渡哲也の松竹初主演作「さらば掟」范文雀/岩下志麻/青木義朗・舛田利雄監督。衛星劇場で放映 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

●この記事は追記の上、令和4年5月5日(木)14:15頃に再更新しています。

 

 

皆様、こんにちは。

 

 

休み最終日、やっと暖房器具をしまえる暖かさとなりました。昨日は友人と八幡平方面にドライブへ…「俺の車の方が(W35プリウスPHV)燃費がいいし、給与天引きで自己負担さえすれば会社のカードで少々安価で給油可能だから(売り掛け販売扱いなんでしょうね)…」と言うので助手席でゆったりとさせて貰いました。秋田市内から鹿角市内に入り八幡平アスピーテラインで秋田・岩手両県境を越え盛岡経由で秋田市内に戻る計画でしたが、天候不順により秋田県側は蒸ノ湯温泉口で通行止めとなっており、そこで引き返して田沢湖経由で帰りました。雪の廻廊となる程の積雪量ではありませんでしたが、上着を着なければ外に出るのが嫌になる寒さでした。

 

 

さて本日は、日活の経営及び先の運営方針が不透明となっていた頃から松竹に出演し始めていた渡哲也が他社で初めて主演を務めた作品です。

 

 

「さらば掟」昭和46年9月15日公開・鴨井達比古脚本・舛田利雄企画/監督兼任・浅井事務所/松竹の共同制作・松竹配給。

 

 

未DVD化作品で有料動画配信も行われてはいませんが、衛星劇場に於いて5/5(木)03:15・5/16(月)10:00・5/29(日)04:10の三回放映されます(字幕付きHD放映)。

 

 

 

 

 

湘南海岸の近くで岩下志麻が営む花屋の店員である渡哲也(当作品は東洋工業=現・マツダが協力している為劇用車は初代ボンゴを重用しています)は「死にたい奴は死ぬさ…」と一度は言い放ちながらも酒と睡眠薬を服用後船舶を操縦し自殺を図ろうとした范文雀を救い、その事が美談として新聞に掲載されたに留まらず、命の恩人として文雀さんの実父で会社社長の芦田伸介から文雀さん・芦田さんが決めた生涯の伴侶である取引先の会社重役の藤木孝との婚約記念の催事に招待されます。しかし政略結婚である事・学生運動に身を投じた結果深い挫折感を味わい何事に対する興味と生きる意欲を失っていた文雀さんでしたが、不良仲間の輪姦未遂から救ってくれた上に過去の身の上話を聞いてくれた渡社長に心を開き、情交に至ります。

 

 

丁度その頃から渡社長の身の回りには不穏な動きが(不審者の一人として渡社長の盟友であった刈谷俊介が登場します)…新聞に掲載された美談がその始まり。実は渡社長は神戸で親分の妾と逃避行を図ろうとしたものの発覚し、その妾は銃殺された上に渡社長は組織幹部の深江章喜に後遺症を与える程の重傷を負わせた為にお尋ね者となっていたのです。逃亡疲れの結果行き着いたのは湘南の花屋でありズルズルと何年も生き延びていた…後に神戸から深江さんと共に湘南に来た殺し屋・青木義朗は「お前は殺したくはない」と言い放つのですが、青木さんは先述の事件を警察に密告し、渡社長を逮捕・服役させる事で救った命の恩人でもありました。そして文雀さんは芦田さん・藤木さんの策略によりキチガイ病院の特別病棟に監禁され渡社長に救いを求め脱出を成功させましたが、芦田さん・藤木さんと深江さんの利害が一致した事から魔手は巨大化し、それを知った志麻姐さんは二人を海外に密航させる為に一計を案じましたが…

 

 

 

 

お気づきの方々が多いかとは思いますが「舛田監督・渡社長の顔合わせ」と云えば日活制作の傑作「紅の流れ星」が存在。細部にはかなりの違いはありますが、大枠の雰囲気や流れには「紅の流れ星」と共通するものを感じました。但し何方か云えば文雀さんが渡社長に惹かれて救いと愛情を求め、渡社長は自身の過去と文雀さんの現状を重ね合わせる事で相思相愛に至った様な趣。又、結末の大きな武器として「マドンナ女優の公衆電話」が鍵を握っている点も共通ですが、趣旨と内容は全くの別物に仕上げられている上に結末で数人が我に返った様に人間らしさを取り戻し、それが虚無感と余韻を存分に感じさせる幕引きに相当な効果を発揮しています。

 

 

そして「密航の確約を得ながらも悲劇的な結末が訪れる事を覚悟していたかとも感じる程、隔離状態に置かれた数日間を楽しく、人間らしく生きようとした二人の幸福感」が鑑賞後に結末の序章としてズシンと響いて来ます。特に「こう毎日中華料理じゃ…味噌汁が食いてぇなぁ(中略)香港に行ったら食えなくなる」と愚痴を零した渡社長の言葉に呼応する様に文雀さんは「絶対に外に出るな!」と忠告されていたにも拘わらず生涯で初めての市場での買物を楽しみ「何故外に出た!」と渡社長から平手打ちを食らい号泣しながらも謝罪により更に心が通じ合い、手料理で会話の弾む食卓を囲んだ場面にそれを感じました。更にいい雰囲気を出していたのは「渋さからだるさから怖さから色気迄、大人の男としての魅力をシンプルにではあるが魅力をフル装備した特別仕様車の様(これは杉作J太郎が自著内で記載していた言葉です)かつ洗練された都会の薫りを感じさせた、日活作品の常連悪役の青木さん!お洒落ながらも関西弁丸出しで軽さが前面に出て来るものの、心底好きな人間を救う為・納得の行かぬ不条理には牙を剥く男気が瞬間的に発揮される人間性に痺れますし、青木さんの瞬時の判断も結末の余韻の大きな武器として功を奏しています。

 

 

尚、私感ではありますが「既に実績と評価を得ていたこの時代の若手一般女優陣」の中では梶芽衣子・夏純子・松尾嘉代・安田道代(現・大楠道代)・大原麗子・藤純子(現・富司純子)・野川由美子・江波杏子・倍賞美津子…そして范文雀の10人に特に目が行ってしまいます。

 

 

 

●追記 この記事を打ち込み後、自宅近くの本屋で石原慎太郎が安藤昇に関して記した書籍が新刊として発行されていた為(とは云っても数年前に発売された書籍の文庫版として改題の上再発行された模様ですが)を買いました。

 

 

しかし、石原先生には是非共首相を遣って貰いたかった…絶対に普通の国になったでしょうし、露中韓朝に代表される日本に対し脅威を与えかねない国家に毅然と「ノー」と答える強い我国、そして徴兵制により愛国心と国家防衛の意識を強く全国民に植え付け、更には市井の日常に於いても偉人・先人・歴史からきちんと継承・踏襲・伝承する美徳が出来上がったか思うと残念無念…