「わし(僕)、大学やめるわ」

 正ちゃんは、電話を切る最後、ボクに言った。

 「さよなら」という意味に聞こえた。

 大学5年生の正ちゃんは、中退をして、丹後地方にある実家に戻り、家業でも継ぐのだろう。

 今月一杯で、大阪営業所は無くなる。

 正ちゃんは、そう教えてくれた。

 同じ穴のムジナなので、何かを察していたのか、ななちゃんは、ボクが交通事故に遭う前に、顔を出さなくなっていた。

 福岡久留米までの、離婚の引越をボクとやり、お客さんと知らぬ間に遠距離恋愛をしていて、携帯電話代が1月20万円かかると嘆いていた。

 気軽さも、居心地の良さの一つだった場所。

 一つの会社の、一つの営業所。

 正ちゃんの話では、新人の数人が、起こしたものだった。

 理由は、自分たちが川上に立ちたかったという。

 川上も川下もなく、所長が配車を組み、現場で作業をするだけだった。

 横柄なものはいなく、和気あいあいとしていた。

 他に、理由があるとしか考えられなかった。

 画面の小さい時代のテレビ。

 チャンネルを抜いて独占したい、子供みたいな理由ではないはずだった。