その日、「その人」は約束のあった仕事の現場に現れなかった。
あわてたスタッフは「その人」や会社に連絡を入れたがつながらなかった。
会社は、休業日だった。
そこへ社長である彼に連絡を入れて寝起きの彼が焦って現場に行き、仕事を指示した。
彼が「その人」に連絡をしてもつながらない。
彼と「その人」との今までの付き合いの中で、そんなことは一度もなかった。
絶対に何かがオカシイ。
まずは会社へ「その人」のデスクを調べに行った。
分かりやすい場所に、手紙が置いてあった。
会社に赤字を負わせてしまっていること。
その赤字を埋めようと、個人でも借金をしていること。
スタッフや、彼にお世話になったこと。
感謝していたと・・・。
そういう内容だった。
これは、辞職なのだろうと彼は理解し、
とにかくどういうことか本人に確かめようと「その人」の家へ急ぐと、
その近くでパトカーのサイレンが鳴っていた。
初めていく「その人」の家に着くと
白バイやパトカーが何台も止っていて物々しい事態になっていた。
最初はそれが「その人」の家ではないと思ったが、
表札も住所も確かに「その人」の家だった。
家の周りにいた人垣のおばちゃんにどうしたのか尋ねると、わからないと返事があった。
仕方がないので、敷地に入り、近くの警官に、この家の者に会いに来た旨を伝え、
どういう事態なのか尋ねると、教えてもらえなかった。
かわりに近くに座り込んでいた「その人」の父親を紹介してもらった。
父親は息子が首を吊って、嫁さんが失神して病院に運ばれたということをあっさり教えてくれた。
発見者はその父親だった。
