一月前に、人生で始めて部屋を探した。
 ネットで検索できるわけでもなく、専門誌もなかった。
 布施駅から、街の様子を見ながら歩いた。
 30分ほど歩き、岸田堂という交叉点を過ぎ、みなみ食堂という定食屋に入る。
 寿町という、地域だった。
 瓶ビールを飲みながら、何故かこの辺りにしよう思った。
 店を出ると、しばらくふらつき不動産屋を見つけ、中に入る。
 勧められるまま椅子に座る。
 条件を聞かれた。
 なにも考えていなかった。
 相場などわからない。
 家賃三万円くらいで、ユニットバスのある部屋とだけ、希望を言った。
 それくらいしか、その時のボクの頭には浮かばなかった。
 敷金、礼金、共益費。
 家賃だけ払えばいいというわけにはいかないようだった。
 3つの物件を提示された。
 部屋も見ず、岸田堂の交叉点に近い1つに決め、その場で契約を済ませた。
 そして、引越し日。
 達也を横に乗せ、不動産屋に立ち寄り、鍵をもらった。
 マンションに着き、部屋に入る。
 特になんの感情もなかった。
 初めて見るワンルームマンションの部屋。
 トラックから荷物を降ろし、荷台には達也の自転車だけが残った。
 レンタカー屋に電話をかけ、明日迄延長してもらう。
 達也と自転車をのせ、一宮まで送っていった。