「別れ話」 team0214 5th コントライブ「丸ノ内オフィスレディー」より
キッチンで話し込む夫と妻。
人の間にはテーブル。
妻 : 別れましょ。
夫 : だから、なんで!?
妻 : しらばっくれないでよ。あなた、私にずっと隠していることがあるでしょ。
夫 : な、なんだよ。
妻 : ばれてんのよ。というか、丸見えなのよ。
夫 : なにが?
妻 : その後ろの人は一体、誰なのよ。
夫の後ろには黒子のかっこうをしている人がいて、夫の背中に手をいれている。
夫 : ••••••。
妻 : 学生時代、付き合い始めた頃から、ずっと気付かないフリしてきたけど。もう、限界よ。
夫 : なにを言ってるんだ!
妻:私、ずっと聞くタイミングをねらってた。
夫、妻をじっと見つめる。
妻 : いつか慣れるかと思ったけど!愛で乗り越えられるかと思ったけど!
夫 : なんのことだよ!
妻 : 愛で盲目になりたかった。
夫、なんども後ろを振り返り、人がいないことを確認する。
黒子はちょうど夫の後ろに位置するので、夫には見えない。
妻 : 愛の力でそんなもの、見えなくなればよかった。
夫 : なに言ってるんだよ。さっきから。
妻 : あなたの本当の気持ちが聞きたいのよ。
夫 : 俺はいつだって自分の考えていることはきちんと伝えているつもりだよ。
妻 : うそ、あなた、自分の言葉で話してなんかいない。
夫 : 話してるさ。今だって、ちゃんと自分の言葉で話してるさ。
妻 : あなた、変わったのよ。
夫 : ••••••。
妻 : というか、週三のローテーションで変わってる。後ろの人、交代制になってるのよ。
最近、大学生が新しく加わったじゃない。
夫 : お前、どうかしてるぞ!
妻 : 明らかに体型が変わるんだもの。
夫 : 後ろの人などいない!
妻 : いるじゃない。
私、ずーっと、ずーっと、気になってたんだから。
夫 : お前••••••。
妻 : あなた、ご近所から、なんて言われているか知ってる?
「パペットマペット」よ。山田さんちのご主人は「パペットマペット」って言われてるのよ。
夫 : ••••••もう、疲れた。今日はよしてくれ。寝るよ。
妻 : たかしの友だちなんか、あなたのこと、
「たかし君のお父さん、なんか教育テレビっぽいね」って言ってたのよ。
夫 : もう、明日にしよう。その話は。
妻 : 友だちに、お父さんが教育テレビっぽいって言われる、たかしの気持ちが判る?
小声で
夫 : 3チャンネル。
妻 : 今、あなた、小声で3チャンネルって言ったでしょ!
夫 : いや、デジタル放送では何チャンネルかなと思って。
妻 : ふざけるのもいいかげんにして!最近、たかし、あなたのことちゃんと見ようとしなくなってるの
気付いてる?父親でしょ。
夫: そんなことない。昨日だってキャッチボールしたし、絵本も読んでやってる。
たかし、下手から登場。
たかし : お父さん、絵本読んで。
たかし、明らかに黒子に話しかけ、黒子の手を握る。黒子、つないだ手をぷらんぷらんさせる。
仲良さそう。
夫、慌ててたかしを諭す。
夫 : たかし、やめなさい。知らない人と手なんてつないじゃ駄目だ。
もう遅いから、もう遅すぎるから、今日は寝なさい。
たかし : はーい。
たかし、下手に戻る。
妻 : あなたが寝た後、その後ろの人、なんかケータイひとりで見てるのよ。わたし見たんだから。
夫: そんな訳ないだろう。後ろの人など、今まで誰にも言われたことがない。
妻 : 言えるわけないじゃない。部長って、黒子がいますよね。なんて。
夫 : そ、そうか判った!スピリチュアルなんだな。今、流行の。スピリチュアルなんだろう。
俺の守護霊が見えてるんだよ。
妻 : 守護霊なんかじゃないわよ!明らかに生よ。生ものよ。ちくしょー。
妻、興奮し、後ろの人の顔を覆う布を上げる。
慌て、困った顔の夫。夫の表情とは対照的に黒子の顔はにやりと笑っている。
妻 : こんな修羅場なのに、こいつ笑ってる。笑ってるじゃない。
黒子につかみかかる妻。困ってばたばたする夫。にやりと笑っている黒子。
暗転。
寝室。蒲団に入った妻。夫、寝る支度をしている。
夫 : お前だって、同じようなもんだろう。
妻 : なによ。話しかけないでよ。
夫、溜息。
夫 : お前だって、書かれた台詞を本当は読んでるだけなんだからさ。
黒子、夫の背中から手を抜く。
死んだように眠る夫。
黒子、1人、ケータイを出す。
暗転。
暗闇の中、ケータイの画面が、黒子の素顔を照らす。