腹の底が、騒がしくなる。

 網の上から、漂う煙が鼻腔を通り抜け、胃を誘惑する。

 箸で一枚とりあげる正ちゃん。

 「横井さん、所長のマンションで、奥さんと生活してんねんて」

 そう言うと、すりおろしニンニクの入った、サラッとしたタレにタップリ絡ませ、口中に放り込んだ。

 「垣江のオッサン、どこ行ったんやろ」

 正ちゃんは、興味もないのに呟いた。

 そういえば所長は、垣江という苗字だった。

 それよりも、一向に核心に迫る気配がない。

 「リストって何?」

 気になっていることを一つ聞いてみた。

 「ボクも見てへんけど、ピアノマンちゃんは3番目だったらしいは」

 1番目は、横井さんだったという。

 2番目は、森田さん。

 リストに、正ちゃんは、入ってなかったらしい。

 そして、順番に事務所に来なくなったみたいだった。