焼いてみた。

 予想通り止まらない。

 お医者さん三人がかりで、3針縫った。

 なんとか、止血できたみたいだ。

 化膿止と痛み止の飲み薬。

 痛み止は、処方を断った。

 肝臓に悪いからだ。

 数値はいいから、たぶん大丈夫と言われたが、そのたぶんが気に入らなかった。

 それならと、覚悟を決めた。

 2日経っても、多少の出血は見受けられたが、自分の再生力を信じた。

 今朝はいつもより遅く実家に行く。

 弟の車があったが、家の中にはポツンとイスに座っている父親しかいない。

 途中のコンビニで買ってくるスポーツ新聞を父親に渡した。

 畑に行くか尋ねると、行くと答えた。

 歩いていけるという。

 玄関に先回りして、杖を持たせて、玄関の扉を閉める。

 そこから動かず、首を左右にふる父親。

 車椅子に座らせ迂回して、畑に行った。

 雨のあとの畑は、車椅子を押すには力がいった。

 ふと、江田島の旧海軍兵学校と永平寺を思い出した。

 江田島では、一部砂利の部分があり、永平寺では長くできるだけ緩やかになるようなスロープがあったが、一般の人では苦労するだろうと思いながら、押したものだった。

 身長173センチ、体重68キロしかないボクだが、力だけはあった。

 父親と永平寺の天井絵を見上げた。

 5つの生き物を探したら願いが叶うという。

 首が痛くなるだけだと、探すのはやめ、ボクは車椅子を押した。