俺が逃した轢逃げ犯は俺の手で!大映東京「黒い爆走」田宮二郎/藤由紀子/藤巻潤・富本壮吉監督 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、こんばんは。

 

 

今朝8時に勤務を終え、月曜日11時の始業時迄休みです。週末だから恐らく3時間残業になるだろうと思っていたらその通りになりましたが、それでも来週に繰り越しとなった製品が相当に有ります。身体や精神が疲弊していても金になると思えば老体に鞭を打たなくても身体は動くモノ!金の魔力(又は金欲・物欲)の魔力は偉大ですし、これに固執し過ぎるのは問題ですが人並の欲は無ければならぬものですね。以前見聞きしたのは、心理の専門家の見解としてですが「自殺に至る原因の一つは欲の喪失。特に金銭に関して…これさせ失わなければ余程の事が無い限りその心配は無いと思ってもいい」のだそうです。これには納得…もしかすると自殺とは違いますが、挑戦心と共に欲を持ち続ける方の方が長生き出来たり病気に打ち勝ったり、余命宣告を上回る期間生き長らえたりするのかなぁとも思ってしまいます。

 

 

さて本日は、CS・衛星劇場で特集放映されている大映制作「黒シリーズ」から…VHS化作品ですが未DVD化で有料動画配信も行われていません。以前有料波で放映された実績は有りますが俺は見逃してしまいました。尚、衛星劇場に於ける放映は終了しています。

 

 

「黒い爆走」(「黒シリーズ」第七弾)昭和39年2月1日公開・舟橋和郎脚本・富本壮吉監督・大映東京制作。

 

 

 

 

警視庁交通機動隊の白バイ警官で無類の単車好きである田宮二郎は3台の単車を速度超過で追跡していたものの二手に分かれてしまった為に単独で逃走した単車を追跡し車載カメラで撮影も行いましたが、逃走中に児童公園内に進入し男児に瀕死の重傷を負わせます。しかも田宮さんは救急車の手配を事故を知って駆け付けた交番勤務の警官に託して追跡を続けましたが見失い、撮影した写真を添えて追跡調査を専門に部署に任せます。しかし翌日の新聞に「白バイの過剰な追跡も事故の原因では?」と書かれた事に腹を立て「俺の取り逃がした真犯人は俺が逮捕する!」と、交際相手の藤由紀子の実兄で刑事の藤巻潤の制止を振り切り独自の調査を開始します。そこで浮かび上がって来たのは「貸し単車で遠方へ足を運ぶ遠乗り会」と称する催し…自らの身分を隠し参加機会を得た田宮さんが目にしたのは高額な異国製単車ばかりが取揃えられていた事。果たしてこの催しは何を目的としているのか?そしてその中に轢逃げ犯は居るのか…

 

 

 

 

初めは自身の行為に対する誹謗中傷と真っ直ぐな正義感から犯人を追っていた田宮さんが(劇中、別の警官に被害者保護を要請しながらもそれが職務規程違反である事と、犯人検挙の名の下に無報告かつ単独で捜査をしていた事を上司から叱責されています)実行犯検挙後にその行動を賞賛する報道機関の取材に対して「子供に重傷を追わせて逃げた犯人を検挙しても嬉しい筈が無い!」と語る程心境が変化しています。これは色々考える内に自らの行動も子供を被害者にしたのではないかと云う心理変化が影響しています。これに対して藤さんは「貴方にもそんな一面が有るのを知って安心した」と語り、更に藤巻さんが最後の賭に出た田宮さんを制止しようとしながら「お前には負けた!」と助言をした上で送り出したのはこれがあってこそと言えそうです。

 

 

当作品で描かれている「追跡中の事故」に関しては現実の社会でも無数に起きていますしその度に報道機関は警察側を批判する様な書き方をしています、過去も現在も恐らくこれからも…俺は「職務遂行中に多少の犠牲が出るのは仕方がないし、小の虫を犠牲にしてでも大の虫を捕まえなければ更に被害が広がる」との考え方ですので田宮さんの追跡行為は何ら問題は無く、自らが悪いと考える必要も無かったと思います。寧ろこの作品で描きたかったのは「盗難ビジネスの実態を描きながら、自らが変われば周囲も変わると云う、高度経済成長真っ只中の我国で失い欠けていた人間社会の基本中の基本を思い起こさせる事」だったのでは、と…先述の藤巻さんの潜入容認や劇中の清涼剤の一つである田宮さん・由紀子さんの交際模様(田宮さんが由紀子さんとの約束を捜査の為と反故にした為に仲違いになりそうになりながらも、徐々に協力的になり最後には自らも連れて行って欲しいと懇願する、等々)にそれが描かれています。この時代は「黒」と云う色が似合う時代とも言われていますし、鑑賞染みの「黒の試走車」等々2.3作品の雰囲気から「暗部を抉り出した作品ばかり」かと思っていたら、この様な観易いのも存在していたんですねぇ…他の未見作品も大いに楽しみになって来ました。