を理解していたのも効を奏したと思います。「知らぬは佛」と云わんばかりに動物語で目の前の者の貶す動物研究家とその助手なんてのも出て来るのですから…

 

 

余談ですが、由利ちゃんの郷里である宮城・石巻には石森章太郎記念館は在っても由利徹記念館は未だに無い…石森先生と別の視点から市井の求めるモノを受け入れ生かした由利ちゃんの記念館も何時かは是非実現して欲しいものです。