鴨鍋パーティーが始まる直前まで、
鍋やおつまみなど
色々と食事の準備を手伝っていた。



そこへ、
パーティーのお客さんがやってきた。




その中に
昔からお店の
調理器具を担当してくれている
電気屋の「けんさん」が来ていた。



年齢は50代で
父親とほぼ同世代。

だが、
工業高校、工業大学出身だった僕は、
けんさんが店に来る度に
電気屋のパシりにされ、

かなり
仲良くなっていた。




その日も
付き合いで若旦那の
Nゲージ開通パーティーに
参加したのであるが…




話しを聞いてみると、
この電気配線等は
けんさんが施したそうだ。

やっぱりプロの技は
シンプルかつキレイである!





僕が来てから
ずっと気になっていた
トンネルの話を振ってみた。
そうすると…
これまためちゃくちゃな過去が…(笑)







若旦那がNゲージを
やり始めたのは
中学生の時から、、、

もっとも、
本格的にジオラマなどもやり始めたのは
若女将と結婚してからだという。



その際
やはりお金持ちの料理屋に嫁ぐと言うことで
かなり嫁入り道具へ力を入れたそうだ。

食事棚もその一つ……











結婚から数ヶ月がたった、ある日
若女将が何か予定があって実家に帰っていたらしい



そのタイミングを狙ったのか、
そこに電気屋のけんさんを呼んだ。

一気にNゲージの線路を仕上げる為に、
趣味に電気屋の力も借りていた。



配線をやっている中、


線路がどうしても食事棚にぶつかってしまう…


若旦那に
「これ、線路迂回させましょう!」

と言ったら、

若旦那が
「ダメだ!!それだと景色が変わってしまう!!」


けんさん「…………じゃぁどうすれば?」







若旦那「トンネル掘れば良いじゃないか!」
「箱根の山だよ!箱根!!
(笑)」


けんさんが念には念を推して、
「本当に良いんですか?切ったら戻りませんよ!」


若旦那は半分キレながら
「そんなん分かっとるわ!魚だって、一度切り落としたら、くっ付かないよ!!」



怒られながら言われたため、
しぶしぶ言われたとおり
食事棚に電動ノコギリを使って空け始めた。


若旦那の満足そうな笑みが
横から見えた。



けんさんは

取引先の社長が喜ぶなら…と請け負った仕事が


地獄への入り口になるとは
知る由もなかった…






線路は無事開通!!



その時あった貨物列車の先頭に
小型カメラを付けた。


二人は子供のように大興奮!!


写されたテレビを見ながら
運転手気分を二人で味わっていたのである。




そうこうしているうちに
若女将が実家から帰ってきた。



楽しそうな声に釣られて
若女将が二人に近付いていく。



若旦那「ほらこれ!開通したよー!!!」

若女将「すごいじゃない!!」
「けんちゃんも手伝ってくれたの?ありがとうねー」



若旦那「しかも、コイツに小型カメラ付けて
運転手気分も味わえるんだよー!!」


興奮しっぱなしの若旦那!

しかし、
けんさんの血の気が少しずつ引いてきた…



若旦那「見てろよ!今走らせるから!!」



けんさん「いや!!!あまり走らせると、モーターに負担掛かって壊れちゃうんで、今日は止めましょう!!」



焦ってけんさんが止め出した。
以前、
若女将が嫁入り道具で棚を入れた!という話を

若女将を前にして
思い出したのである。


確信はなかったが

イヤな予感がしてたまらなかったため、
バレる前に
必死に止めて帰ろうとしたのだ。





とにかく!!!
早く!!!
この場から逃げたい!!!


そればかり考えていた
けんさんが
自分の工具を手早く片付けている最中…






若旦那「次はーー小田原ぁーー小田原でぇす!」





…………………………………………………………………………………………………

ふと、
テレビを見る。




((((;゜Д゜))))











電車走っとるやないかーーーーい!!!!




しかも、

おーだーわーらぁーーーーー!!!??




運命の
箱根山の直前まで、進んでるしーーー!!!!






若旦那「次が今回一番こだわった所なんだ!」

若女将「なに?!なに?!」




けんさん「わぁーーーーアカンッアカンッ!!」


けんさんの叫びも虚しく
若旦那は続ける
「今回のメインイベントは、
俺にはちょっと出来なかったが
けんちゃんが全て手塩にかけて作ってくれた…」


え???
   

けんさん「………………………
完全に俺だけの責任予告になってるよ……」





若旦那「まもなく、箱根山トンネルでぇーす!」

テンション上がりまくりの若旦那!



もう
止めることは出来なかった…









いきなり
重~い空気が流れた…







若女将が泣き出して


若旦那がやっと
異様な雰囲気に気付く!!!


若旦那「どうした?」



若女将「どうした?じゃないわよ!!!」
「なんで、買ったばかりの嫁入り道具を
切り刻んだの?!(大泣き)」



若旦那「刻んではない!
電動ノコギリでキレいに切り落としたんだ!!」





けんさん心の声「そこじゃない!!若旦那!!着目点そこじゃない!!!」



けんさんのその声は
新婚の二人のただ寄らぬ空気で
声にならなかった…





若旦那も職業柄なのか
切り方に
反応してしまうのも分かるが…


しかも、
キレいに!って完全に相手をあおってますからね…





そして、

若女将は大泣きしながら

また実家に帰ったそうだ…


めでたし

めでたし。




 ……………………………………………



俺「全くめでたくないよ!!」
「めっちゃ話中途半端!!若女将がまだ若女将してるってことは……一応仲直りしたんだよね?」



けんさん「一応そうだね。」

俺「一応??」


けんさん「めっちゃ高いお肉を持って、若女将の実家に謝りに行ったんだって!」


けんさん「でも、俺は一年以上口きいてくれなったんだよ…
仕事しずらくて、しずらくて…」


俺「けんさんも、高~いお肉持って行けばよかったのに!」



けんさん「町の電気屋に出来るかよ!!!」






やはり

人間はお肉に弱いと言うことが分かった!!