范文雀・森次浩司の大馬鹿芝居の相性が抜群!松竹「可愛い悪女・殺しの前にくちづけを」井上梅次監督 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、おはようございます。

 

 

2時に現職場での最終勤務を終え、明日8時の新たな勤務先での始業時迄の休みです。まさか勤務交代時間に皆を集めて挨拶の場を設けてくれるとは思ってもいませんでした。お陰様でこれ迄の仲間一人一人に最後の声掛けがきちんと出来、その計らいには心から感謝です。

 

 

 

本日紹介をする作品は数年前にchNECOで放映される迄存在すら知らなかった作品ですが「事件への関与を疑われた人間が、警察官(又は探偵)と接近・衝突を繰り返しながら真相に迫り解決をする物語」を、適度な色気と大馬鹿を交えて描いている「現代の二時間サスペンスドラマの雛型(先駆者)」とも言える作品と感じました。

 

 

 

「可愛い悪女・殺しの前にくちづけを」(松竹制作版「可愛い悪女」シリーズ第二弾)昭和47年2月23日公開・井上梅次脚本/監督兼務・松竹制作。

 

 

未VHS/DVD化作品で、有料動画配信も行われていません。

 

 

 

 

 

 

※KINENOTEの作品案内は此方から

 

 

 

人気歌手・范文雀が或る酒場の舞台で歌唱をしていると、親友で製薬会社の社長・士紀洋児の令嬢である槙摩耶が無言で楽屋に入って行った為、舞台の終演後に不審に思い楽屋を覗くと「士紀さんに、交際相手である医師の加島潤との婚姻を大反対された上に、経営コンサルタントで悪名高い女たらしの巽千太郎との婚姻話を一方的に進められていた事」を苦に首吊り自殺を図っていました。

 

 

幸い行為に及んだ直後の発見であった為、救急搬送の必要も無い程度でこの場は収まりましたが、親友の悩みを他人事とは思えない「世話焼き」の文雀さんは、趣味かつ本職並みの腕を持つ「写真撮影」を武器に巽さんに「お色気攻勢」で近付き「女給の赤座美代子と交際をしながらも、槙さんとの婚姻の話も進め、更には文雀さんとも「一夜限りの妻」として行為に及ぶ女たらし!」の証拠を、自ら身体を張って手に入れ意気揚々としていたら…翌朝、槙さんから「巽さんが殺害された!あたしは殺し迄は頼んでいないわよ!」との連絡が!

 

 

数々の目撃証言から、所轄署の刑事である森次浩司(現・森次晃嗣)に目を付けられた上に有力容疑者として逮捕され、更には文雀さんの取り巻きの楽隊や私立探偵の入川保則の協力で手錠を嵌めたまま逃走したり…しかも「逃走中であろうが、疑惑から解放されようがじっとしてはいられない性分の文雀さん」ですから、行く先々で騒動の連続!

 

 

加えて「刑事らしくない上にドジばかりを踏む森次さん・威張るだけで能力ゼロの捜査主任の藤村有弘・文雀さんの大ファンで重要容疑者であるにも拘らず鼻の下が伸びる署長のフランキー堺」ですから、文雀さんと共に私立探偵の入川さんにどれもこれも先を越される有様…しかし「巽さんの部屋を離れた正確な時間と、その際巽さんの部屋に在った振り子時計の指していた時間の差の真相に辿り着いた文雀さん」と「馬鹿は馬鹿なりに身体を使った単純な行動を取っていた森次さん」が最後には手を携え、ドジを踏みながらも「刑事として無能と言われ続けていた森次さんの大活躍を裏付ける過去の栄光の自慢話」を面白可笑しく交えながら解決となり「決して容姿はいいとは言えないが、森次さんの人柄の良さに惚れた文雀さんと両想いで結ばれる結末」を迎えます。

 

 

 

 

 

 

新東宝出身の石井輝男監督が生前、或る書籍内で「いやぁ、梅ちゃんには負けますよ!」と言い放った事が有りますが「シリアス描写・推理展開等々は二の次!兎に角「文雀さんの色気・愛嬌・七変化」「森次さん・藤村さん・堺さんに、巡回中の警官である財津一郎を加えた「警察官四人組」の無能な大馬鹿ぶり」を中心に、場面場面を大いにお客様に楽しんで貰おう!」と意識していたと思わせる「井上監督のサービス精神と娯楽映像作品志向が存分に生かされた佳作」!

 

 

しかも「モロボシダン」の印象が未だに色濃いものの、バラエティー番組でも披露をした事が有る「オカマ」が「宴会芸の十八番」であるらしい森次さんが「惚け・顰め面・単純さと粗暴さ・生理現象・過去の栄光の自慢」等々「喜劇に求められる要素を、全身全霊の大馬鹿で演じ切る快挙を見せている」のが「文雀さんの愛嬌」以上に見所ですし(善悪を問わず現在も名演を提供し続けながら、大馬鹿をきちんと理解をされ芝居に存分に反映させている姿勢には心から感謝です)これに呼応する文雀さんとの相性が相当にいい!

 

 

対して「森次さん等々に呼応した大馬鹿芝居」に加え「歌手としての華麗な姿」「全裸にならなくても十二分な色気を漂わせる妖艶さ」「身体は触らせても「セックスは嫌いなの!」と、男を惑わせる題目通りの「可愛い悪女」ぶり」「男装が醸し出す、我々世代にはたまらない色気」「笑顔よりも光る、悲鳴を上げながら見せる困惑の表情の可愛らしさ」等々「文雀さんの魅力」もこの一作品に過積載と思える程詰まっています。

 

 

文雀さん・森次さんはシリーズ第一弾「可愛い悪女」(昭和46年11月13日公開・井上梅次脚本/監督兼任・松竹制作。未VHS/DVD化作品で有料動画配信も行われていません)に続く共演となっている上に、前作品と当作品の公開は大凡三カ月しか空いていませんので、手元に当シリーズに関する資料が無いものの「観客から或る程度の好評を得られていたのではないか?」と、私感ではありますが推測をします。

 

 

 

 

 

 

※「可愛い悪女」KINENOTEの作品案内は此方から

 

 

 

そして先述をした「事件への関与を疑われた人間が、警察官(又は探偵)と接近・衝突を繰り返しながら真相に辿り着き解決をする物語(中略)=現代の二時間サスペンスドラマの雛型(先駆者)とも言える作品と感じた」について…この頃既に「同様の物語構築」は存在していたでしょうが、作品数自体は極僅かであったと思われますし、この類の作品が二時間ドラマの主流の一つとなり始めたのは平成以降(只、俺としては「この類の作品」が増え過ぎ、食傷気味になりました。面白く好きなシリーズ作品も有りますが)…その点で「目を見張る物」が有りますし、井上監督の先見性にも感心させられます。

 

 

 

考えてみると、文雀さんは東映制作「プレイガール」東宝制作「サインはV」「アテンションプリーズ」等々、森次さんは円谷プロダクション制作「ウルトラセブン」等々の「テレビドラマへの出演」で知名度を高めると同時に人気を得、共に劇場公開作品群での活躍がテレビドラマと並行する形で本格化…「テレビ放映の急成長期」であったとは云え、この頃はまだまだ「テレビドラマより劇場公開作品群の方が格が上」との認識が映像制作業界・観客/視聴者双方に強く存在していたでしょうから「似た様な役者としての軌跡を歩んで来た文雀さん・森次さん共に真摯な姿勢で臨んだシリーズ作品であった」と思われますし、加えて「劇場公開作品への主演の機会を掴んだお二方の持ち味を存分に生かす脚本・演出等々をしっかりと整える事こそが餞かつ更なる前進となると、一切の手を抜かずに臨んだ井上監督の姿勢」により「心地良い上に、内容を一切忘れてしまったとしても「あの作品は滅法面白かった!」と周囲に自信を持って薦められる、娯楽の王道そのものの一級作品が完成した」と感じます(但し、KINENOTEを始めとする「映画情報サイト」内の「作品レビュー」や平均評価点はかなり低め…ですが俺はそれ等は一切気にしませんし「破綻気味の内容や粗等々をも面白可笑しく楽しめる鑑賞の仕方」が大好きです)。

 

 

そして当作品は「松竹版・プレイガール」なのかも、と…

 

 

 

最後に「筋書きがきちんとした、脱線や飛躍の一切無い事件ものを好む方々」は過去も現在も居られますが、従来以上に「生真面目かつ、全面的に現実と同等の物語の構築を好まれる方々」は増え続けている一方の様に感じています。

 

 

勿論「その類の作品群」にも良さが有りますし、俺も好きな作品は多数有りますが「観客目線の娯楽」を知らなければ「脱線の一切無い生真面目な作品に携わり、観る側の心を動かす事は絶対に不可能」かつ「常に見続けていなければ、制作側の意図等々を或る程度把握する事は絶対に不可能」と確信をしています。

 

 

その点からも、制作側・俺を含めた観客側/視聴者側双方共に「娯楽作品を見続け、目を鍛え続け、本質を見極める力量を保持していかなければいい作品には携われない、出逢う事は出来ない」と云う意識を持つ事が必須と考えます。