焼き場のポジションをやらせてもらっていた

ある夏。

つまり
「鮎の塩焼き」を大量に焼く季節である。  




鮎の焼き方は
まるで「生きている」かのように、
鮎をクネクネさせながら焼き…

そして
器に盛る時も
「泳いでいる」かのように盛る。


そして
こればかりは完全にセンスが出る為、
盛り付け終えたら

毎回料理長に確認してもらってから
お客様へお出ししていた。


毎回言われたとおり全く同じ盛り方をしているのだが

必ず!!
料理長は手を加える。



しかし、
よーーーく見ても分からないくらい
ほんの数ミリ動かすだけである。


内心、、、 
「その数ミリって意味あるのかよ…」


「しかも毎回全く同じ盛り方してるし、変えるところ無いじゃん…」

ずっと心でそう思っていた。



……………………………………………


あるバタバタした日に
料理長も忙しく
鮎の盛り方の確認をしてもらわずに
お客様へお出しした。


そして忙しかった営業が終わり
料理長が僕の元にやってきた。


料理長「オイッ!今日鮎あっただろ!?何で俺に見せなかった……?」

一瞬返す言葉に詰まったが、
今まで思っていた事を言った。


俺「…すみません。確認してもらってないです。
ですが、いつもと同じ様に盛って、お客様からも美味しかった!と言っていただきました!!」



いきなり料理長の目つきが鋭くなり、
俺の心を見透かすように睨みつけてきた…


料理長「いつもと同じ様に…って何だよ?!(怒)」


料理長が珍しく
暴力でなく、口で説明してくれた……。


料理長「この鮎とあの鮎は

いつも同じ所を泳いで…!

いつも同じエサを食べて…!!

同じ重さで…!!!

同じ形の鮎なのかよ?!」


俺「………………」


料理長「もしそうなら、全く同じ盛り方で構わない…
だが、自然で生きている鮎は違う!」


料理長に力説された…


…………


本当ならここで心にグッと来るのだろうが…


この鮎って
「養殖」なんだよね。


「まぁ養殖の鮎なんで…
いつも同じ所を泳いで…(笑)
いつも同じエサを食べて…(笑)
出荷時に、同じ重さと形で揃って送られてきますからね…(笑)

人工的な鮎ですから…(笑)」


「全て当てはまりますが…
料理長…?(笑)」



とは流石に言えなかった…(笑)



だが、
今となって分かる考えであった。


例え人工といえども模様は
二つとして同じ物はない。

エサの食いつきも違えば
微妙に肝の苦味も変わってくる。

毎日微妙に違う鮎
それに対応する…

その時々の空気にあわせる…

それが料理人としての力量になるのだと思っている。


自然の物となれば
もっと形はバラバラで
毎回同じ様に作ることは逆に難しい。


盛り付け
味付け
仕込み

全ての作業を「生かす」も
「殺す」も

自分の一瞬の気持ち次第なのだ。