『矛盾一なれば矛盾に非ず』
ある武王の国に一人の武人ありて、王の御前において、『私の持っている矛は天上天下第一の矛ゆえに、どんな盾を持ってきても悉く突き破り、打ち破りゆきます』と自慢を申すると、次にもう一人の武人が出でて、『私の持っている盾は、天上天下第一の盾ゆえに、どんな矛をしても破る事はできません。
どんな矛も悉く打ち破って、役に立たなくしてしまいます』と自慢申して示すなり。
王はそれを聞いて、二人の武人に対して『されば汝等の示す矛と盾、どちらが勝るか示して見せよ』と言うと、かの武人二人は、はじめは我勝りと論じあいていたが、論には論を呼び、答を出す事もならずなり。
しかるに今度は、互いに怒り出して対立なして戦う事を申すなり。
戦いなするそこにおいても、勝負これのつかずして、証しなす事のなせぬなり。
されば、互いに互いの言葉、妄言となりて、真とならぬと示すなり。
これを矛盾と申して示すなり。
争い、対立、永遠と尽きずに迷いと苦しみゆくと教えるなり。
しかるに王、ふらふらになりた二人の武人に微笑みて『されば、我が解決なして見せるに、ともにその矛と盾、ここへ持ってくるように』と申するなり。
これを受けて武人、これを王へ差し出すと、王、一方の手に矛を持ちて、一方の手に盾を持ちて、一体に調和せしめて一と示して『我こそ、天上天下第一にして矛盾を破る』と大音声で申するなり。
一人の武人、不思議と思いて、王にその訳を問いゆくに、王これに答えて、『我の矛、天上天下第一にして、一切の無知、悪心、邪心これを破るに、一なる一と示すなり。
また我の盾、天上天下第一にして、一切の悪心、邪心、煩悩よりこれを守りて、智々光
明と守るに、一なる一と示すなり。
この一と一、一体なして真如大智見と変えて大光明一となするに、我こそ、真の一とは示すなり。
汝等互いに互いを主張してゆずらず、対立なするに、真のならずと申すなり。
互いに一体なしてその真実を知り、調和なすれば、真の第一が生まれるなり。
されば、一切の矛盾を破れるなり。
これを命と教えるなり。』
二人の武人、王のこの言葉を聞きて迷いの眼、天と洗い落とされ、涙となして喜ぶなり。
二人声をそろえて、『まこと対立こそ矛盾なりて、調和なすれば、一と生まれて、矛盾も消えると知りました。
これからは全てを調和せしめて命を生きると誓います。』王それを聞いて大いに喜び、二人を左右の臣と用いるなり。
衆生これこそよくと聞けとは教えるなり。
太陽の法嗣
大日 天光子
合掌