或る親子と夫婦の不倫関係に隠された真実とその結末は?東映東京「牝」緑魔子/中村伸郎。渡辺祐介監督 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、こんにちは。

 

 

休み最終日、昨夜は遅く就寝した為起床は10時でした…一日降雨の模様ですが、融雪が進むので大歓迎です。

 

 

 

飲酒しながら(因みに今も記事を打ち込みながら飲酒しています!)就寝前に鑑賞したのはこの作品です。

 

 

 

「牝」昭和39年11月21日公開。馬場当脚本(「乾いた花」「あしたのジョー(昭和45年製作の石橋正次/辰巳柳太郎共演版)」「復讐するは我にあり」「卍(昭和58年製作の樋口可南子主演版)」等々の脚本も手掛けられています)渡辺祐介監督・東映東京製作。

 

 

未DVD/VHS化作品で有料動画配信も行われていませんが、本日以降東映ch「ミッドナイトシアター」枠内に於いて2/27(月)25:30~27:30に放映されます。(全放送局に於いて初放映です)

 

 

 

 

 

 

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併映作品は、芸子役の佐久間良子が男から一方的な恨みを抱かれてしまい、最後は辰ちゃんと同様刺傷する(但し物語の流れと雰囲気は辰ちゃんの主演作品に比べたらかなり穏やかです)「肉体の盛装」(新藤兼人脚本・村山新治監督・東映東京製作。DVD化作品)

 

 

 

 

 

 

 

 

この二作品を見比べると…双方共に面白い作品ではありますし監督としての力量も村山監督・祐介監督共にほぼ同等と見ていいでしょう。

 

 

しかし「脚本業・監督業双方に於いて既に名声を得ていた新藤監督に村山監督・佐久間さん共に少々委縮してしまった感」が有る「肉体の盛装」に対し「実績は新藤監督にも引けを取らないものの、大衆娯楽一辺倒で名は余り知られていなかった馬場先生と当時売り出し中の魔子さん…これが祐介監督にとっては物語・演出・芝居等々全てに於いて羽根を広げて伸び伸びと出来た事が作品に大きな深みを与えた感」が有る「牝」。

 

 

私感ですが、軍配は「牝」です。

 

 

 

「法律事務所を開く弁護士(中村伸郎)とその娘(緑魔子)」と「伸郎先生の事務所で働いていた大学教授(俳優引退後、宇野宗佑元首相の秘書を務めていた菅佐原英一)とその女房(クボナオの姐御)」のドロドロした不倫関係と交尾の関係が主題!

 

 

「魔子さんと菅佐原秘書」「伸郎先生とクボナオの姐御」の関係ですが、初めは四人が四人共「不倫の匂い」を感じながらも「まさか互いの家庭同士で同時に不倫関係に陥っている」とは気付かず、クボナオの姐御に至っては「旦那の不倫」を切欠にして伸郎先生との再婚を望む迄になります。

 

 

しかし中盤で、魔子さんは「伸郎先生と他界した母親」の間に宿った子供ではなく、東京大空襲の日に自宅に不在だった伸郎先生に代わり、母親の手を引いて助けた菅佐原秘書が勢いで交尾した際に出来た子供である事が判明!

 

 

親子丼なんて生易しい物ではない!父親が実娘と交尾を続けていたのです!(事実、当作品の数年後に「父親が離婚後親権を得た娘に一方的に交尾を強要した上、妊娠・堕胎を繰り返し行わせた」結果、将来を悲観した娘に惨殺された「栃木実父殺害事件」が起きました。事件の経緯が経緯だっただけに担当弁護士が無償で弁護を務めただけではなく違憲立法調査権を発動させ「尊属殺人重罰規定の憲法違反」を最高裁判所で勝ち取り、結果執行猶予付きの有罪判決が確定しています)

 

 

更に「交尾友達」(カローラのジェリー藤尾)の単車に同乗中に事故に遭い重傷を負った際に妊娠が発覚し「誰の子どもかは解らない」と云う魔子さんに対し(この時点で菅佐原秘書・カローラのジェリー・佐々木功と交尾をしています)伸郎先生は見境も無く「菅佐原秘書が種蒔きをした!」と決め付け、部屋を真っ暗にした上にクボナオの姐御を愛撫しながら菅佐原秘書を追求します!

 

 

この「暗闇の中での愛撫と追及」の場面は、一瞬「放送事故かな?」と思いました。真っ暗な画面で台詞のみが続く為に「原版不良なのか?」とも…

 

 

しかし、菅佐原秘書の煙草の火と窓からの僅かな光のみが部屋を照らす中での緊迫の場面…物語の「静かな凄味と一方的な判断によるぐうの音も受け入れぬ意固地さと見えない卑猥さ」を更に際立たせた名場面!

 

 

 

その時魔子さんは、茅ケ崎の病院を無断で抜け出し、伸郎先生を事務所に呼び「あたしはパパが好きなの、パパと結婚したかった…」と告げ、伸郎先生もそれに同意。

 

 

そして選んだ道は…親子心中!

 

 

毒入りの酒を飲み、先に逝こうとする魔子さんに伸郎先生は接吻し、魔子さんが逝ったのを見届けた直後に伸郎先生も苦しみ始め絶命…心中完遂となりました。

 

 

二人の葬儀は、五輪の聖火が東京に届いた記念すべき日…

 

 

この作品内で強い印象を与えるのは「交尾を終える度に魔子さん・菅佐原秘書の通る坂道に咲く季節外れの向日葵」なのですが、帰路の車内でクボナオの姐御が寄りを戻した菅佐原秘書に、坂道とは別の場所に有る向日葵を見て「あら、あの向日葵…まだ咲いているわ」と…

 

 

そして、枯れ果ててしまった「魔子さんと菅佐原秘書が見続けた向日葵」が映されて終了。

 

 

 

この当時「小悪魔」の愛称で慕われていたのは松竹の加賀まりこか東映の緑魔子。

 

 

しかし、初出演から「ドロドロとした雰囲気と、表面上は明るく見えながらも何処か影を引き摺っている感」を持ち合わせていたのは魔子さん。

 

 

しかも「生みの親と育ての親を同時に攪乱させる魔力」を二十歳の時点で見せ付けていたのだから恐れ入りますし、私感ながら「この当時の小悪魔」は魔子さんに軍配を挙げます。

 

 

今の二十歳の女優では「これと同等の芝居」は絶対に無理です。例え交尾専門の女優であったとしても…「汚れ役や下着姿・水着姿すら嫌悪する連中」ばかりですので…情けないし本職意識の欠片も無いと断言出来ます。(それ等が嫌ならばそれも仕方がないでしょうが…責めて「心から大馬鹿に成り切った大馬鹿芝居」か「悪の限りや腹黒さ・灰汁を絞り出す位の汚れ役」は遣って欲しいものです)

 

 

男は十中八九「好きな女性芸能人が全裸姿を見せたり交尾芝居を見せる事を心から望んでいるし一番喜ぶ生き物」ですので、そこを是非理解して貰いたいものです。(これは「好きな男性芸能人に対する女性陣の気持ち」も同様と考えています)

 

 

 

対して「幾つになっても成熟しない菅佐原秘書に愛想を尽かし成熟し切った伸郎先生に惹かれ、成熟期の大人の色気を「これでもか!」と魅せ付けたクボナオの姐御」も、魔子さんとは相反する芝居で更に作品を奥深いものにしています。

 

 

伸郎先生が「クボナオの姐御の色気に惹かれ…しかし最後は育てた娘を選ぶ」女に狂う芝居は珍しいかと思います。

 

 

他の出演者は…河合の絃さん・日出さん・安城百合子等々です。