縄を憎む男女が辿り着いた結末は?新東宝映画「縛り婦人」向井寛監督。GYAO!で無料動画配信中 | 東映バカの部屋

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皆様、こんにちは。

 

 

深夜に記事更新後少しだけ寝るつもりが起床したら10時を廻っていました。こうなったら今日は何処にも出掛けず昨日に引き続き昼酒をしようと風呂も済ませ、一杯遣りながらこの作品を鑑賞…

 

 

 

「縛り婦人」(公開時及び各種ソフトの題目は「発禁縛り婦人」)昭和53年公開・宗豊脚本・向井寛監督・新東宝興業(=新東宝映画)制作。

 

 

VHS/DVD化作品でDMM.com等々複数のサイトで有料動画配信が行われています。尚、GYAO!内に於いて当作品の「R15+版」が5/4(水)23:59迄無料動画配信されています。

 

 

 

 

 

 

愛する女性を縛りで殺してしまった事を切欠に縄を憎み、名人と言われた腕さえも捨てて流れ者のヤクザとなった男が、在住地の新興ヤクザの親分の女房として迎え入れられたものの、好まぬ縛りを強要された此方も縄を憎む名家の女性と出逢います。弟分に「名士も政治家も睨まれたら従わざるを得ない権力者の女房なのだから絶対に手を出すな!」と忠告を受けながらも運命の悪戯なのか、縛りの名声を聞き付けた親分から名指しの上「俺の女房を縛ってくれ!」と懇願されたもののその場では固辞!しかしそこは縄師の感覚と感触が蘇り「あの雪の様な肌を是非共縛ってみたい」と考えてしまうのです。それから数日後、その親分の自宅の小間使いを通じて女房から直接縛る様に懇願されても固辞…ところが、縄師と隠れて逢っていた事に腹を立てた親分は女房を縛りで折檻し、命の危険をも感じた女房は自宅を飛び出し彷徨っている所を縄師に助けられ、漁師小屋で行為に至るのですが、思い出したくもない過去を思い出してしまった縄師は「縛りは此処迄だ!貴女の様な美しい方は死ぬ迄縛ってしまわなければ満足出来なくなるから」と過去を告白します。そして愛の逃避行へ…お互いがお互いの人生を狂わせた縄を憎みながら選んだ道は「人生最高の縛りを体感して心中する事」。遠く離れた寒村の人気の無い山中で、縛られた状態で刺殺された女房と割腹した縄師が雪を血で染め物語は終わります。

 

 

俺が知らぬだけの可能性も在りますがもしそうだとしましたなら何卒ご容赦を…お互いに憎んでいた道具と行為を選び、しかも最高の快楽を得て心中に至る結末は観た事の無い新鮮さ!しかも「一つの道具と一つの行為を介在させながら、一匹狼の侠客VS権力亡者の暴力団の親分の構図」も成立させており、任侠映画の雰囲気も或る程度ではありますが感じられるのも良し!事細かな説明や描写が無くても「縄師の過去・ヤクザの親分の性格と思考・女房の心情と愛情」がきちんと伝わって来るのは当作品に限らず、昭和期の娯楽第一主義の作品群に見られた美点の一つで、これは「これでもか!」と感情移入と感動を押し付けようとする輩が多い現代の制作関係者に見習って欲しい姿勢ですし「優しい言葉や順風万端な毎日ばかりが生きる奏ではない!怨念や憎しみ、自らを厳しく律する事が生きる奏となる場合も多々在る事実」(但し当作品の縄師と女房の様に、事切れると一挙に死に走る場合も多々ですので要注意だろうなぁ…一般的に言われている「一定以上の金欲と物欲を持っている限り人間は自決を選ぶ事は先ず無い」を併用すべきでしょうね)と教えてもくれます。新東宝映画作品もまだまだ埋もれたままの佳作が隠されていそうで、ボンクラ映画ファンにはたまらぬ魅力です。