才能無い奴はロックをやれ! | Whoops!カズのお気楽れんらく帳

Whoops!カズのお気楽れんらく帳

ブログの説明を入力します。

セッション

2014年 アメリカ
監督:デミアン・チャゼル
出演:マイルズ・テラー

音楽映画だと軽い気分で見たら、あまりの苛烈さに唖然とする。かといってスポーツ映画のような達成感も爽快な感動もない。あるのは音楽に取りつかれた男2人の壮絶なぶつかり合い。死闘と言ってもいい。

このコーチは、別に生徒を立派に育てようと、愛の鞭で鍛えている訳ではない。己の理想の音楽を築くために、生徒をひたすらシバき倒し、耐えられればよし、耐えられなければ容赦なく切り捨てるだけだ。紳士的で優しい面もあるが、音楽に関しては鬼に変貌する。正にナマハゲ!それなのに指揮者としては優雅で繊細という、名脇役J.kシモンズ快心の名演だ。

対する生徒は、鬼のシゴキに次第におかしくなってきて、名ドラマーになる→コーチに認められる→あの野郎をギャフンと言わせてやる!、と完全に方向性を誤ってしまっている。これじゃ悲劇しか見えてこないよ。

そんな2人の闘いは、お互いに大切な物を失う痛み分けに終わる。そして狂気から醒めた2人が、理解し和解すれば感動映画にもなっただろう。しかし、待っているのは、そんな甘い幻想を打ち砕く残酷な仕打ち。このハゲが人外の外道だって事を思い出させ、人なんてそう簡単に変われるもんじゃないと、ダウナーな気分にさせてくれる。

しかし!この映画はここからが凄い!まるでロッキーが立ち上がって反撃を開始したような、途轍もないクライマックスが始まるのだ!もう圧巻を通り越して、開いた口が塞がらないまま息をするのも忘れるような凄まじさ。言葉じゃ表現不可能。これはもう見て聞いてもらうしかない。感動を超えたものがそこにあるから。

そして、憎しみの果てにたどり着いた2人の感情が、ぴたりと一致する奇跡の瞬間を目撃する。おそらくこの後も、2人のはお互いを認める事はないだろう。それでも最高の演奏を作り上げたとき、気持ちは一つに通じあってしまうのだ。これはもう、音楽が持つ魔力としか思えない。それは狂気を伴っても、人を魅了するものなのだ。

気軽に音楽でもやってみようか、なんて思う人には、門前払いを喰らわせて後ろから蹴りを入れるような映画だが、それでも音楽ってすげえ!とひかれずにはいられない、必見の映画である。

天神東宝 20150409