スーパーヒーローより凄い男 | Whoops!カズのお気楽れんらく帳

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パッドマン 5億人の女性を救った男

2018年インド 
監督:R.バールキ
出演:アクシャイ・クマール

題名を聞いた時は、肩パッドでも着けたインド版スーパーヒーロー映画かと思った。いや、確かにこれはスーパーヒーロー映画だ。しかもこのラクシュミさん、特殊能力も無ければ悪党と戦う訳でもない。だがやってのけた事はヒーローの比ではない。救ったのは5億人どころじゃないかもしれないのだ。

まあ特殊能力があるとすれば、技術屋としては天才的で、度が過ぎるほど愛妻家ってところか。そして悪ではないが敵はいる。それは、またまた出ましたインドの古い因習と女性への差別で、これが想像以上に手強い。生理を穢れと扱う文化は、日本だってあったろう。でも現代のIT大国インドでまだそんな事が、と驚かされる。

ラクシュミさんの挑戦も、最初は奥さんの身を案じる些細な事だったが、そこに技術屋としての物作り魂に火がついた事から暴走開始。その有り様は純粋な動機は分かっちゃいるが、どう控えめに見ても変態なのが気の毒やら可笑しいやら。

肝心の奥さんから愛想尽かされ、村から追い出されても諦めないラクシュミさんに、何故?と思うかもしれない。だが、作り始めたらもっといい物にしなければ気が済まない、それが技術屋の性ってもんで、同じ技術者としてその気持ちよく分かる。

だが発明以上にこの人が凄いのは、パッドを作る安い機械を女性たちに売り、作った利益が還元されるシステムを作った事だ。安価なパッドが女性の活動を広げ、利益が女性たちの経済的自立も助ける。画期的なアイデアに本当に驚いた。

そして遂に成功したラクシュミさんが国連でスピーチするシーンは、ヒーロー映画の逆転勝利を見るようで痛快だ。俺でも分かるラクシュミ・イングリッシュでのスピーチは、可笑しくて楽しくて、熱く感動的。“お金が儲かっても笑うのは私だけ、でも皆が儲けて皆が笑えば、私はもっと笑う” 企業理念としてこれ以上素晴らしいものがあるだろうか?

目を背けがちな題材を正面から描きながら、社会問題とジェンダーを交え、しっかりミュージカル・コメディにラブロマンスまで盛り込むインド映画の成熟さに感服。奥さんとパリー、魅力的過ぎる2人のどちらをラクシュミさんが選ぶのか、その結末も大人だねえ。

1人の力でも世界は変えられる、そんな力強いメッセージに爽快な気分になれる痛快作。これは是非、男こそ見るべきだろう。周囲を見る目を少し変えるだけで、世の中は変わるはずだから。

福岡ももち 20181230