キーを差し込み回すと、低い唸り声を上げながら車が走り出す。
どんな景色を君に見せようか…
コンクリートをえぐるように回るタイヤ。窓から入り込む風が頬を撫で、天気さえも味方につけたみたいだ。
カーステからは思い出のサマーチューン。ご機嫌なメロディーが車内を包む。心なしかタバコの煙も踊っているように見える。
着いたぜ…
青い空。
白い雲。
輝く海。
降る雨。
ん…………雨?
着いてまだ五分しか経っていないのに?
オイオイ。
今時の乙女心でさえこんな速く変化しねーよ。
秋の空って…。
もう帰る。
乙女心のバカ-----!
あ、間違えた。
秋の空のバカー!
けいた