いつもとあまり変わらない風景なのに、違う日常が広がっていた。

 事務所の雰囲気は、閑散として、潮が引きはじめているようだ。

 いつものメンバーに、島田マン。

 そして、所長の奥さんもいた。

 ななちゃんは、やはりいなかった。

 今回の件に関して、みんなはあえて触れないように、終わったことと、振る舞っている。

 正ちゃんだけは何か言いたそうに、上目遣いでボクを見ていた。

 そう、ボクだけ何も知らない。

 その晩、正ちゃんのアパート近くの焼肉屋に、2人で行った。

 私立の大きな大学が近くにある商店街に店はあった。

 学生相手なので、安くてボリュームがある店が多い。

 たまに、みんなで行く店だった。

 いつもの定食とビールを二人とも注文した。

 一般的な安い店の、1人前の料金で、2人前の肉が入っている焼肉定食。

 正ちゃんは、肉を網に乗せながら、話しだした。

 何から話し出すか、楽しみだった。

 「ピアノマンちゃん、あんな、横井さんと所長の奥さん、できとってん」

 正ちゃんは意外なところから、話しだした。