戦争とはいえ、そんなことが起きるのか。トランプ大統領の脅迫では石器時代と言っているが、石器時代は生存の危機ではなかった。現代に於いて生活インフラを失った場合どのような社会が到来するのか。

 

生活インフラとは、電気・ガス・水道そして物流だ。食糧や飲料水がなければ生存の危機となる。都市の暮らしは自給自足という手段を持ち得ていない。地方都市や農村部でも流通に適した画一的な農産物に特化している。つまりは大規模な飢餓が発生することは間違いない。イラン人9500万人の飢餓とは史上類を見ない大虐殺(ジェノサイド)=戦争犯罪ということだ。

 

大陸性気候である4月のイランは気温が急上昇する。テヘランで日昼の気温は35度まで上がる。しかし湿度は20%以下なので日陰に入れば日本のような蒸し暑さを感じることはない。とは言っても冷房は必修である。各家の冷房は水の気化熱を利用した冷風になる。湿度が無いので室内にカビが生えることは無い。

テヘランの水道水は北部に位置する標高4000m級の雪解け水をダムに貯水して供給されている。このダムからのパイプラインが破壊されると周囲に川は無く地下水もない。完璧に干上がってしまう。そもそもテヘランは近代になり首都となってから都市化した街だ。

 

発電所はテヘランの西方にカズヴィーンという州都があり、その高速道路の中間地点にある。紡錘型の巨大な冷却塔が並ぶ。ここがメインとなる。もう一つは南部ペルシャ湾に面したブシェールの原発だ。そんなことから発電所そのものを破壊するというより、送電網を切断するだけで都市の電力は完全にストップする。他にも内陸型の発電所は主要都市に隣接して存在するので、送電網が狙われるのは十分にあり得る。仮に発電所を破壊するとしたら、エスファハンの核施設に隣接する発電所を狙う可能性はある。

 

ガスはそもそも産油国であることから、パイプラインによって都市部では天然ガスが供給されている。イスラム革命後になるが都市部ではガス給湯システムが100%普及した。すでにテヘラン南部の石油施設が破壊されているので、大多数のテヘラン市民はガスボンベ等でしのいでいる可能性は高い。

 

いまバザールに商品は並んでいるが、都市間を接続する高速道路網が破壊されると輸送力は壊滅的になるだろう。1500万人が生活するテヘランでの自給農産物はそもそも無いに等しい。隣接する南部のレイという小さな田舎でしか農作物は生産されていない。

 

トランプ大統領の地獄を見るという攻撃が行われた場合、主要な都市を脱出するにも交通網が破壊されてしまえば、大規模な飢餓が発生することになる。一方的に無計画な戦争を始めて「降伏しなければ地獄を見ろ」というのは、近代史最悪の政治家であることは間違いない。現在のイラン戦争は子々孫々に憎しみの連鎖がおきることになる。さらにインフラの破壊は千年の憎しみへと続く。