『あり余ってあるものの価値!1』
リンゴの産地に育った少年が旅をして、リンゴの木の全く無いところにて一人の少女よりリンゴの実を一個与えられた。
その少女はそのリンゴを宝物のようにしてその少年に差し出したが、少年はそこがリンゴの木の無い国とは知らなかったので、笑って軽い心で受け取ったのである。
すなわちあり余っているところに少年は暮らしていたから、その大切さと価値を知らなかったのである。
少女は少年に対して言った!
「そのリンゴは私の宝物のように大切なリンゴです。
何故ならばこの国にはリンゴの木は一本も無く、手に入りにくいもなのですから」と!
すると少年は、
「僕の家は大きなリンゴ園を沢山持っているので、リンゴはあり余る程あるし、そんなに大切とは思えないんだ」と答えた。
少女はその少年の言葉に首をかしげて微笑むと、
「リンゴがあり余る程有るなら、私なんかよりもっとリンゴが大切なのではないですか」と聞いた!
少年は
「だって捨てる位あるんだぜ!
そんなに大切とは思えないよ!
それよりもっと無い物の方が大切さ」と答えた。
少女は、
「それはおかしいですよ!
だってあり余る程あるから貴方達家族や沢山の人々がそのリンゴによって生活し裕福に暮らせるし、リンゴに守られ生かされ生きているのでしょ!
だったら私の一個のリンゴより貴方の家のあり余るリンゴの方が、ずっとずっと大切なはずでしょ!
あり余る程あるからそれによって生活もできるし、他の人に分けてあげて喜ばれる事もできる!
そんな大切なものはないと思いますけど!」
「少年は少女のこの言葉に教えられて自分の考えが間違っていた事に気づいたのである。」
すなわち、
本当はあり余っているものの方が大切であり、大切にするべきものであり少ないものの方が本当は大切なのではないと目覚めたのである。
あり余っているものは、
全てを生かし、
全てを守り、
全てを支える事ができるが、
少ないものは、
少数の自己満足を育て執着の心を生むとやがて苦しみの原因ともなってゆく事に気づいて、あり余っているものこそ大切にする心を大切にしようと思ったのである。
その日から少年には天地大自然の中にある木々や草花だけでなく、全てが輝く価値あるものに見えたのである。
あり余っているものがあれば粗末にせず、
他に与えて、
感謝、
信頼、
喜び、
楽しみ、
尊敬、
幸せ等々の沢山の心を得る事ができる。
またそこに
生かされ、
守られ、
支えられて、
生き暮らす事ができる。
少ないものは、
少ないがゆえに人を虜にして
執着や、
奪い合いの心等々を生み、
迷いへと人の心を誘い、やがて苦しみさえ生みゆくのである。
人はこのあり余っているものの方が大切な事を忘れてしまっているのである。
太陽の法嗣
大日天光子
合掌