何故、連絡をくれないのだろう。
「仕事と私どっちが大切なの」なんていう不毛な質問を彼氏に投げつける女はバカだ、と何かで読んだことがある。
メールも電話もない。手中におさめた女には、なにも与えなくてもいいと思っているのだろうか。
何故、連絡をくれないのだろう。
「仕事と私どっちが大切なの」なんていう不毛な質問を彼氏に投げつける女はバカだ、と何かで読んだことがある。
メールも電話もない。手中におさめた女には、なにも与えなくてもいいと思っているのだろうか。
いまの彼氏と付き合う前、五年間想い続けた男性がいる。「も」なのか「しか」なのかわからないくらい、その男性が近くにいることが当たり前だと感じていた。
男性の名前はOさん。同い年で26歳。大学生の頃に知り合った。といっても、私は大学へは行っていない。その頃は、風俗店(SMクラブ)で働いていた。
都内の名門大学に通うOさんと、SMクラブで働く学歴のないわたし。不釣合いにもほどがあると周りの友人達に言われた。
Oさんとは五年間プラトニックな関係だった。体を合わせることも、キスをすることも、手を繋ぐこともなかった。お互いがそれを必要と感じることもなく、いつも二人で話しているだけで、満たされてしまっていた。おかしいくらいに、とても。
いまの彼と出会って、そろそろ一年が経とうとしている。
12月8日。その日が彼と初めてドライブへ行った日。卒論で毎日徹夜をしていた彼に私から会いたいと電話をした。彼はすぐにきてくれた。深夜3時。待ち合わせ場所は、私の家の近くの駐車場。薄暗い車内で、あてもなく走り続ける車。でも一人ではいられない夜だった。
彼はとても真面目で優等生を絵に描いたような人。でも秘密があった。この時はまだ知らなかったけれど。
一度目のドライブでは私はゼンマイ仕掛けの玩具のようにぺらぺらと喋り続けた。そして、短い沈黙。でも沈黙は嫌だった。笑顔で運転をする彼の横顔を見つめながら、また只管に話し続ける。
何が好き? どんな趣味があるの? 大学は楽しい?
彼は一つ一つに丁寧に答えてくれた。
二度目のドライブでは数回手を握った。ドライブ中に助手席に座ったまま手を握られたのは生まれて初めてのことだった。恥ずかしくて、窓の外ばかりを見ていた。
三度目のドライブでは私が彼の大学の近くまで行った。電車をおりて、彼の車を探す。吐く息が白い。彼の白い車はすぐにみつかった。車内に乗り込み、手を握る。この時から、わたしは薄々、感じていた。彼の秘密。でもなにも言わなかった。なにも聞かなかった。それを言って壊れる関係だとしても、いまは壊したくなかった。偽りだとしても、そばにいて欲しかった。