「火の鳥」  team0214 5th conte live 「丸ノ内オフィスレディー」より


SE:「荘厳で神秘的な音楽」→http://www.youtube.com/watch?v=WOEEfPpSAZ8



SE・火が燃える音と「クケー」みたいな鳥の鳴き声。(火の鳥の断末魔)
明転。舞台中央奥で火の鳥がクルクル回り、やがて眼を閉じ倒れこむ。

男1、男2はそれぞれ上手と下手にいる。


男1「ああーっ!火の鳥が!」
男2「炎に焼かれて死んでしまった!」


(膝から崩れ落ちる2人)

男1「ああ・・・もうおしまいだ。これでもう火の鳥の生き血を飲む事は出来ない。」
男2「俺達の人生をかけて、全てを投げ打ってようやくあと一歩という所まで追い詰めたのに・・・」
男1「永遠の命を手に入れることが出来なければ、森は・・・森は一体どうなる!俺達の育った村ももうおしまい   だ!」


すると突然、暗転・火の鳥の死体にピンスポットの状態になり荘厳で神秘的な音楽が流れ始める。

男2「なんだ?どうしたんだ?」

もぞもぞ動き出す火の鳥。


男1「そういえば聞いた事がある・・・。」
男2「なんだ?」
男1「伝説によると火の鳥は、100年に一度自らを火で焼いて再生する事で永遠に生き続けると。」
男2「本当か?」
男1「ああ。手塚治虫の漫画で読んだから間違いない。」
男2「じゃあ間違いないな。」

火の鳥、上半身を起こし、眼を開け羽を動かし始める。
男1男2、眼を合わせて頷く。


男1「さあ、火の鳥よ!灰の中からよみがえり、再び大空を翔けよ!」
男2「そして永遠の命を我々に授けるのだ!」

突然音楽ストップ&明転。火の鳥、再び眼を閉じ横たわる。


男1「・・・ん?あれ?」
男2「どした?やっぱり死んじゃった?」

しばらく火の鳥を見つめる2人。

火の鳥、再びもぞもぞ動く。


男1・2「ああ、生きてる生きてる。」
男1「・・・ゴホン。さあ、火の鳥よ!灰の中からよみがえり、再び大空を翔けよ!」
男2「(やや食い気味に)そして永遠の命を我々に授けるのだ!」

しばらく火の鳥を見つめる2人。

火の鳥、今度は恥ずかしそうに寝返りを打ち、背を向けてしまう。


男1「ああっ!なんで?」
男2「・・・ちょっとこっち来い(と言って男1を呼び、2人でひそひそ話)」
男1「なんだよ、いいところなのに」
男2「これはもしかしたら、アレかもしれない。」
男1「なに。」
男2「なんか急にやりづらくなっちゃったパターンかもしれない。」
男1「なんだよそれ。」

男2「だからさ、よくあるだろ?さーてそろそろ宿題するかーって思った矢先に母ちゃんが『あんた宿題は!早くや っちゃいなさい!』って言って急にやる気無くなる、みたいなさ。今この状況から宿題をやっちゃったらなんか母ちゃんの言う事におとなしく従った、みたいな形になってそれだけは絶対にイヤだ、みたいなさ。」

男1「あーあるある。」


男2「もしくはあれだよ。合コンの場で男側の友達が女の子達にいきなり『ねえねえ、こいつさ、スッゲー面白いモノマネ出来るんだぜ。』とか言って無茶ブリしてきて。で女の子の方も『えーなになにーやってやってー』とか言っちゃって。普段そいつと普通に話してる分にはそりゃ普通にやるよ!?『バカ野郎お前、ダンカンこの野郎』なんつってさ。それをさ、『な、お前この前やってたギャグ超爆笑だったじゃん。あれやってよ』なんつって。最悪『それではやっていただきましょう。ビートたけしのものまねです。どうぞ!』なんつって。すげーやりづらいじゃん。またそれがウケたらさ、なんでか知んないけどそいつの手柄みたいな感じになって。スベッたら自分のせいになんのに。」

男1「すごくよくわかるわ。」

男2「あれなんじゃないかなー今の火の鳥も。火の鳥だって普通の流れでやればスッ・・・と復活出来たのに、オレ達が『さあ、火の鳥よ!』とかさ、『永遠の命を授けるのだ!』とか、なんか変なテンションで大げさな芝居やっちゃったもんだから、急にやりづらくなっちゃったんじゃないかな。」

男1「うーん、そうかなあ?」


2人、火の鳥の方を見る。(この時火の鳥は前を向いて横たわっている。)

男1「(小声で)なんか急にやりづらくなっちゃったパターンですかー?」


火の鳥、咳払いをしながら恥ずかしそうに寝返りを打ち、背を向けてしまう。

男1「間違いない。なんか急にやりづらくなっちゃったパターンだ。」
男2「こうなっちゃったらもう駄目だよ。『あのギャグやってよ』感を無くさないと。」
男1「さっきも途中までは上手くいってたからな。ピンスポが当たる所までらへんは完全に自然な流れだったし。」
男2「お前の『森は一体どうなる!』とか『オレ達の育った村も~』のくだりもよかったぜ。すごく自然かつそれっぽかったわ。」
男1「だろ?へへっ。なんか手塚治虫っぽいかなーって思って。」
男2「とはいえ困ったな。」
男1「うーん」

火の鳥、もう携帯いじっちゃってる。


男2「要はさ、火の鳥が復活したくなるような、復活しやすいような空気をつくればいいわけじゃん。」
男1「自然で、かつすごくそれっぽい流れでな。」
男2「そう、いかにもっていう感じの。・・・っていうとやっぱりあれかな。」
男1「感動的な・・・な。」
男2「生命の尊厳、的な。」
男1「偉大なる大自然、的な。愚かなる人間、的な。」
男2「戦後、日本は確かに豊かになったのかもしれません。しかしそれと同時に、我々は何か大切な事を忘れてしまったのではないでしょうか、的な。」

男1「おつ!知ってるつもり出たよ!」
男2「エンディングのナレーションな。関口宏の。」
男1「そう、エンディング!って感じの空気なんだよな。感動のクライマックス!グランドフィナーレ!的な。」
男2「いやーでもそれ難しいだろ。」
男1「じゃあこういうのはどう?オレ達が知ってるなんか感動的なエピソードをここで今話してー」
男2「うんうん。」
男1「そうすっとなんか感動的な空気出んじゃん。ちょっといい感じになんじゃん。」
男2「おーおー。」
男1「そんでその感動的な空気に乗っかってもらって、そのまま復活してもらう、的な。」
男2「スッ・・・と?」
男1「そうそう。スッ・・・と。」

2人、眼を合わせてうなずき合い、火の鳥の方を見る。


男1「(小声で)そんな感じでいいですかねー?」

火の鳥、恥ずかしそうに咳払いをしながら、背中を向けてしまうが、
その咳払いに混じって小声で、


火の鳥「いいよ。」

男1「よし!じゃーハイハイオレからね!・・・ゴホン。えー、

『病気のおじいちゃん』『病気のおばあちゃん』、『病気  の子犬』えー、『病気の・・・』」


男2「ちょっと待ってちょっと待って。単語!?単語の羅列!?お前まさか単語の羅列で乗り切ろうとしてる!?さ っきお前自分でエピソードっつったじゃん。そんでまた『病気の』多いな!!」

男1「なんかかわいそうな感じ出んじゃん。えー、

『喘息の子供』、『更年期障害のお母さん』『白内障の盲導犬』・・・」


男2「病人家族か!・・・そんでまたお前も単語の羅列で泣いてんじゃねーよ!」

火の鳥「グッ、ウグッ」とか嗚咽。顔をぐしゃぐしゃにして泣いている。


男1「『そんなある日』」
男2「おっ」
男1「『あの娘と出会った』」
男2「なんかちょっとそれっぽくなってきたよ。」
男1「『ありったけの勇気』」
男2「うんうん。」
男1「『告白』」
男2「おーっとー!?」
男1「『不器用な愛』」
男2「ほーほー!」
男1「『静かにうねる海』」
男2「ん?」
男1「『カーテンを揺らす風』『どこまでも続く青空』」
男2「これは・・・」
男1「『子供の笑い声』、『君の手のぬくもり』」
男2「これはミス・・・」
男1「(この辺からメロディーを付けて)『死と再生を繰り返す命』『アアアーイ』」
男2「ミスチルだな。完全に。『揺れ動く♪』だろ?」

男1、ハッと気付き、ニヤリと笑って自信満々に

男1「『死と再生を繰り返す命!』」
男2「言ってから気付いたくせに。」

舞台暗転&火の鳥にピンスポ。荘厳で神秘的な音楽。
雄大に羽ばたく火の鳥。

男2「えー!?こんなんでいいのー!?」
男1「『死と再生を繰り返す命!』ふはははは、さあ、火の鳥よ、灰の中からよみがえり再び大空を-」

舞台明転&音楽ストップ。再び横たわる火の鳥。

男1「・・・、あ。」
男2「あーあ、馬鹿。」


暗転。


「B棟506号室の夕暮れの出来事」 team0214 4th conte live 「コーヒーは雨の降る午後によく似あう」より


台所で夕食の準備をする母。
母に必死で訴えかける娘。
母と娘の間には、ダンボールの中でしゃがんでいる
穏やかそうなスーツ姿の中年男性。


娘 ねえ、お母さん、お願い。


母、娘を振り返ることもせず、


母 何度言ったら分かるの。
   うちは社宅だからダメ!


娘 えー、でも絶対分からないよ。
   吠えたりしないし。もし、人に見られても、あ、お客さんだ。と思われるぐらいだよ。


母 だめだったら、だめです。
   部長はダメ!
   中間管理職じゃない。

娘 えー、ごはんも私がやるし、散歩もするから~。

母 そんなこと言って、結局、わたしがすることになるのよ。
   前飼ってたザリガニ、あんたえさやらないで
   死んじゃったじゃない。


極度に反応するダンボールの中の部長。


部長 !!


母 最後には、二匹いたザリガニ。共食いして!


部長 !!


娘 今度は、一人だけじゃん。
   ごはんも絶対やるから~。


母 嘘つきなさい!朝夕、部長と散歩する私の身にもなってみてよ。
   ものすっごいストレスよ。
  そもそも何を話せばいいのか全然分からないわよ。

娘 週間現代とか、プレジデントとか読めばいいんじゃない?

母 まったく!お父さんが帰ってきたら叱ってもらいますからね。

父 ただいま~。


父、帰ってくる。
父に抱きつく娘。


娘 お父さん、お帰り~。

妻 ねえ、ちょっと聞いてよ。
   また、恵理子、部長拾ってきたのよ。

父 ははは。だめじゃないか。
   恵理子、部長好きだからなぁ~。
  こんどの部長はどんなだ?


ダンボールの中で座っていた部長。立ち上がり。


部長 やあ、松田君、今、帰宅かね。お疲れさま。

父  部長!

母 あら、主人がお世話になっています。

部長 なんだかお邪魔してしまってすまないね。

父 いやいや、そんなこと・・・。


部長 お得意と会っていたはずなんだがね。
    恵美子ちゃんにね、気づいたらいつのまにか拾われちゃって。

父 すみません。昔から恵美子、部長を欲しがってまして。

部長 昔、会社の運動会で会った時は、あんなに小さかったのにねえ。

父 部長が家にいると、やっぱ情操教育とか社会の勉強とかにいいとは思うんですが・・・。

部長 あっという間にこんなに大きくなって。


はにかむ娘。


父 なんせ社宅ですから。管理職以上は禁止されているんですよ。

部長 わたしも歳をとるわけだ。

娘 お願い。お父さん。部長がいれば、きっとわたしちゃんと育つよ。
   ぐれたりしないよ。

母 無茶なこと言うんじゃありません。
   部長さんも迷惑よ。
  

部長 たしかに。わたしがいれば恵理子ちゃんは決してぐれないね。安心だ。
    こんなこと言うのもなんだがね。わたしからもお願いするよ。
    置いてくれないかね。

父 ・・・。

母 !
  ちょっとやめてよ。あなた。
  世話するのはあたしなのよ。
  朝夕、スーツ着た男性と散歩。
  浮気していないのに、浮気しているみたいじゃない。
  なんか損してる気分よ。
  近所の人になんて言われるか。

父 でも、恵理子の教育のためには。

母 いやよ。部長が毎日、うちにいるなんて。
  早く新橋に戻してきて!

部長 昔は、上司からのお願いは絶対だったんだけどねえ。

父 分かりました。部長を家におこう。

母 あなた!

父 上司の命令だよ。しかたないじゃないか。

母 私、実家に帰らせてもらいます。

娘 やった!やった!部長!部長!


はしゃぐ娘。


部長 ははは。


おちゃめにかわいこぶる部長。


部長 あ、そういえばね。

父 はい。

部長 松田くん、まだ公には言えないんだけどね。
    来月から君も部長に昇進することになってるよ。

父 ほ、ほんとうですか。
   ありがとうございます。

娘 部長が二人!
   部長が二人!
   派閥争い!
   共食い!
   共食い!


楽しそうにはしゃぐ娘。


暗転


「別れ話」 team0214 5th コントライブ「丸ノ内オフィスレディー」より


キッチンで話し込む夫と妻。

人の間にはテーブル。


妻 : 別れましょ。

夫 : だから、なんで!?

妻 : しらばっくれないでよ。あなた、私にずっと隠していることがあるでしょ。

夫 : な、なんだよ。

妻 : ばれてんのよ。というか、丸見えなのよ。

夫 : なにが?

妻 : その後ろの人は一体、誰なのよ。


夫の後ろには黒子のかっこうをしている人がいて、夫の背中に手をいれている。

夫 : ••••••。

妻 : 学生時代、付き合い始めた頃から、ずっと気付かないフリしてきたけど。もう、限界よ。

夫 : なにを言ってるんだ!

妻:私、ずっと聞くタイミングをねらってた。

夫、妻をじっと見つめる。

妻 : いつか慣れるかと思ったけど!愛で乗り越えられるかと思ったけど!
  
夫 : なんのことだよ!

妻 : 愛で盲目になりたかった。


夫、なんども後ろを振り返り、人がいないことを確認する。
黒子はちょうど夫の後ろに位置するので、夫には見えない。


妻 : 愛の力でそんなもの、見えなくなればよかった。

夫 : なに言ってるんだよ。さっきから。

妻 : あなたの本当の気持ちが聞きたいのよ。

夫 : 俺はいつだって自分の考えていることはきちんと伝えているつもりだよ。

妻 : うそ、あなた、自分の言葉で話してなんかいない。
  
夫 : 話してるさ。今だって、ちゃんと自分の言葉で話してるさ。

妻 : あなた、変わったのよ。

夫 : ••••••。

妻 : というか、週三のローテーションで変わってる。後ろの人、交代制になってるのよ。
   最近、大学生が新しく加わったじゃない。

夫 : お前、どうかしてるぞ!
妻 : 明らかに体型が変わるんだもの。


夫 : 後ろの人などいない!

妻 : いるじゃない。
  私、ずーっと、ずーっと、気になってたんだから。


夫 : お前••••••。

妻 : あなた、ご近所から、なんて言われているか知ってる?
  「パペットマペット」よ。山田さんちのご主人は「パペットマペット」って言われてるのよ。

夫 : ••••••もう、疲れた。今日はよしてくれ。寝るよ。


妻 : たかしの友だちなんか、あなたのこと、
「たかし君のお父さん、なんか教育テレビっぽいね」って言ってたのよ。


夫 : もう、明日にしよう。その話は。

妻 : 友だちに、お父さんが教育テレビっぽいって言われる、たかしの気持ちが判る?


小声で
夫 : 3チャンネル。


妻 : 今、あなた、小声で3チャンネルって言ったでしょ!

夫 : いや、デジタル放送では何チャンネルかなと思って。

妻 : ふざけるのもいいかげんにして!最近、たかし、あなたのことちゃんと見ようとしなくなってるの
   気付いてる?父親でしょ。

夫: そんなことない。昨日だってキャッチボールしたし、絵本も読んでやってる。


たかし、下手から登場。


たかし : お父さん、絵本読んで。


たかし、明らかに黒子に話しかけ、黒子の手を握る。黒子、つないだ手をぷらんぷらんさせる。

仲良さそう。


夫、慌ててたかしを諭す。

夫 : たかし、やめなさい。知らない人と手なんてつないじゃ駄目だ。
   もう遅いから、もう遅すぎるから、今日は寝なさい。

たかし : はーい。


たかし、下手に戻る。


妻 : あなたが寝た後、その後ろの人、なんかケータイひとりで見てるのよ。わたし見たんだから。


夫: そんな訳ないだろう。後ろの人など、今まで誰にも言われたことがない。

妻 : 言えるわけないじゃない。部長って、黒子がいますよね。なんて。
  
夫 : そ、そうか判った!スピリチュアルなんだな。今、流行の。スピリチュアルなんだろう。
   俺の守護霊が見えてるんだよ。

妻 : 守護霊なんかじゃないわよ!明らかに生よ。生ものよ。ちくしょー。


妻、興奮し、後ろの人の顔を覆う布を上げる。

慌て、困った顔の夫。夫の表情とは対照的に黒子の顔はにやりと笑っている。


妻 : こんな修羅場なのに、こいつ笑ってる。笑ってるじゃない。


黒子につかみかかる妻。困ってばたばたする夫。にやりと笑っている黒子。


暗転。


寝室。蒲団に入った妻。夫、寝る支度をしている。


夫 : お前だって、同じようなもんだろう。

妻 : なによ。話しかけないでよ。


夫、溜息。

夫 : お前だって、書かれた台詞を本当は読んでるだけなんだからさ。


黒子、夫の背中から手を抜く。
死んだように眠る夫。

黒子、1人、ケータイを出す。


暗転。


暗闇の中、ケータイの画面が、黒子の素顔を照らす。