ギャング・暴力団・侠客三つ巴の戦い!東映東京「暗黒街最大の決斗」鶴田浩二/高倉健・井上梅次監督 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、こんにちは。

 

 

休み二日目、深夜帯/早朝帯の肌寒さが染入る季節になって来ました。日中との寒暖差が身体に堪えます。

 

 

 

さて、昨日の更新記事で紹介した「江戸川乱歩の美女シリーズ」を開始時から十九作品連続で演出し、番組の基本骨格と基本構成を第一弾の時点で作り上げた井上梅次監督。

 

 

「邦画六社全てで監督作品が存在する数少ない存在」ですが、俺は「名画・大作には目を向けず、庶民の楽しみとしての娯楽志向に徹し、プログラムピクチャー全盛期の伝統を次世代に継承する役割を果たした一人」として、大いに評価しなければならない方だと思っています。

 

 

テレビドラマ作品の世界にも積極的に関わり、其方に於いても多くの優れた作品を残した事は、先述の「姿勢」考えると井上監督の軌跡は「観客目線を視聴者目線に置き換えて、自身の基本姿勢を固辞したまま、大きく変化してしまった現場環境と目まぐるしく変わり続ける様になった世間一般の嗜好に合わせる柔軟性に長けていた」とも言えます。

 

 

 

そして東映では「ギャング映画」の演出を手掛けられ「不良番長」(シリーズ初作)に於いても監督候補に名前が挙がっています(しかし「不良番長」は「演出料が高額」という理由で、当時東映社員であった野田幸男監督が演出を手掛けられました)。

 

 

その「ギャング映画」の一本が此方です。

 

 

 

「暗黒街最大の決斗」昭和38年7月13日公開・井上梅次脚本/監督兼任・東映東京制作。

 

 

VHS/DVD化作品ですが、有料動画配信は行われていません。

 

 

 

 

 

 

※KINENOTEの作品案内は此方から

 

 

 

植村謙二郎が率いる博徒一家の養子として育てられたものの「侠客道の義理人情」等々に嫌気が差して日本を飛び出した鶴田浩二が「米国の闇組織に身を投じる敏腕胴師(トランプゲームの第一人者)」として凱旋帰国し、東京に設けられた「地下賭博場」で旧知の親友である大木実と手を組んで勢力拡大を図るものの、植村さんの死後に組織を引き継いだ「もう一人の養子」である高倉健と「植村さんの実子」である梅宮辰夫と、そして「植村さんの一家内」でありながらも「現実主義の近代的な組織運営」により資金力では抜きん出ていた暴力団組長の安部徹との「三つ巴の駆け引き・激突」に巻き込まれる物語(ここに「警察組織」も加わりますので実質「四組織の激突」となります)。

 

 

その中で描かれる「鶴田のおやっさん・大木若頭の揺れ動く心情の変化」「養子の健さん・実子の辰ちゃんの、組織に対する愛情・忠誠度及び亡き植村さんに対する子供心の温度差」が「物語の行く末を大きく左右する見所」となっています。

 

 

 

井上監督は演出手腕は勿論の事、脚本執筆の面に於いても非凡な腕前を数多く見せており「江戸川乱歩の美女シリーズ」に於いても「井上監督の脚本/監督兼任作品」は特に面白かったです。

 

 

邦画各社で各社で手腕を振るい、数え切れないだけの制作陣・役者陣との関りを持ち、それ等で習得した物事を「自らのサービス精神」として「大衆娯楽作品の手法を最後迄固辞し続けた姿勢」はもっと評価されるべきですし、現代だからこそ見習うべき「観客・視聴者目線最優先」の素晴らしい姿勢!

 

 

 

そして「この手腕」は、当作品の様な「ギャングアクションと伝統を重んじる侠客道の融合とも言える作品」にも存分に生かされている上に「要点のみを矢継ぎ早に、三者三様の方向性に警察の動きを加えた四つの視点から描く為、スピード感を失わずに水準以上の心理描写・人間描写を観せる事に成功している点」も見逃せません。

 

 

これにより「鶴田のおやっさん・大木若頭の心情の変化が鮮明に描き出され、その対極として「心情変化が小さい」健さん・辰ちゃんの「純真さ」安部さんの「強欲ぶり」をより強調する相乗効果」を生み出しています。

 

 

更に「幾つかの束を、絶妙とも言える方法で調整し、終盤近く迄「敵・味方の構図に於ける結論」を延ばし続け、観客側の期待感に存分に応える脚本・手法」も見事!

 

 

「最初から或る程度物語の結末を読む事が出来る上に、毎度変わり映えのしない構築された物語内容に起因する安心感」も「娯楽映像作品の醍醐味」ですが「終盤や結末直前迄犯人や敵味方等々の判断が不可能な物語の構築」もまた「娯楽映像作品の醍醐味」!

 

 

その「双方の手法」を、ほぼ完璧な形で構築・演出出来た井上監督は「娯楽志向最優先主義を貫いた大衆映像作品の大御所」と言ってもいいかと思います。

 

 

 

警察側と敵側組織からの圧力が増して来たと感じ、一旦東京を離れて東海道各地を渡り歩きながら「船上カジノ」で一儲けした上に、勢力拡大の為に「傘下組織」をも募って首都決戦に臨む一連の場面は「この後の東映作品にも大きな影響を与えたであろう」と感じた位です。

 

 

そして「結末」は、この当時の「現代が舞台となった作品」では「単純明快ながらも間違いなく記憶に焼き付いた方々が多かったであろう場面描写だった」と推測します。

 

 

 

 

 

 

他の出演者は、春日俊二・薄田研二・沢彰謙・小林重四郎・神田隆・志摩栄・三島一夫(この後、東映東京テレビプロダクション制作のテレビドラマ作品に於いて「擬斗師」として幅広く活躍された方です)・安藤三男・室田日出男・潮健児・曽根晴美・日尾孝司(この後、俳優と兼任の形で「東映東京撮影所・拳友会」に所属し「擬斗師」としても、主に劇場公開作品に於いて活躍された方です)・八名信夫・関山耕司・久地明・岩城力也・南廣・河合絃司・佐久間良子・久保菜穂子…

 

 

そして「特別機動捜査隊」で「主任刑事の右腕」を長年演じられた伊沢一郎が「一連の捜査を指揮する警部役」として活躍を見せています。