出生の秘密を利用してはみたものの…新東宝「黒い乳房」小畑絹子/池内淳子/菅原文太 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、こんにちは。休み四日目、幾分春らしさは戻って来たものの天候が不安定で日が差したかと思えば通り雨となったりすっきりしません。

 

 

今日は憲法記念日ですが、何時の時代でも言われている通り平和惚けした我々国民が年に一度は国情と未来を憂い憲法を真剣に考えるべき。因みに俺は「憲法第九条は愛国心と国防の基本と云う国際的に見て当然の事を拒絶し、我が国民を平和惚けに陥れ、国家の在るべき姿を捻じ曲げた世界中の憲法条項の中では恥ずべき最低最悪の内容」と感じています。国家が国民の生命・財産等々を守るのは当然ですし、老若男女を問わず日本人であれば少なからず心の奥底に宿っている任侠道に則り(又は侠客道。これは極道の社会のみで通じる事と考えられている方々が大多数でしょうが、我々の日常に照らし合わせて考えれば多分ご理解頂けるものと思います)不条理な行為により生命の危機に晒されている異国民を脅威から守るのは日本人の美徳。更に戦争・防衛・平和維持活動は見た目は似ていても主旨は全くの別物!憲法9条を全面削除した上で関連法を含めて「領土等々の防衛」「国連を通じた活動に対してのみ自衛隊を派兵可能とするが、紛争地の将来の復興を妨げる核兵器・生物化学兵器・対人地雷等々の保持・使用は固く禁じる」等々、現実的な範囲内での改正は一刻も早く絶対に実現させなければならないと思います。

 

 

さて本日は、今年1月に90歳でご逝去された小畑絹子(ご逝去時は小畠絹子。他に「きぬ子」「キヌ子」等々複数回改名をされています。尚、この先は当作品での芸名表記に従い「小畑さん」と致します)の主演作品かつ、小畑さんの主演作品では最も好きな作品を…この場を借りて心よりご冥福をお祈り致します。

 

 

「黒い乳房」昭和35年6月4日公開・杉本彰脚本・土井通芳監督(監督作品数は少ないものの、里見浩太朗が不良青年役として主演を務めた佳作の日活「“人妻”より 夜の掟」も手掛けられています)・新東宝制作。

 

 

DVD化作品ですが有料動画配信は行われていません。

 

 

 

 

横浜で昼はドル買い、夜は女給の日々を送っていた小畑絹子…情夫の高宮敬ニに常時監視されている生活に嫌気が差し始めていた頃、孝行娘の言葉がピタリと嵌まる看護婦の池内淳子と同居していた実母の藤村昌子が交通事故死しますが、藤村さんが最期を迎える直前、一人で看病していた小畑さんに対し異父姉妹である事を伝え「小畑さんは網走刑務所に服役中の殺人犯、池内さんは大手の重工業の社長・林寛」と告白。後日小畑さんは池内さんを呼び出し藤村さんの言葉を伝えるのですが「私は社長の娘」と事実と異なる話のみを伝えその会社に乗り込みます。林さんの秘書である菅原文太が調査を進めた結果、間違いは無いと判断し林さんと対面を果たした上に社長邸宅に同居する事となります。しかも「父親は違っていても私の娘と同じ」と池内さんも同居させる事を快諾した林さん…後日池内さんも同居を始めますが林さんがより親しみを感じている様子を目にした小畑さんには嫉妬心が芽生え始めた上に、当初林さんの財産を相続する予定となっていた会社重役の川喜多雄二が小畑さんの過去を洗い始めていたのです。更に警察への密告電話で腐れ縁を断ち切った筈の高宮さんが出所したその足で小畑さんの居所を突き止め多額の金銭を要求し始めた上にその事実を川喜多さんに知られた事で小畑さんは保身に走り…

 

 

 

 

「羊の皮を被っても狼は狼!」「悪銭身に付かず」この何の変哲も無い普通の思考を如何に面白く手に汗を握らせ興奮させるかのみを徹底的に追求し、自身に都合の悪い人物は葬り去ったとタカを括っていた筈がそうは行かなかった等々行き着いた悪事への報いの描写も然る事ながら、一度は人間不信と生命の危機に晒された池内さんに救いのある結末に着地させたのが美点!又、序盤では「あれ?と思う、普通の方々で在れば即座に疑問を抱きそうな一言」が放たれたにも拘わらずそのまま物語は進んで行ってしまうのですが、これが結末を大いに盛り上げる要素として終盤で活きた上に、池内さんの出生や過去にどんな事実が存在しようと生涯の伴侶となると固く誓った文太さんの人柄を際立たせる効果に繋がっているとは思いもしなかった!

 

 

そして「富を得る為なら手段を選ばぬ小畑さんの悪女芝居」も途中下車を拒否させる魅力に溢れている上に「今度は何を遣らかすのだろうか?」と期待感も高まります。嘘泣きで林さんの心を動かし文太さんとの婚姻に漕ぎ着けたかと思えば(先述の通りこの点は終盤で崩れ去ります)池内さんを事故死に見せかけて殺害しようとしたり…策略的・計算的に見えながらも実は打算的・場当たり的な行動に終始する辺りは「殺人犯の血なのかなぁ」と強く感じてしまう程。でも、新東宝時代の小畑さんの代表作と言ってもいいでしょう。

 

 

尚、文太さん・小畑さんは昭和54年に東映東京制作「トラック野郎・故郷(ふるさと)特急便」でも共演されています。小畑さんは「小畠絹子」名義で出演され、マドンナ・森下愛子の実母かつ、寝たきりで唖と云う役柄でしたが、大好きな歌「南国土佐を後にして」をもう一人のマドンナ・石川さゆりが無伴奏で歌唱してくれた事に大満足し、微笑みという感謝の表情のまま息を引き取るという名演を見せてくれています。因みにこの場面は「トラック野郎」全10作品の中でも屈指の感動場面ですが、当初は脚本に無かった場面。娯楽を知り尽くしていた鈴木則文監督だからこそ市井の心に響く本物の感動を実現させる事が出来たのだと思っていますし、喜劇を得意とした監督として本来ならばもっと評価をされ、生前ご本人は「裏方だから…」と表舞台に決して出ようとはしませんでしたが、その様な姿勢を貫いたからこそ、今最高の勲章を贈るべき一人です。