「焼き場」…
魚介類からお肉、野菜まで色々なものを
炭やオーブンなどを使って焼いていくポジションである。

単純で簡単そうだがとても難しく、
炭の加減や、串打ちにとても神経を使う。

また、
「コゲ」と「焼き目」は
全く別物。
食べる方が美味しそう!
そして、美味しい!と思える焼き目が求められる。


このように、
とにかく料理人としてのセンスが求められるポジションの為、
多くの料理屋では、
上の立場の人が焼き場をやっている。
(あくまでも、一般的に)


そのんな中、
先輩の卒業などもあり
僕に焼き場をやるチャンスを頂いた。

流石に
いつも覗き見しながらやっていたものの、
実際にやってみると全然違う。

営業中は
先輩に確認してもらいながらの作業が基本となる。


ある秋の事…
日本で五本しか水揚げされなかった
初サンマが店に届いた。
一本5000円!!

通常のサンマの40倍もの値段だ((((;゜Д゜))))

初サンマは店のトップである
若旦那に直接味見してもらってから、
お客様にお出しする。


そして、いつもの通り
狂犬N先輩と一緒にサンマを焼いていく。

いい焼き具合になったので
N先輩に確認してもらった。

俺「いい焼き具合になったので、確認お願いします。」


N先輩「まだだ!」


俺「はい!」


もう少し焼き目を付けて、
もう一度N先輩に確認してもらった。

俺「確認お願いします。」


N先輩「まだだ!」


俺「…はい!」


これ…
結構焼き目付いてるけど大丈夫か?!
と思いつつ…
言われたとおり、焼き続ける。


そしてN先輩へ確認してもらいに、

俺「確認お願いします。」

N先輩「ん…」


ん?!

なんの「ん!」だ??!

N先輩「いいぞ!若旦那に確認お願いしてこい!」


N先輩のオッケーが出たので
若旦那の最終チェックを受ける。

お客様にお出しするように器に盛って……



俺「若旦那さん!初サンマお願いします!」



若旦那は楽しみにしていたのか、
ニコニコしていた。





のも
つかの間だった


若旦那の顔はみるみる鬼のような表情になった!!



そして
食べもしないで、
皿ごと厨房の端に吹っ飛ばした!!!


あ″ぁーーーーーーーーー!!

日本に5本しかないサンマぁ~~~~~ヽ(;▽;)ノ

5000円のサンマぁ~


僕の心の声も虚しく
そのサンマは空中を飛び…

お皿と共に
冷蔵庫の隙間に消えていった…………


そして若旦那の罵声が響く……

若旦那「ばっがゃろぉーーー!!!(激怒)」

「バッコーーーーーン!」


殴られた……

だろうね……
こんだけブチ切れてたら、殴られるわ。
表情が変わった瞬間から、もう心の準備は出来てました……


若旦那「お前は、コゲと焼き目の差も分からねぇーのかぁー?!(激怒)」

「バッコーーーーーン!」

「バッコーーーーーン!」


あぁ……
心の準備は出来ていても、
痛いものは痛いよ……


「バッコーーーーーン!」


俺「……すみません……」



その日僕は
焼き場をクビになった。


例えN先輩の指示だろうと
焼き場担当責任者は俺……


しょうがない……



…………………………………………………………………………



その日の夜、
狂犬N先輩が珍しく顔にアザを作って俺の所にやって来た!!

すると突然、
N先輩「サンマぁ悪かったな……」

そう言って
去っていった……。


?????

このタイミングで
しかも、アザを作って
謝りに来たのが不思議だった。



次の日の朝

昨日若旦那に殴られたところが痛い…
ひさびさにボコボコに殴られたからな…


そうこう思っていると
ベジータK先輩がやってきた。

ベジータK先輩「お前も痛そうなアザ作ってるなぁ!!ワハハハハハっ!!」


心の声「ワハハハハハっ!!じゃねぇーよッ!オッサンッ!!!(怒)」



えっ!?

今ベジータK先輩「お前も」って言っていたよな…

俺「ベジータ先輩!N先輩のアザも知ってるんですか??」


ベジータ先輩「知ってるもなんも、俺が殴ったからぁ(笑)」
「しかも、その後若旦那にもボコボコにされてたよー」


俺「若旦那さんがなんで…?」

ベジータ先輩「俺がNの指示であぁなったって教えたからだよ」


??????

ベジータ先輩「あんな初サンマを豪快に焦がした、帳本人はNなのに、お前だけボコボコされるのは可笑しいだろ?」




俺「………ベッ……ベジータぁーーー!!!」


ベジータ先輩「あっ!あと若旦那が、お前に焼き場戻れって言ってたよ」



本当に泣けてきた…



なんて良い先輩なんだ!!

普段理不尽にボコボコにされてるけど
そんなこと吹っ飛ばすくらい嬉しかった!!! 


人間
ちょっとしたことで、
コロッと気持ちが変わるもだと感じた。

そして、
見ていてくれる人は
見ていてくれている。

他人のことでも、真摯に受け止めて反省することは
悪いばかりではない。
そう学んだ時間となった。