老舗テキヤ一家、乗っ取りの危機!東映京都「関東テキヤ一家・浅草の代紋」菅原文太/安藤昇/松方弘樹 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、おはようございます。

 

 

今晩19時半の勤務開始に備えて夜更かし中ですが、冷えます!

 

 

間もなくご逝去から五年を迎える菅原文太の代名詞の一つである「トラック野郎シリーズ」の星桃次郎の様に腹巻を使わないと腹が下りそうな…

 

 

 

考えてみると文太さんは、東映の関係者・制作陣・出演陣が松竹制作「男はつらいよシリーズ」の対抗馬と認めていた東映東京制作「トラック野郎シリーズ」(全十作品)に主演されただけではなく、的屋の世界を「寅さん」とは違った角度(神農道及び「的屋三戒=的屋の憲法→ネタ食うな(売り上げを懐に入れるな・売り物を横流しするな)・タレ込むな(騒動の際に警察を介入させるな)・馬下取るな(一家衆・同業者の女房や交際相手を寝取ったり奪ったりするな)」を貫き通す姿等々、的屋の側からの描写を徹底させています)から描いた東映京都制作「関東テキヤ一家シリーズ」(全五作品)にも主演。

 

 

「関東テキヤ一家=寅さんの対抗馬」と云う発言は見聞きした事は無いものの、寅さんの初作品公開翌年の制作ですので「寅さんを或る程度意識をしていた=やくざ臭を極力排除した松竹に対し、仁侠映画の雄である東映らしい作風に持って行こう!」という意気込みは在ったでしょう。しかも「関東テキヤ一家・トラック野郎の両シリーズ共に鈴木則文監督・菅原文太主演で松竹と山田洋次監督に対抗した事実」も面白い!

 

 

因みに「トラック野郎シリーズ」終結後、文太さんは「山田監督が制作に大きく関わった」テレビドラマ版「幸福の黄色いハンカチ」(JNN系列で放映)に主演されていますが、これは「寅さんのライバル作品に主演し奮闘した文太さんを山田監督が認めた証拠」なのか(加えて、ソクブン監督は「男はつらいよシリーズ」を「好きな作品の一つ」として挙げられらた事が有ると「映画秘宝」の「ソクブン監督追悼号」に掲載されていました)。

 

 

 

そして本日紹介をする作品は、先の四作品迄監督を務められたソクブン監督が諸事情により演出を降りた…

 

 

 

「関東テキヤ一家・浅草(えんこ)の代紋」(「関東テキヤ一家シリーズ」第五弾で最終作品)昭和46年12月17日公開・鳥居元宏脚本・原田隆司監督・東映京都制作。

 

 

VHS/DVD化作品ですが有料動画配信は行われていません。

 

 

 

 

 

 

※KINENOTEの作品案内は此方から

 

 

 

「何故、諸事情で「浅草の代紋」の演出がソクブン監督から原田監督になったのか?」これは「東映京都撮影所ゲリラ部隊」の「別動隊監督」でもあったソクブン監督が、当作品の併映作品「現代ポルノ伝・先天性淫婦」の監督を務めた為以外には考えられません。

 

 

掛札昌裕/鈴木則文の共同脚本・鈴木則文監督・池玲子主演・東映京都制作。

 

 

DVD化作品ですが有料動画配信は行われていません。

 

 

 

 

 

 

※KINENOTEの作品案内は此方から

 


 

「特撮ヒーローの代表格となる前の宮内洋の、硬質な性格だが好色家でもある一面を見せる芝居」は特撮作品ファンの大きな興味を引く事は間違いが無いでしょうし「助演のフランス人ポルノ女優のサンドラ・ジュリアンを抱く為だけにノンクレジットで出演した「名和センセイ」こと名和宏」(サンドラ嬢の京都での案内役等々も名和センセイが務められたそうです)「浅草の代紋/先天性淫婦双方に重要な役で配され、しかも双方共極悪ぶりを存分に発揮した「ナベさん」こと渡辺文雄」このお三方の存在感は「女優陣の印象」を掠めさせてしまう程ですが、傑作!

 

 

 

喧嘩相手に怪我を負わせた事が原因で「東京所払い五年」を言い渡されていた「浅草の老舗的屋一家の若衆」で通称「喧嘩屋」の文太さんが浅草に戻ると、先代親分の逝去により実子の高橋昌也が家業を継いでおり、文太さんが慕っていた兄貴分の安藤昇は「的屋三戒」の「ネタ食うな」を犯して破門され浅草で喫茶店の主に収まり、肝心の一家も沼田曜一が率いる新興暴力団に押され青息吐息寸前。

 

 

更に「相思相愛」であった小料理屋の女将・武原英子(前・錦野旦夫人)は「文太さんと交際をしていたと云う事情を全く知らなかった高橋さんの権妻」となっていた上に身籠っており(この場合は「的屋三戒」の「馬下食うな」には当たりません)文太さんは酒を煽る様に飲んで安藤組長に咎められる程迄荒れた晩も…しかし武原さんから「高橋さんとの関係に至った事情」を聞き、その後は「姐さん」として二人を支えるのです。

 

 

そんな中で開催が数日後に迫った「酉の市」(お酉様)を前にして、高橋さんが注文をしていた熊手を製造していた工場が何者かに放火され全滅の憂き目に…しかも、関東周辺の製造業者から新たに手に入れようとしても沼田さんの息がかかっていた為に叶わず万事休すかと思われたその時、京都の製造業者へ向かった文太さんと「新参の女的屋」池田幸路の前に現れたのは「新たな熊手を確保した」安藤組長!

 

 

安藤組長の機転により危機を脱したものの、今度は池田さんの実兄で、冒頭の「地方の庭場での喧嘩」で文太さんと一戦を交えた松方弘樹が「沼田さんの組織の客分」として妨害を仕掛けて来ます。

 

 

実はこの一連の騒動…文太さんが属する一家の先代親分の義兄弟で、高橋さんの後見人である渡辺文雄が「酉の市」を始めとする浅草界隈の的屋の利権を奪取する為に沼田さんに命じて行わせていたものであり、遂には止めを刺す為に「過去にネタを食ったのは親分の実子分であった高橋さんで、安藤組長は自ら身代わりを申し出たと云う事実」を関東地域の神農連合会の会合で追及する手発を整え始めます。

 

 

安藤組長はナベさん達の要請を断った為に実子を拉致され、その救出の際に刺殺されてしまいましたが、これを契機に文太さん達は「高橋さんがネタを食い、安藤組長が身代わりを申し出た事実を棚に上げてでも、非道の限りを尽くすナベさん達を叩き潰して一家を守る事が先!」と、ナベさん/沼田さんの腹黒さに愛想を尽かした松方さんを味方に付けて連合会の会合に乗り込んだのですが…

 

 

 

(上の写真はシリーズ第二弾「関東テキヤ一家・喧嘩仁義(ごろめんつう)」の文太さんです)

 

 

 

このシリーズ「ソクブン監督が演出を務めた東映京都制作・北島三郎主演「兄弟仁義・逆縁の盃」で文太さんの喜劇センスを見出した事が切欠で生まれた側面を持っている」と思っていますし「内田吐夢・加藤泰両監督の助監督として付いた経験が存分に生かされた、ソクブン監督の更なる再評価に繋げる意味に於いてもっと注目をされてもいいシリーズ作品」でもありますが、先述の通り当作品はソクブン監督ではなく原田監督の演出。

 

 

「喜劇担当」は「文太さんの弟分役」である南利明・広瀬義宜と池田さんが前半戦で見せるのみでそれ以降は「仁侠映画の硬質さや敵同士がぶつかり合う迫力と凄味、中身の濃さで見せる実兄弟愛/義兄弟愛/夫婦愛に注力をした傾向」が見えてきます。

 

 

原田監督が意識をしたのは「ソクブン監督とは別な演出で名を上げよう」ではなく「併映作品がソクブン監督だから、その領域を犯さぬ事を信念の筆頭に持って来ながらも独自性を効かせた演出をしようと注力をしたのでは」と…その結果が「シリーズ一の硬質さと的屋らしさを醸し出した作品となった」と感じます。

 

 

そして「ソクブン監督作品と原田監督作品に於ける、文太さんの性格設定の大きな違い」は、それ迄は「喧嘩屋」の異名を持ちながらも自らを戒めて最後に破裂させる形態が(但し「軽く手を出す事」はよく在りました)当作品では「我慢しよう・溜め込もうと意識し、かつ言葉として発してはいても、失恋や一家の惨状に影響された為なのか、我慢が中々持続をせず本格的に手が出たり咎められる場面が多い事」その歯止め役は安藤組長の他、池田さんであったり高橋さんであったり…逆に、安藤組長の亡骸の前では逆に文太さんが若衆を止める姿も在り「現状に惑わされ、判断に迷う文太さんの揺れ動く心情を解り易く演出をしている点」も見逃せません。

 

 

「原田監督・文太さんの顔合わせ」は当作品と「極悪坊主シリーズ」三作品にこのスピンオフ作品である「人斬り観音唄」そして「極道兇状旅」の六作品…全ての作品に於いて「硬質・孤高のアウトローだが絶対に筋道を外さない弱き者達の味方」でしたから、文太さんの味付けが先の「関東テキヤ一家シリーズ」四作品とは違う形になっている事、全く持って納得です。

 

 

「威張りっ放しかつ、掌を簡単に返す極悪非道なナベさんの安定感・安心感」「後ろ盾が強固であるからこそ生き生きと悪事に手を染める沼田さんの小悪党ぶり」は…東映作品を観慣れている方々であれば何も書かなくても想像・理解等々をして頂けるものと思います。

 

 

 

(上の写真はシリーズ第三弾「関東テキヤ一家・天王寺の決斗」の文太さんです)

 

 

 

最後に、今月の東映ch「違いのわかる傑作サスペンス劇場」の枠内の一作品であると共に、俺は「文太さんが主演を務められたテレビドラマ作品では最高傑作ではないか?」と思っているたそがれに標的を撃て」(昭和57年1月5日、NNN系列「火曜サスペンス劇場」にて放映(単発ドラマ)・山田信夫脚本・鷹森立一監督・藤映像コーポレーション/俊藤浩滋制作協力・東映制作未ソフト化作品。平成30年7月にも東映chで放映されています)が、11/28(木)11:00~13:00に放映されます。

 

 

 

 

 

 

※東映chの作品案内・放映日時案内は此方から

 

 

 

このテレビドラマの内容を一言で纏めるならば「警視庁の特殊銃隊(現在は改編・増強され各都道府県警察本部の「銃器対策部隊」となっています)警部補・菅原文太の試練」でしょう。

 

 

当作品は文句無しの大傑作!もし視聴可能な環境に在りましたなら、是非ともご覧頂きたい「社会派ドラマの最高傑作の一つ」です。