元夫と結婚してる頃、いつもいつも心の中に「憂鬱」な気持ちを感じてた。
具体的にどんな気持ちかというと・・・
なんとなく不安
なんとなく落ち着かない
晴れ晴れとした気持ちになれない
うれしいこと、楽しいことがあっても、心から喜べない
思い切り笑えない
いつも何かに縛られているような気持ち
自由を奪われているような気持ち
こういう感じが、いつもいつも心の中にあった。
そう、まさに、慢性的な憂鬱。
原因は分かってる。
元夫の借金問題。
これしかない。
私の借金ではないのに。
私は、あの人の借金にどれほど苦しめられていたか。
今思えば、本当に、慢性的に心を病んでいた状態だったと思う。
キャッシングのカードの支払日が毎月27日。
その請求書が届くのが、その数日前。
そのころになると、ポストを開けるのが怖くて怖くてたまらなかった。
怖くてたまらないけど、ポストの中を確かめなくては気が済まない気持ちでいっぱいで。
ポストの中が気になって気になって仕方なかった。
今月も来てる・・・
やっぱりカード使ってる・・・
それを確かめなくてはいけないという、半ば、強迫観念ともいえるような、義務感のようなものにとらわれていた。
そしてそれは、封書の中身についても同様で。
そこに書かれている金額を、確かめなくては・・・という強迫観念。
勝手に封を切って中身を確認して、元夫に問い詰めたことがあった。
そのとき、自分あての封書を勝手に見たということで、逆に問い詰められた。
問題はそこではなく、借金のはずなのに。
携帯電話の請求書は、勝手に開封しても怒らないくせに。
私を問い詰め、怒り狂い、家を出ていった。
そして、パチンコ行ったり、飲みに行ったり。
借金の傷口をますます広げる。
クズ野郎っ!!
今でこそ、そう思うけど。
当時は、私が悪い・・・って思ってた。
私も狂ってたんだと思う。
これがいわゆる、共依存ってやつ。
憂鬱はポストを開けるときだけではなく、本当にいつもいつも、すぐそばに、私自身のなかに常にあった。
誕生日のプレゼントをもらっても、借金を知ってからは、うれしいと思ったことなど一度もない。
「このプレゼント買うのに、いくら借金したの?」
出張のお土産をもらってたときも、吾郎におもちゃを買ってきたときも、うれしかったことなんて一度もない。
「余計なお金、使わないで。」
今でもよく覚えていることがある。
夏に、海に行ったときのこと。
私は砂浜のパラソルの下で、海の浅瀬で遊ぶ元夫と吾郎の姿を見ていた。
真っ青でとてもきれいな海。
同じくらい青い空。
真っ白い砂浜。
たくさんの家族連れ。
幸せそうな笑顔。
私も自然と笑顔になった。
でも、心はちっとも笑ってなかった。
心から笑えないって、これほど不幸なことはない。
私たち3人だって、一見すごく幸せそうな家族に見えたと思う。
でも、そうじゃなかった。
「いったい今いくら借金してるの?海なんかで遊んでる場合なの?」
実家に帰省する道中、高速道路を走る車の中。
吾郎はスヤスヤ眠ってる。
今しかない。
今聞かなきゃ。
なんて切り出そう。
もし怒らせたら、気まずい空気で帰省することになってしまう。
でも、今だったら聞き出せるかも。
2人きりになったときは、いつも、そんなこと考えてた。
実際に、その話題を元夫にしたことも、もちろん何度もある。
だいたい不機嫌になるか、うまく誤魔化されるかのどちらか。
「だいじょうぶ。心配ないって。ちゃんと考えてるから。」
そして給料日後の26日、27日。
つまりカードの支払日。
後で知ったけど、サラ金の支払日も同じ頃らしい。
「ああ、オレオレ。オレだけど。
手持ちがちょっと足りないから、お金振り込んでくれない?」
ちょっとっていくら?
20万だったり、40万だったり。
まるでオレオレ詐欺。
オレオレ詐欺が有名になる前から、私は元夫の「オレオレ」電話で相当な金額をアイツに支払ってる。
借金夫という爆弾は、いつ爆発するか分からない不気味な怖さを持ってるから。
いつもいつも、私は何かに追いかけられてるような、不安な気持ちを抱えてたってわけ。
そう、これが、慢性的な憂鬱ってやつよ。
離婚した後、この憂鬱から完全に解放された。
気持ちがスッキリして、軽くなった。
今だって憂鬱になることはある。
どしゃ降りの雨の朝。
遅番の次の日の早起き。
週末のお弁当づくり。
仕事上のトラブル。
面倒な客。
そりゃあ、生きてりゃいろいろある。
けど、それは、それをやり過ごせば、スッと消えてしまう。
いや、消えてしまうとともに、面倒なことをやり過ごした達成感とか満足感が加わることもある。
それは、人生にとって、プラスの出来事ではないか。
ピンチはチャンス。
それなら憂鬱だって、大歓迎だ。
あの頃の慢性的な憂鬱を感じることは、もう一切ない。
心から笑えるって、こんなに幸せなことなんだ。
早く気が付いてよかった。
早く決断してよかった。
いつだって、いつからだって、やり直しはできる。
女ひとりで生きていくことに不安もあるし、苦労もあるし、惨めさを感じるときもある。
でも、あの頃の私を思えば、どうってことない。
男がいればいいってもんじゃない。
結婚してりゃいいってもんじゃない。
女ひとりだって、ちゃんと生きていける。
幸せになれる。
だって、私。
今、こんなに幸せなんだもん。
ひとりになることを、怖がることなんてない。
強い気持ちがあれば、大丈夫。
助けは素直に受け入れて。
意地を張らずに。
前だけを見て。
しっかり生きていけば大丈夫。
私はそう思う。