企業の営業力を育てるにはーハーバードビジネスレビューの論文をまとめたオムニバス集。8章からなり、1章20~30ページ程度なので読みやすい。論文は1,970年代から2,000年以降までに書かれてもので時代に幅がある。ただし70年代に書かれたものでも今でも有効と思われるものが多い。本質は不変ということだろうか。

第1章は一流の営業と三流の営業というタイトルで、顧客と良好な関係っが保てるのは一部の営業マンで、焦点、最優先課題にフォーカスしていることが指摘されている。たまに野球や世間話にも話が移っても、営業マンは最優先課題に話を戻す。世間話ばかりしている営業はダメだということだ。
営業でもうまくいかない場合があるが、一流の営業マンは持てる知識を活用してリカバリーしていく。
ダメな場合も気持ちを切り替えて効率的に対処することが求められるのである。運や他人のせいにしていては三流だということだ。

第3章では組織営業の重要性とチームビルディングについて語られている。ライバルも同様の製品を提供しており、作れば売れるという時代でなければ一貫した営業方針で顧客に対応する必要がある。
顧客の求めるものを、求める時に提供していかなければならない。各顧客企業に適切にかつ迅速に対応することを戦略の柱にする。
営業活動のコーディネーションは報酬制度、目標設定プロセス、人員配置とトレーニングである。報酬制度は売れればいい、に偏重させないようにする。目標設定プロセスはどのような分野でどれだけの数値を目標とすべきか、営業マンに道を示す。
人員配置とトレーニングは特に中小企業で有効だ。大企業は多くの売れる製品を保有しており、流通チャネルも豊富だ。限られた社内の人的リソースをどうつなぎあわせ活用するかが重要である。また、場合によっては社外にそのリソースを求めても良いだろう。

第5章ではマーケティングシステムのサブである営業のシステム化、どのようにアウトプットを出すかについて論じられている。システムの改善は売上増や収益性改善、原価の縮小を営業活動に関わるものを分析し、科学していく。注力すべき顧客を明らかにし、どれだけ貢献できているか、顧客と関係性を持っているか明らかにしていく。もちろん不足しているところは是正していく。この論文は1975年に発表された。筆者はポーター・ヘンリー、恐らくのちのSFAなどの考えにも影響を与えただろう。

第8章はソリューション営業、ガンバリズムの否定。1996年にジャックウエルチがアニュアルレポートでソリューション営業の重要性を説いていることを指摘。御用聞きではなく、顧客の問題解決をできる能力が必要である。
熱意や誠意は一種の美学であり、必要不可欠であるがこれを評価する顧客はピントがずれている。重要な意思決定権を持っている人間は忙しく、営業マンの熱意ではなくソリューションについて話を聞きたい。

ソリューションに必要なことは3つ。顧客を理解する。顧客の競争相手を理解する。顧客の顧客を理解する。
これは根性や気合といったガンバリズムだけではうまくいかない。つまり営業とはナレッジワークなのだ。ノルマは到達点ではない。営業ノルマ必達は営業の義務であるが、真に必要なことはそれを越えて、顧客の課題をソリューションすることである。


全体を通してオムニバス集なので統一感はない。営業の基本はさほど変わっていない。しかしながら、競争相手の台頭やITによる業務方式の変更やコンプライアンス重視や法律変更など常に市場も会社も変化にさらされている。変化に対応できるためには体力が必要で、結局のところ頭と体力を使ってソリューションを考え、企業内外でコラボレートして実践することが必要なのだろう。
一流の「営業力」を育てる (Harvard Business Review Anthology)/ダイヤモンド社
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 シンプルに考える。これが、僕の信条です。
悩むのをやめた、と言っていいかもしれません。
悩むとは、なんとなく「あれも大事、これも大事」と迷っていること。結局、何も決められず、行動に移すことができません。


 昨年、LINE株式会社のCEOを辞任した森川さんの著書。僕はあんまりLINEというサービスが好きになれなくて、しばらく敬遠していた。日経産業新聞の定期コラムは欠かさずチェックして、ものの見方とか考え方を参考にさせていただいていた。LINEではほとんど事業計画を書かないの記事を読んだ時はまさかと思っていた。確かにベンチャー企業かもしれないけども既に大きくなった会社だし、それなりに事業計画を作って色々なモデルを振るい落としているはず、 業務提携も慎重に行っている記事もあったことだし。
 なかなかWebの記事だけではわからないので本書を買ってみた。タイトル通りシンプルな内容だ。
 
 誰もが使いこなせる、もっと便利なメッセージサービス
「ユーザーが本当に求めているもの」を生み出すことに集中する。その結果として勝利はもたらされる。

 
ユーザーが本当に求めているものを考えることは難しい。僕は正直苦手な分野だ。アジャイル開発の本でも顧客が求めるものを開発しなさい、という格言めいた節があった。
 
 大切なのは、人々が本当に求めているものを感じ取る能力と、それを具体的なカタチにする技術を磨き続けること。そして人々が求めているものが変化した時には、それをいち早く察知して新しいものを差し出すこと。そこにひたすら集中することー

 森川さんは集中と選択について徹底している。彼のメッセージは結局「シンプルに考えよう」だ。この本はとても平易に書いてある。シンプルだからこそ本質を突いているのだろう。
僕のような難しく考えがちな人間は何回も読まなくてはならない。

シンプルに考える/ダイヤモンド社
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 150年前から今に至るまで、人は都市を時計仕掛けの機械のようなものとして動かしてきた。それがすごいと言いたいわけではない。要は効率重視でやってきたということだ。

 
著者の主張では現代の都市は 19世紀頃から作られてきた都市モデルの上に成立している。人々は都市に住み、労働集約型の産業(当時で見れば重工業の巨大工場だ)地域にバスや電車で移動する。起点となるのは駅やバス停だ。これらは決められたルートを通る。料金は深夜の割増を除けば一様で、需要の多い時は高騰したり、閑散期に安くなったりしない、Uberのように。少なくとも今のところは。

 
バス停に行くのではなく、バスが迎えに来てくれる。乗客の行動モデルを作り上げることができれば (※一部原文を意訳)

 え、それはすごい。バス停が自宅の近くにない都市生活者にとっては願っても叶ったりだ。ただしバスが幹線道路だけでなく生活道路にも入って来てくれるのであれば。

 Bridjはソーシャルメディア解析とアプリを組み合わせて乗客の利用パターンを分析し、バスを求めている場所へとバスを送り込む。創業者たちは400万ドルのシード投資を受けることになった。

 さすが、アメリカ。そんなスタートアップがすでにあるとは。日本でも既存の考えから変えられないのか。だけどそんなことをすれば既存のシステムが崩れてしまうのでは?

 一方には、従来型の低料金だけれども柔軟性の低いマストランスポーテーションがある。もう一方に、マイカーやUberといった、高料金だけども柔軟性が高いサービスがある。Brijdjは、その中間のような適度な柔軟性と適度な料金設定を備えた第3の道を目指す。

  BridjのWebサイトを見てみると、使われている車は10~12人程度のマイクロバスのようだ。乗り合いタクシーの大人数版という印象を受ける。海外で空港から市街地に移動するときにもこういう車を使うことが多いと思う。日本で言えばハイエースワゴンやエスティマあたりの廉価版か?既存のバス産業とは機種もポジショニングもまるっきり違うわけだ。黒塗りの高級ハイヤーでもない。Uberの二番煎じにも思えるが、それは思い違いかもしれない。彼らは自分たちの立ち位置をはっきりと決めている。日常的にはタクシーよりもバスを使う人口の方が多いだろう。あらゆるものがつながっている現代だからこそ成り立つサービスである(極地的に限定されたサービスを除外して考えれば)。

 あらゆるものが繋がりあった現代都市の複雑さにおいて、シンプルなプラットフォームは存在しえない。

 Uberのようなサービスが都市に普及していく、それをUberがやるかまたは既存の団体が行うかは別にして。公共サービスの再構築または再定義がスマートシティのゴールなのだろう。僕は空港までのアクセスが楽になればすごく嬉しいのだが。


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