すべてが充実していた。

 飲むごとに、ジョッキに泡の線が残るのは、よく洗ってある証拠と聞いたことがあった。

 ジョッキに残った泡の線を見ながら、今度、休みが取れたら何をしようかと考えていた。

 はずだった。

 知らず知らず、ボクのことを誰も知らない、見知らぬ土地での生活を思い描いている。

 「根無し草」

 気持ちを切り替えようと、大阪での生活を思い出した。

 たくさんの縁があり、たくさんの顔が思い浮かんだ。

 タバコに火をつけようと、ポケットのライターを取り出すと携帯電話がなった。

 火をつけながら、携帯電話の画面を見ると、ななちゃんからの電話だった。