出逢いは軌跡と殺人への疑惑の起点!日活ロマンポルノ「魔性の香り」天地真理/ジョニー大倉/青木義朗 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、おはようございます。

 

 

本日20時の始業に備え、二週間に一度の「日曜日の夜更かし中」ですが、この時期の秋田市内は昼間は非常に過ごしやすいものの、夜になると窓を閉めないと肌寒く感じる事が殆どです。

 

 

 

さて、昭和50年代後半から平成初期にかけて、それ迄「高嶺の花」「贅沢品の一つ」と見られていた家庭用ビデオデッキが急速に普及し始めましたが(因みに、俺の郷里の盛岡の実家でビデオデッキを購入したのは、先述の時期に当たる昭和60年の年末でした)その大きな理由の一つは「個人観賞用の成人向けビデオ作品の市場拡大(販売・貸出共に急速な伸びだったそうです)」とも言われています。

 

 

その影響を非常に大きく受けてしまったのは「ポルノ映画・ピンク映画を公開している映画館と、その類の作品を制作している映画会社」何せ「個人観賞向け作品」ですから、局部の暈しさえしっかりとしていれば、従来のポルノ映画・ピンク映画を遥かに凌駕する「過激な性描写」を加える事が容易。

 

 

勿論「性描写に特化している作品群」ですから「物語の構築」「役者経験・芝居の優劣」等々は皆無…それでも世の中の殿方の大きな支持を受け「ポルノ映画・ピンク映画の市場を大幅に縮小させてしまう状態」となってしまいました。

 

 

しかし、日活を例に取ると「劇中、本番行為を行った作品群」「個人用ビデオに出演していた女優陣の主演への起用」等々を行った上に「きちんと構築された物語の展開」が功を奏し、現在では「佳作」と言われる作品も多々存在…逆に「個人観賞用の作品群」では「女優陣は比較的多くの方々が名を残しても、主戦場を一般作品群へ移行された方々は非常に少ない上に芽が出ず引退された方が圧倒的に多い」「内容の優劣で名を残した作品は皆無に等しく、仮に名作と言われていても現在では鑑賞が非常に困難である事が殆ど」ですから(当初から「水物」として制作をしていた事は明らかでしょうが…)「現在でも鑑賞な可能な日活ロマンポルノ作品が非常に多い(過去にVHS化に至らなかった作品に於いても、新規でDVD化/ブルーレイ化・有料動画配信化等々が行われている作品が多数存在しています)」「ビデオの女優陣と比較をすると、日活ロマンポルノの女優陣で主戦場を一般作品群に移行された方々の殆どは或る程度の実績を残し、本日時点で現役の女優として活躍をされている方々が多い事実」と併せて「当時の「ジリ貧」を取り戻す、真っ当な再評価を得た事で完全に立場は逆転をした」と言ってもいいでしょう。

 

 

 

本日は、その様な中で制作・公開された「一般作品群の役者陣が多く出演をしている日活ロマンポルノ作品」を紹介しますが「約90分の尺の中で、交尾の場面は二場面のみ」と「日活ロマンポルノの成立条件」からは外れるものの、それを補って余りある面白さが詰まっていますし「情交場面が少なくても十二分の妖艶さを見せ、更に謎に包まれた女性の姿を熱演された主演・天地真理」が光っています!

 

 

 

「魔性の香り」昭和60年12月27日公開・結城昌治原作・石井隆脚本・池田敏春監督・ディレクターズカンパニー制作(長谷川和彦が代表となり、当作品の池田監督や井筒和幸監督等々と設立した映像制作会社。平成4年倒産廃業)・日活配給(日活ロマンポルノ)。

 

 

VHS/ブルーレイ化作品で、スカパー!オンデマンド/U-NEXT/GYAO!ストア内に於いて有料動画配信が行われています。

 

 

 

 

 

 

※KINENOTEの作品案内は此方から

 

 

 

魁三太郎等々と共に零細出版社を経営しているジョニー大倉が、徹夜仕事を終えた或る朝、橋上から川に飛び込み自殺を図った天地真理を助けた場面から物語は始まります。

 

 

天地さんは「夫の嫉妬深さと日常的な暴力に耐えられず大阪から出て来たものの、東京迄も追って来るのではないか?」との恐怖心から自殺を図ったと告白をした為、大倉さんは天地さんの身を案じ、自宅に匿う様になってから三か月…二人の間には「些細な意見の対立」は存在していたものの、関係は比較的良好であった為、天地さんは夫で医療施設のレントゲン技師である高橋長英と「離婚に向けた話し合い」を行う迄に至ります。

 

 

その事と前後をする様に、大倉さんの行き付けの喫茶店の常連客であった斉藤洋介が自宅で惨殺される事件が発生し、大倉さんは斉藤さんが「愛人」と称していた女性の「下の名前」が天地さんと表記・呼称が全く同一であった為に天地さんに疑いを抱き、義兄で新聞社勤務の青木義朗(特別出演)から「情報の提供を受ける」と云う協力を得ながら、自ら高橋さんと、高橋さんと実質婚姻状態に在った風祭ゆきを訪ね「事件の真相」に迫る事となるのですが、徐々に天地さんに不利な状況に陥り…

 

 

 

 

 

 

当作品は全般的に非常にゆったりと、静かに物語が進行して行き、前半は「お互いの過去の不遇を、優しさで享受し合う描写」となっているものの、中盤以降は「お互いを信じ合いながらも亀裂がゆっくりと広がって行き、終盤で一挙に切り裂かれたかの様に見せるものの、最後の最後で驚愕の事実と衝撃の結末が待っている!」と云う「奥の深いサスペンスの要素が存分に生きている佳作」!

 

 

「日活ロマンポルノの成立条件からは外れるものの、それを補って余りある面白さが詰まっている」と先述をした理由はこれですし「日本のサスペンス作品の中でも特に面白い作品」と言ってもいいかと私感ではありますが思います。

 

 

加えて「氏名・居住地・軌跡等々、言っている事の全てが果たして本当なのか?と存分に思わせ、後の展開を期待させる芝居を全身全霊で演じた天地さんの代表作」と言ってもいいでしょう。

 

 

終盤、生い立ちをあからさまに語った天地さんが最後に放った一言は「窓硝子越しかつ無音声」となっており「その一言」を考えさせる時間を観客に数分間与えた上で再び同じ場面を「音声入り」で挿入した流れは、大倉さんにとって痛恨かつ、取り返しのつかない大失態を犯した後悔を、より強く見せる手法として絶大な効果を発揮しており「巧いなぁ」と感心させられました。

 

 

大倉さんの行動に協力をしていた青木さんは「様々な理由を付けて酒を飲みたがる、人のいい退職が近い新聞社の社員」と云う趣ですが「実行犯の逮捕と事件の経緯・真相を伝える場面」では「留守番電話に録音がされていた設定の為、音声のみの芝居」とはなっているものの「音声の芝居のみでも、大倉さんを安堵させながら実行犯の心情にも配慮をしている様に感じられる、人間らしい温かみを存分に発揮した名演」と言えるものであり「さすが芝居巧者」と頷かせられました。

 

 

余談ですが「日活ロマンポルノの常連女優」であった風祭さんの「当作品における全裸場面」は「情交が介在していない一場面」のみ…この事からも「日活ロマンポルノ作品の側面から見た場合」は異色作品としての位置付けとなります。

 

 

「出演者への配慮」「年末年始興行の一作」等々の側面が「異色の作品ではあっても容認された理由」なのだと憶測ではありますが思います。

 

 

 

 

 

 

他の出演者は、テレビ局員として飯島大介・タクシーの運転手として鶴田忍・大倉さんが常連客となっている酒場のママとして鰐淵晴子(友情出演)等々です。