手錠で繋がる黄と黒!日活配給「ある色魔の告白・色欲の果て」藤木孝/山本昌平・江崎実生監督 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、こんにちは。

 

 

本日深夜1時に勤務を終え、来週木曜日13時の勤務開始時迄の連休に入りました。かなりの未作業品が在る為、当初は休日返上勤務の話も在ったのですが「それを遣ってしまうと俺も含めて3月/4月の時間外勤務時間の総計が双方共に規定の40時間半ばを超えてしまい来月の業務に影響が出る(因みに今月は規定時間丁度で終わりました。しかし、先週の日曜日の出勤を振り替えにしていなかったら50時間を超えていました)」「取引先も全てが連休の為受け入れ体制が無く運送会社の営業所に数日間止めてしまう事となる(適切な温度管理等々が必須の為品質問題になりかねない)」等々の理由によりこうなりました。今年の連休も郷里の盛岡へは帰省せず秋田市内で過ごします、疲労感が全く抜けていませんので遠出する気にもなりません。

 

 

さて本日は此方の作品を…先々月から今月にかけてchNECOで放映された、ロマンポルノ転換から遡る事大凡3年前に日活で配給された作品です。尚、公開当時から現在に至る迄一般指定作品ですが、ポルノ映画並みの濡れ場の連続ですので当方での振り分けは「日活作品(ロマンポルノ他成人指定作品)」と致します。

 

 

「ある色魔の告白・色欲の果て」昭和43年8月14日公開・山崎巌脚本・江崎実生監督・青山プロダクション制作/日活配給。

 

 

未DVD化作品で有料動画配信も行われておらず、今年全局に於いて初の放映となりました。

 

 

 

 

 

女子大生から女給・上流夫人に至る迄色魔振りを発揮し、甘い言葉で身体と金銭を奪い取る自動車修理工の藤木孝。一度は詐欺罪で所轄署刑事の高品格のお縄にかかったものの嫌疑不十分で釈放となります。しかし、修理済みの車両の届け先の夫人を情欲した後のドライブで事故を起こしたのを切欠に新たな被害届が提出された事で藤木さんは怪我の回復を待って逮捕される事となり、入院中の病室には警官が張り付いていましたが、看護婦を脅迫し脱走!向かった先は情欲相手の林美樹が務める酒場…ところがそこで目にしたのは心から林さんを愛している事を告白し、その気持ちを受け入れて貰った混血の黒肌・山本昌平との情交!二人は口論・格闘となり、山本さんから刃物を奪った藤木さんは止めに入った林さんを刺殺!しかもその場に藤木さんの行方を追っていた高品さんが二人に手錠を嵌めましたが、水と油の筈の藤木さん・山本さんは共闘して高品さんを暴行し盗難車で伊豆に逃亡します。何故なら、伊豆には山本さんの実姉で修道女の火鳥こずえが居た為…果たして、手錠を切る事は出来るのか?そして追い込まれた二人に待ち構えていた最期とは?

 

 

濡れ場は平均10分に一回と、後の日活ロマンポルノ並みかつ、先に成人指定作品に進出していた東映異常性愛路線/ポルノ路線をも遙かに上回ります。後半戦では相互読者さんのパンクフロイドさんから以前頂戴したコメント「良い悪いは別にして彼女の主義出張も見えてきます(中略)健全さの欠片もないところがいいですね」に全く以て納得した花柳幻舟も登場し花を添えています。

 

 

同時に「欲の塊で人間性の欠片も無い藤木さん・最後迄人間らしさを失わぬ山本さん」の対比が全般に漂い、単純な情欲作品どころかかなり奥深い問題提起をしているのも美点!当作品公開当時は大東亜戦争終結から約20年半ば…通称「パンスケ」に留まらず一般女性の腹からも相当な混血児が生まれ、またそれに対する差別も現代では想像が付かぬ程の社会問題となっていた事はこの時代を生では知らない俺は書籍や映像作品を通じて知りましたが、口には殆どせぬものの一挙手一投足及び表情から差別感情がはっきりと解る藤木さんに対し、肌の色を気にせずきちんと育ててくれた米国に帰国した実父と心を受け入れてくれた林さんへの感謝・外部要因と自身の弱さからどん底迄堕落しながらも一念奮起し修道女として第二の人生を歩んでいる火鳥さんへの尊敬の念を口にする等々の山本さんの芝居に惹かれます。同時に、二人で暴行・情欲に至る場面に於いても欲でしか無い藤木さんに対し、差別を第一とした社会全般への不平不満?復讐心?とも受け止められる山本さんと此方も姿勢の違いが鮮明!

 

 

情欲場面と適度なアクションで観客の娯楽思考を一定以上満足させながら、市井に蔓延る概念への問題提起に重点を置いた佳作かつ、全出演作品を鑑賞していない為暫定ではありますが、山本さんの芝居としては最も優れていると感じた作品です。