オノレ・ド・バルザック 【ゴリオ爺さん】
ラスティニャックに
ニュシンゲン夫人が震えた声で尋ねる。
「賭博場にいらしたことがおありになって?」
「いいえ、まったく」
「これが私の財布です。
百フランはいっています。
私の持っているお金の全部です、
これをルーレットとかいうものに賭けて、
全部フイにするか、六千フラン持って帰るか、
どちらかにしていただきたいの」
ラスティニャックは賭博場を探し当て、
わけもわからず自分の年であるニ十一の上に
百フランを投げ出した。
たちまち回りから驚きの叫びがあがった。
彼は勝っていた。
三千六百フランを自分の方に引き寄せると、
それを赤の上に置いた、
ルーレットが回り、また勝った。
百フランは七千二百フランになっていた。
それを持って馬車で待っている
ニュシンゲン夫人のところに戻ると、
彼女は狂ったように彼を抱き締め、
激しく接吻した。
(「要約 世界文学全集Ⅱ」から)