女賭博師モノは大映・東映より日活が早かった?「賭場の牝猫・素肌の壺振り」野川由美子/二谷英明 | 東映バカの部屋

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皆様、こんにちは。

 

 

休み二日目、真冬とは思えぬ暖かさで降雪ならぬ降雨の秋田市内です。昨日は記事の更新後そのまま寝入った上にそれからもダラダラと過ごしていました。明日は夕方前の出勤ですのでこの流れのまま朝方迄行ってしまう事となるでしょう。厚着さえすれば暖房を一時使用しなくても暖を取る事が出来るのは灯油代が高い現在では有難い…

 

 

さて本日は未DVD化作品ですが最近Amazonプライムビデオの見放題対象に追加された作品から(本日時点で有料動画配信が行われているのはAmazonプライムビデオ内のみです)…数年前に逝去された技斗師で高瀬道場顧問の高瀬将嗣は自著内で「幼少期、実父で殺陣師の高瀬将敏に日活撮影所に連れて行って貰った際、和泉雅子の可憐さや野川由美子の美貌に絶句した」と記されていましたが、その後者である野川さんの主演作品。しかも「女賭博師モノは大映が先駆で東映が追陣」と長い間思っていたのですが「日活が先陣で大映が追陣し更に東映も参入」の図式である事を知りました。

 

 

「賭場の牝猫・素肌壺振り」(「賭場の牝猫」シリーズ第二弾・因みにAmazonプライムビデオ内で配信されているのはシリーズ第二弾・第三弾です)昭和40年10月23日公開・浅田健三/西田一夫の共同脚本・野口晴康監督・日活制作。

 

 

 

 

亡き父親の意志を継ぎ女賭博師となった野川由美子…或る賭場でいかさまを指摘された際に救ってくれた彫師兼胴師の二谷英明の「女壺振りは色気が第一!その色気に客が集中したその時に全てを賭けて真剣勝負に臨むモノ!」を頑なに守り賭場を渡り歩いていた上に二人には愛情が芽生えていましたが、二谷さんは凶弾に倒れ絶命してしまいます。程無くして野川さんはふと思う事が切欠で女壺振り稼業から足を洗いトルコ嬢にに転身しましたが、その仕事部屋に窓から侵入して来たのは負傷していた網走帰りのヤクザの二谷さん(二役)!野川さんは二谷さんを介抱し別れた直後に成人後に実姉と知った一家の姐さんを務める堀恭子の元を訪れ程無くすると二谷さんが顔を出し…実は二谷さんは堀さんの実父が率いていた組の一員で敵対組織に命を狙われながらも亡き親分の敵を探していた上に、壊滅状態にある組の再興に尽力しようとしていたのです。そしてこの親分の殺害事件を追っていた野川さんと旧知の刑事である菅井一郎と藤竜也、更には堀さんの後見人・援助者である須賀不二男を絡めながら真犯人追求と名目上は預かりながらも実質奪われていた堀さんの縄張(=シマ)の奪還を中心として物語が展開されて行きます。

 

 

 

 

「公開当時の現代を舞台としながら極致に追い込まれた賭博師の起死回生を主題としていた大映の女賭博師シリーズの江波杏子」「古き良き時代の戦前を舞台に、箱入り娘が博徒であった父の死を切欠に女を捨て男として生きながらもそれが女らしさを極めていた上に、女侠は堅気を救えるかが主題となっていた東映の緋牡丹博徒シリーズの藤純子(現・富司純子)」と比較すると重厚感や緊迫感が欠ける様に見えるかもしれません。しかし、この「賭場の牝猫」は野川さんの実年齢に合わせたかの様な人物設定により自然体を存分に生かせる様な手法が取られたのかと思う程嵌まっていますし美点!又、公開当時の時代感覚や思考の変等々を敏感に受け止めた上で古き良き感覚と観客が望んだであろう展開や描写を絶妙に絡めた「野川さんの代表作」として取り上げても遜色の無い傑作」と言えると思います。野川さんの過去をよく知る刑事達の業務遂行意識を離れた人間らしさや姉妹愛の強固さ、そして初心貫徹の為にはまやかしの敵対関係構築や救いの為のいかさま勝負も辞さぬ鋼の精神力に表面上は強気を通しながらも徐々に右往左往する様子が伺える悪党側の描写等々非常によく出来ています。

 

 

野川さんは当時日活専属ながら女優不足に悲鳴を上げていた東映に貸し出された際「東映の作品に出演するとホッとする。何故なら東映の作品にはドラマがあるが日活の作品にはそれが無い」(「賭場の牝猫シリーズ」の後に制作された「夜の牝シリーズ」及び東映の「夜の歌謡シリーズ」に出演していた時代の発言です)とお話しされていたらしいですが、俺は日活作品には東映作品には無いドラマがしっかりと息衝いていると思っていますし、東映作品の次に目が向くのはロマンポルノを含む日活作品に多いです。まぁこれは個人の感覚ですから人夫々ですしそれでいいのですが…そして賭場での命懸けの勝負の場面でも冷静沈着かつ目を決して剥かぬ様相を自然に見せる二谷さんの静かな凄味も見所!以前も記しましたが、石原裕次郎等々他の日活俳優と比較すると地味な印象を抱かれていますが、役柄の大小等々不問でなり切れ演じ切れたた二谷さんの演技力はもっと評価されるべきと思いますし、芝居の上手さでは鶴田浩二と同格と言ってもいいかと…